柴谷篤弘さんが亡くなったそうである。
生物学の革命の著者として名高い分子生物学者で日本での構造主義生物学ー構造生物学ではありませんーの草分けをした人だと思っています。
【追記】
「進化論」を書き換えるは構造主義生物学の本です,ある意味。
朝日新聞の訃報には本庶佑先生のコメントがついていました。本庶先生はいろんな場所,機会でご自分が生物学の革命から受けた決定的な影響を語っておられます。
例えば先生の最終講義
「ゲノムの壁-混沌・仮説・挑戦-」
では
私は、1960年に京都大学に入学しました。医学部2回生のときに読んだ、柴谷篤弘先生の『生物学の革命』という本に強い感銘を受けました。この本には、DNAの塩基配列を決定すれば病気の原因がわかり、分子外科手術によって悪い遺伝子を治療すればよいということが書いてあり、今から考えても非常な卓見でありました。当時、私の父親が山口大学の医学部にいたのですが、柴谷先生はそこの教養部の教授をしておられたので、早速訪ねてきいろいろお話を伺いました。先生が説明されたことは、難解で全く理解できませんでしたが、唯一理解できたことが、「京都大学には早石さんが帰るから、そこに行って勉強したらよろしい」、ということでした。そこで、さっそく早石修先生が主宰されている「医化学教室」に出入りするようになりました。早石先生は、一週間に一度お会いできるかどうかでしたので、実際には、助教授の西塚泰美先生に手取り足取り教えていただきました。
と語っておられます。
ぼくも学生時代に生物学の革命を読みましたがその当時はすでに「DNAの塩基配列を決定すれば病気の原因がわかり、分子外科手術によって悪い遺伝子を治療すればよいと」というような考えは実現可能だとは多くの人たちには考えられていましたので本庶先生が受けたほどの影響は多分ぼくは受けなかったと思います。
われわれにとって革命とは何か―ある分子生物学者の回想は多分大学院を出て麻酔科で助手をしてたときに読んだ本ですが,何度も読み返しました。
今回の訃報に接して研究室の本棚からすぐに探し出して読んでみました。
たぶん「赤の女王」の言葉
ここでは、よいな、同じところにとどまっていたければ、力のかぎり走らねばならぬ。どこかにゆきつこうと思えば、その二倍の速さで走らねばならぬ
を初めて知ったのはこの本です。
このアフォリズムはぼくの行動原理の一つになっています。
これは一回は読んでおいた方が良い本ですーこれは心の底から本当ですー。なんと今ならアマゾンでは100円からこの本が買えるのです。良い時代です。
反科学論―ひとつの知識・ひとつの学問をめざして (ちくま学芸文庫)
われらが内なる隠蔽
なども当時は十分問題作だったと思います。
走ると言えば昨日NHKで見た「ハイビジョン特集 ヒトはなぜ走るのか 〜メキシコの走る民・ララムリ〜 」は,すごい番組でした。
ララムリの生活に密着し、その歴史と暮らし、走りの奥義、そして精神から彼らの強さの秘密を探り、“走る”ことの根源的な意味を見つめる。
という予告に違わないよい番組でした。
しかし,ララムリってすごいね。
右目から涙があふれて止まらなくなったので今日はこれで帰ります。
某報告明日中には送り返しますよ。