年末から新年に書けてネットで随分とたくさんの議論が行われてきた某問題ですが,このブログエントリーで議論がよく整理されていると思いました (参照)。

  1. 大学教員(研究者)になる=応募者の中で絶対に1番になることであり、絶望的なぐらい困難で覚悟の要る挑戦
  2. 大学教員公募を勝ち抜くのは大変だし、ノウハウも要る
  3. 就活競争激化によって競争原理が働き、近い将来日本のアカデミアは優秀な研究者だけが残るはず
  4. (3.への反論)むしろ過当競争激化によって優秀な人材のアカデミア敬遠が進み、明るい未来は期待できない
  5. (1.の補足)大学教員公募には様々な表面には出て来ない選考基準がある上に、「大学教員になるためには大学教員であるという経験が必要」という実務経験重視主義があるため、一番最初に大学教員になる際のハードルが最も高い

一般的なポスドク問題とこのような状況はすこし原因も対処も異なるのでは無いかという気もしますが当事者にとっては厳しさは同じなのでしょう。
京大でもいわゆるテニュアトラックの教員募集には驚くほどの応募があるのだそうです。そう思うと皆さんすごく賢そうですね確かに。

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こういった議論を目にするといつも思うのは所変われば事情も大きく変わるのだなということです。
医学部の臨床系の講座では基本的にはこのような問題は生じません。
たとえば卒後4・5年目で博士号はおろか当該科の専門医資格も無くとも「助教」になることが簡単にできます。
そもそも博士号でさえ週に数日”研究”することで取得できる場合もあるようです。
「助教」は「助教」ですから研究費の申請も可能であり,ある程度の金額の研究補助を受けることができれば自分の身の丈にあった研究生活を続けることは十分可能です。学術振興会の研究費の若手区分であればpublicationなど無くとも採択される可能性は十分あり消耗品の費用を賄うことができれば総合大学であれば必要な測定機器は学内のどこかにあるはずなので頭を下げれば使わせてもらえることがほとんどでしょう。
ぼくらの所属していた講座では大学院を終わったくらいでないと当時の「助手」-文部教官でしたーには採用してもらえませんでしたが,大学によりそのような制約が無いのは確実です。専門医資格も無く「助教」になるのですからそういった制約は現在でも無いのだと思います。
現在でもぼくの職場では「助教」のポストには公募が行われることがあり選考委員会が開かれますが競争率が100倍などということはありません。多くの場合准教授の選考でも競争率は2倍です。

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ぼくの場合,大学院の終わりくらいから他人のアイデアで実験をしたことはほとんどありません。例外はGLS研に滞在した期間の一部の研究だけです。
当然研究費は自分で取るしかありません。麻酔科の助手に奇特な誰かさんが大きな予算をつけてくれるわけではありません。日本学術振興会の研究費を取って研究を続けるしかありません。どこかのエライ先生方が審査をしてくれるそうですが自分の感覚では種目を限れば結構当たります。年に1千万程度の資金をコンスタントに集めることができれば3−4人の大学院生と研究を続ける事は十分可能です。もちろんそんな小さなお金ではポスドクなどを雇うことはできません。というわけで今まで10人の大学院生に学位を取得してもらいました。
研究で一番大切なのは質のよい「大脳皮質」であり,たぶんぼくの頭がすばらしければこのような環境でもすばらしい論文を出し続けることは可能なのでしょうが,なかなかそううまくはいきません。
それでもぶらぶらと道草を喰いながら歩いていれば500回くらいの引用回数を記録する論文を出すことは可能です。
当該研究分野の研究者なら当然全員その論文を読んでいるに違いないという論文をぼくはごく控えめに少なく見積もって4編は出したと思っています。
それくらいで満足する以外に術はありません。

ぼくにとっては今までの研究人生はこれでなかなか楽しいものでした。

全員がNature, Cell, Scienceに論文を出すことはできないし出す必要もないのです。

というわけでどこでもいいので臨床講座の助教になってみるのはどうでしょうか?
なんていうとバカにするなとかいわれそうですけど世の中の制度に不備がある状況でしかしあくまで現行制度で研究生活を継続するためには戦術を考える必要はあると思います。まず自分の研究室をはじめる,それが先決です。

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御大がこんなtweetをしておられました。
御大レベルでもとおもいびっくりしました。ぼくなどもちろん誰もカレンダーなど持って来てくれません。
それでやはり御大です。tweetすればちゃんと届けてくれる人はいるようです(参照)。

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