“医科学者のための知的活動の技法” (諏訪邦夫)

雑誌(LiSA)に連載されていたー現在も継続中ーのものがまとめられたものです。

毎月フォローしていました。特に大きな加筆などはないようですので雑誌で読んだ人にとって情報としては加わるものはないと思います。ぼくは個人的にLiSAを定期購読しているわけでないしこの連載が本にまとまればぜひとも手元に置いておきたいということがありましたかた購入しました。

タイトルでも明らかな様にこの本は知的活動をおこなうすべての人向けに書かれた本ではありません。

読者としては、ふつうの「勉強家な臨床医」を想定していて特定領域の研究者を対象としているのではないとPart1-1でも明らかにしておられます。確かに例えば1章で紹介されているような方法を基礎研究の分野ではぼくは採用していません。論文の執筆などの方法も全く異なります。おそらく他の基礎医学研究者の手法とも異なると思います。

医科学者といっても臨床家が”アウトプット”する方法論の概説がこの本の主眼と思います。アウトプットには様々なレベルのプレゼンテーション、論文執筆、本の執筆までが含まれそれぞれバランスよく諏訪流の方法論が解説されていきます。

2章 論文のマスターには手を使おう:論文を熟読する、20章 出力の「場」の問題、23章 出力の「場」の問題、26章 人が耳を傾けるのは誰の情報か

はとりわけよくて、これらはこの本を買わなくとも雑誌のバックナンバーを探してでも読むべきと思います。

それに比べて21章 研究と関心の多面性:IF 一辺倒は疑問

ではぼくの考えとは異なり意見には同意できませんでした。

こんな事を言うと怒られるかもしれませんが、臨床医療の発達の推進力のうち最大のものは誰かの何かの発見ではなく、臨床家が臨床の現場でする様々な工夫とその共有だと思っています。ネズミを使った大がかりな研究より一つの症例報告が拓く局面があると言うことです。他人にそれらを様々な方法で伝えていくために積極的にアウトプットしていくということが重要でそのための方法論がこの本にはあると思います。

諏訪先生の方法論シリーズの優れたところはおそらく10年たっても通用する方法論が記述されていることです。特定のコンピュータやソフトウェアに依存する方法などの紹介がなく方法原論できなできあがりとなっているわけです。

個人的には25章 出力の技術:本にまとめる に触発されました。今の職場にいる間に挑戦してみたいと思っています。

目次は以下の通り

Part 1.情報を入力し,整理する

1.新着雑誌1冊を1時間で:私の論文選別法

2.論文のマスターには手を使おう:論文を熟読する

3.教科書を読む

4.解説を読む

5.講演を利用する:学会の講演から得られるもの

6.聴覚からの入力

7.入力と感覚:感覚器官の働きが入力に影響する

8.日本発のデータも入手が容易で嬉しい

9.継続させる力

Part 2.情報を出力する

10.『出力』にこそ意義が:出力序論

18.入力してすぐ出力する活動

19.出力の技術:論文の書き方とまとめ方

20.出力の「場」の問題

21.研究と関心の多面性:IF 一辺倒は疑問

22.「出力は楽しみ」:原稿料・印税への考え方

23.「何とか無理やり出力する」方法

24.努力と仕事の「量」

25.出力の技術:本にまとめる

26.人が耳を傾けるのは誰の情報か

Part 3.パソコン使用と関連テーマ

27.入力データをエディターで処理

28.辞書―特にパソコン辞書を使う

29.ファイルの整理:ファイルの連携(リンク)の意義とやり方

30.仮名漢字変換の充実と使い方

31.インターネット公開情報をどう利用するか

32.無料の雑誌と論文

33.学会場での写真撮影

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