第14回がんとハイポキシア研究会に11/4-11/5に参加してきました。

会場は岐阜グランドホテルでした。

金華山と岐阜城を望む長良川の河畔にたっているホテルです。

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今年三月に急逝したLorenz Poellinger氏の追悼シンポジウム(Professor Lorenz Poellinger Memorial Symposium)が二日目に企画され縁の4人の研究者のトークがありました。

日本からは彼のカロリンスカ研究所のlab.に留学していた鈴木さんと谷本さんが登壇しました。

Lorenzのlabでの仕事を話してくれたのですがHIF-1 cDNA cloningからoxygenase cDNA cloningまでのダイナミックな時代を思い出して結構感慨深いものがありました。

 

参加者は100人を軽く越えてposterも47演題が集まり盛会だったと思います。

前回が昨年の6月だったので約1年半ぶりにあうも人いました。 その中で,最大のニュースはK○氏の結婚だったと思います。

レドックス研究時代からの知り合いにも会えてよかったです。

 

またぼくのトーク(Oxygen, Hypoxia and Beyond-2016 年アルバート・ラスカー基礎医学賞を記念して)で使ったスライドはFigshareに上げておきました。 興味があればどうぞご活用ください。

 

Hirota, Kiichi (2016): Oxygen, Hypoxia and Beyond. figshare.

https://dx.doi.org/10.6084/m9.figshare.4142166.v1

Retrieved: 11 20, Nov 05, 2016 (GMT)

 

 

ちなみに次回第15回はぼくがホストすることになりました。

近畿地区のどこかでこの時期に開催すると思います。

 

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第14回がんとハイポキシア研究会 −3 Days

第14回がんとハイポキシア研究会が11/4から岐阜市で開催されます。

二日目の午前中に20分ほどフリートーク風に今年のラスカー賞をきっかけに低酸素研究のいままでを話すことになっています (2016 年アルバート・ラスカー基礎医学賞を記念して)。

この分野ですがラスカー賞の対象になるくらいには発展していますのでおびただしい数の総説が今まで出版されています。

それをなぞるのでは面白くないのでちょっとひねった話をしたいと思っています。

ぼくの話を聞いていただくためには特別な予備知識は必要はないのですが以下の論文のアブストラクトだけでもながめておくとより楽しんでいただけるのではないかと思っています。

ラスカー賞の対象となった研究は1990年から10年くらいの期間に行われた研究が対象となっていますがその間に出版された論文を選んでみました。

どの論文もすでに古典となっている論文です。

読んでいない論文があればこれを機会に熟読玩味してみてください。

なお論文の頭に#をつけた論文はLasker財団のページで受賞理由で取り上げられているものです。

論文はpubmedにリンクしてあります。

EPO遺伝子の発現誘導

The regulated expression of erythropoietin by two human hepatoma cell lines. Goldberg MA, Glass GA, Cunningham JM, Bunn HF. Proc Natl Acad Sci U S A. 1987 Nov;84(22):7972-6. PMID: 2825172

Regulation of the erythropoietin gene: evidence that the oxygen sensor is a heme protein. Goldberg MA, Dunning SP, Bunn HF. Science. 1988 Dec 9;242(4884):1412-5. PMID: 2849206

Regulatory elements of the erythropoietin gene. Imagawa S, Goldberg MA, Doweiko J, Bunn HF. Blood. 1991 Jan 15;77(2):278-85. PMID: 1985694

Erythropoietin mRNA levels are governed by both the rate of gene transcription and posttranscriptional events. Goldberg MA, Gaut CC, Bunn HF. Blood. 1991 Jan 15;77(2):271-7. PMID: 1985693

この4篇に代表されるように初期にBunn氏の研究室が重要な役割を果たしました。 肝臓がん由来の細胞株でEPOの誘導が観察されること,EPO遺伝子上にRegulatory elementsが存在することなど後のHIF-1単離につながる重要な発見を報告しています。

 

追走するSemenza研

これを追いかけるようにまた並走してSemensa氏の研究室から次々に論文が出ていきました。

Polycythemia in transgenic mice expressing the human erythropoietin gene. Semenza GL, Traystman MD, Gearhart JD, Antonarakis SE. Proc Natl Acad Sci U S A. 1989 Apr;86(7):2301-5. PMID: 2928334

Human erythropoietin gene expression in transgenic mice: multiple transcription initiation sites and cis-acting regulatory elements. Semenza GL, Dureza RC, Traystman MD, Gearhart JD, Antonarakis SE. Mol Cell Biol. 1990 Mar;10(3):930-8. PMID: 2304468

Hypoxia-inducible nuclear factors bind to an enhancer element located 3′ to the human erythropoietin gene. Semenza GL, Nejfelt MK, Chi SM, Antonarakis SE. Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 Jul 1;88(13):5680-4. PMID: 2062846

A nuclear factor induced by hypoxia via de novo protein synthesis binds to the human erythropoietin gene enhancer at a site required for transcriptional activation. Semenza GL, Wang GL. Mol Cell Biol. 1992

Cell-type-specific and hypoxia-inducible expression of the human erythropoietin gene in transgenic mice. Semenza GL, Koury ST, Nejfelt MK, Gearhart JD, Antonarakis SE. Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 Oct 1;88(19):8725-9. PMID: 1924331

 

HIF-1の登場

General involvement of hypoxia-inducible factor 1 in transcriptional response to hypoxia. Wang GL, Semenza GL. Proc Natl Acad Sci U S A. 1993 May 1;90(9):4304-8. PMID: 8387214

Transcriptional regulation of genes encoding glycolytic enzymes by hypoxia-inducible factor 1. Semenza GL, Roth PH, Fang HM, Wang GL. J Biol Chem. 1994 Sep 23;269(38):23757-63. PMID: 8089148

1995年にはHIF-1の蛋白質の同定とcDNA単離が報告されました。

Purification and characterization of hypoxia-inducible factor 1. Wang GL, Semenza GL. J Biol Chem. 1995 Jan 20;270(3):1230-7. PMID: 7836384

Hypoxia-inducible factor 1 is a basic-helix-loop-helix-PAS heterodimer regulated by cellular O2 tension. Wang GL1, Jiang BH, Rue EA, Semenza GL. Proc Natl Acad Sci U S A. 1995 Jun 6;92(12):5510-4. PMID: 7539918

HIF-1のcDNA cloningの後の最も大きな問題はその活性化の分子機構の解明となりました。 活性化と一言にいっても当時はその意味合いも曖昧でした。 PNASの論文ではmRNAの発現をNorther blotで解析して1%O2, CoCl2, DFX処理でmRNAが「誘導」されるという実験結果が提示されています。 HIF-1a HIF-1bに対する抗体を使ったデータはありますがHIF-1aに加えてHIF-1bの蛋白質発現も「誘導」されるという結果が提示されています。 Hep3Bを用いた実験結果ですのでこれは現在流通しているコンセンサスとは異なります。

そこの後の解析で少なくとも細胞株ではHIF-1a, HIF-1bともmRNAは酸素分圧が変化に応答して発現が大きく変化すること言うことはないが,HIF-1aの蛋白質の発現は酸素分圧の低下に相関して増大することが解ってきました。

Hypoxia-inducible factor 1 levels vary exponentially over a physiologically relevant range of O2 tension. Jiang BH, Semenza GL, Bauer C, Marti HH. Am J Physiol. 1996 Oct;271(4 Pt 1):C1172-80. PMID: 8897823

そうこうしているうちに1997年にはHIF-1aが酸素分圧依存のユビキチン化を受けていて低酸素環境下では蛋白質が安定化するという機序で細胞内で蓄積するという報告が相次ぎました。

 

HIF-1の酸素分圧依存性の活性化

Hypoxia-inducible factor 1alpha (HIF-1alpha) protein is rapidly degraded by the ubiquitin-proteasome system under normoxic conditions. Its stabilization by hypoxia depends on redox-induced changes. Salceda S, Caro J. J Biol Chem. 1997 Sep 5;272(36):22642-7. PMID: 9278421

Regulation of hypoxia-inducible factor 1alpha is mediated by an O2-dependent degradation domain via the ubiquitin-proteasome pathway. Huang LE, Gu J, Schau M, Bunn HF. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Jul 7;95(14):7987-92. PMID: 9653127

Regulation of the hypoxia-inducible transcription factor 1alpha by the ubiquitin-proteasome pathway. Kallio PJ, Wilson WJ, O’Brien S, Makino Y, Poellinger L. J Biol Chem. 1999 Mar 5;274(10):6519-25. PMID: 10037745

1999年にはこのユビキチン化にVHL-E3 ligaseの構成分子-が重要な役割を果たしているという一連の報告がされました。ここら辺からKaelin氏, Ratcliffe氏が大きな役割を果たすようになってきました。

The tumour suppressor protein VHL targets hypoxia-inducible factors for oxygen-dependent proteolysis. Maxwell PH, Wiesener MS, Chang GW, Clifford SC, Vaux EC, Cockman ME, Wykoff CC, Pugh CW, Maher ER, Ratcliffe PJ. Nature. 1999 May 20;399(6733):271-5. PMID: 10353251

Ubiquitination of hypoxia-inducible factor requires direct binding to the beta-domain of the von Hippel-Lindau protein. Ohh M, Park CW, Ivan M, Hoffman MA, Kim TY, Huang LE, Pavletich N, Chau V, Kaelin WG. Nat Cell Biol. 2000 Jul;2(7):423-7. PMID: 10878807

Mechanism of regulation of the hypoxia-inducible factor-1 alpha by the von Hippel-Lindau tumor suppressor protein. Tanimoto K, Makino Y, Pereira T, Poellinger L. EMBO J. 2000 Aug 15;19(16):4298-309. PMID: 10944113

2001年は当たり年でした。 VHLを含むユビキチン化システムのHIF-1aへの指向性がHIF-1aのプロリン残基の水酸化に依存しているという論文がScieceにKaelin氏とRatcliffe氏のグループからback-to-backで立て続けにでてCellにはその水酸化を担う酸素添加酵素のcDNA cloningに成功した世という論文がRatcliffe氏の研究室から報告されたのです。

HIFalpha targeted for VHL-mediated destruction by proline hydroxylation: implications for O2 sensing. Ivan M, Kondo K, Yang H, Kim W, Valiando J, Ohh M, Salic A, Asara JM, Lane WS, Kaelin WG Jr. Science. 2001 Apr 20;292(5516):464-8. PMID: 11292862

Targeting of HIF-alpha to the von Hippel-Lindau ubiquitylation complex by O2-regulated prolyl hydroxylation. Jaakkola P, Mole DR, Tian YM, Wilson MI, Gielbert J, Gaskell SJ, von Kriegsheim A, Hebestreit HF, Mukherji M, Schofield CJ, Maxwell PH, Pugh CW, Ratcliffe PJ. Science. 2001 Apr 20;292(5516):468-72. PMID: 11292861

 

HIF-1aプロリン残基を水酸化する酸素添加酵素の同定

C. elegans EGL-9 and mammalian homologs define a family of dioxygenases that regulate HIF by prolyl hydroxylation. Epstein AC, Gleadle JM, McNeill LA, Hewitson KS, O’Rourke J, Mole DR, Mukherji M, Metzen E, Wilson MI, Dhanda A, Tian YM, Masson N, Hamilton DL, Jaakkola P, Barstead R, Hodgkin J, Maxwell PH, Pugh CW, Schofield CJ, Ratcliffe PJ. Cell. 2001 Oct 5;107(1):43-54. PMID: 11595184

 

実はぼくらのFIH-1のcDNA cloingもひっそりと2001年に報告したのですがこれがもう一つの水酸化酵素だという報告は次の年になされました。

これで酸素分圧依存性のHIF-1a蛋白質の安定性とHIF-1aの転写活性化を説明するセントラルドグマが定立されたのです。

 

日陰者のFIH-1

FIH-1: a novel protein that interacts with HIF-1alpha and VHL to mediate repression of HIF-1 transcriptional activity. Mahon PC, Hirota K, Semenza GL. Genes Dev. 2001 Oct 15;15(20):2675-86. PMID: 11641274

FIH-1 is an asparaginyl hydroxylase enzyme that regulates the transcriptional activity of hypoxia-inducible factor. Lando D, Peet DJ, Gorman JJ, Whelan DA, Whitelaw ML, Bruick RK. Genes Dev. 2002 Jun 15;16(12):1466-71. PMID: 12080085


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がんとハイポキシア研究会 今年もやります。14回目です。


がんとパイポキシア研究会会員各位

この度の熊本・大分地域での大地震発生により、被害に遭われた先生方には心よりお見舞い申し上げます。   昨年開催された第13回研究会は、三島市の国立遺伝学研究所において、情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンターの 坊農 秀雅 先生に、「データベースとハイポキシア研究」をテーマとして、ライフサイエンス研究に不可欠となったデータベースの活用を中心としたシンポジウム(新学術領域:酸素生物学との共催)を開催していただきました。ウェット研究者がライフサイエンス分野の様々なデータベースを使いこなすための基礎知識や先端研究に関する有用な情報を得る事ができました。


第14回は、岐阜薬科大学 創薬化学大講座薬化学教室の 永澤 秀子 先生に運営委員をおねがいし、下記のような日程で開催予定です。

今回は当研究会初の試みとして一泊二日の合宿セミナーを企画し、本会の特徴である多様なバックグランドの研究者が一同に介して、活発な情報交換や交流を図る機会としたいと考えております。 シンポジウムでは「諸刃の剣、酸素を巡る生命科学を解明するケミカルバイオロジー」をテーマとして、新学術領域:酸素生物学との共催のもと、地球上の生物にとって切っても切れない酸素との関わりを様々な視点から議論したいと思います。夜通し語り明かすも良し、親交を深めながら、研究を深めて頂ければ思います。ぜひ早めに日程を押さえて頂き、ご参加頂けます様お願い致します。

尚、本会ではPoellinger先生(カロリンスカ研究所)追悼シンポジウムを企画しております。Poellinger先生は本研究会に多大な貢献をいただきましたが、本年3月に急逝されました。その功績を称え、お人柄を偲びたいと思います。 プログラム等の詳細は、本研究会のホームページ(近日中更新)をご覧ください。


会 期: 平成28年11月4日(金)11:30受付/12:15開会 ~ 5日(土)14:20頃閉会

会 場: 岐阜グランドホテル (http://www.gifugrandhotel.co.jp/)

参加費: 研究会 4000円(学生無料)  懇親会 6000円(学生1000円) 宿泊費(予定):8000円(学生6000円)  *但しシングルルームをご希望の方は別料金


ハイポキシア研究にご興味をお持ちの臨床や基礎の研究者、ハイポキシア研究で共同研究をしたい、お話を聞きたい研究者がおられましたら、是非とも本会へお誘い頂きますようお願い申し上げます。


第14回 がんとハイポキシア研究会

運営委員 永澤 秀子(岐阜薬科大学創薬化学大講座薬化学教室

世話人

近藤 科江(東京工業大学生命理工学院)

井上 正宏(大阪府立成人病センター)

谷本 圭司(広島大学原爆放射線医科学研究所)

広田 喜一 (関西医科大学)


announce-1 第14回がんとハイポキシア研究会.pdf


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