2018年のベスト本をやってみたいと思います。 今日はノンフィクション篇です。

ノンフィクション本はたくさん読みました。 キリがないので5冊に絞ります

論文を正しく読むのはけっこう難しい: 診療に活かせる解釈のキホンとピットフォール

医学界新聞というのがあるのですがそこでの連載(26回!!)をまとめたものだと思います。

連載の初回に

ランダム化臨床試験は,本来内的妥当性の高い結果を提供できるはずですが,実に多くのバイアスや交絡因子が適切に処理されていない,あるいは確信犯的に除 去されないままです。したがって解釈に際しては,“ 騙されないように” 読む必要があります。本連載では,治療介入に関する臨床研究の論文を「読み解き,使う」上での重要なポイントを解説します

と書かれています。

内容はこの要約につきるのですがぜんぶ読むでとてもタメになりました。

商売で大量の論文に目を通しますが気合いを入れて「読む」-印刷して赤ペンで印をいれて場合によっては参考論文まで読む-の数はそう多くありません。一日1篇あるかどうかです。忙しい臨床の合間に「読む」のは大変なので方法論を持つのがよい。そういう方法論を提示してくれる一冊だと思います。

本として手元に置くのをお薦めしますがまず内容を確認したい人は「新聞」を読めばよいかもしれません。

26回分すべてどなたでも読むことができます。

 

不確かな医学

以前にここでも紹介しました(参照)。

 

どもる体

これまた医学書院の雑誌「看護教育」の連載「リズムとからだ」を加筆してまとめたものです。

職場では「看護教育」が毎号読めますので連載はfollowしていました。

看護関連の雑誌ってどう考えても看護と関係ないだろうという話題を無理繰り関連つけたりする記事があって面白いです。

ぼくもその昔は「どもり」でした。成績はよかったのですが「どもり」で「チック」だったので母はたいそう心配して祖母にもいろいろと云われていたようです。とにかく勉強ーぼくは勉強をしているつもりはなくただ単に本を読んでいただけなのですが母には区別がつかなかったのですーをするのを止めろといわれていました。なので大学院に入ったと連絡したときは絶句されました。とうとう本当におかしくなったと思われたようです。 そのうちに表現系としてのどもり」や「チック」は抑制されたのですがこの本を読むとそれは表現系が抑制されているだけであると言うことが納得できました。

 

さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017

雑誌Wiredの日本語版の編集長をされていた若林さんのWiredの巻頭言をふくむ文章をまとめたものです。岩波書店から出ています。

梅田の蔦屋書店での対談イベントにも参加しました。

 

トマス・アクィナス――理性と神秘

2017/12/20の出版ですが今年読んだのでよいでしょう。 岩波新書の一冊です。

「哲学者であり神学者であるトマス・アクィナスの哲学の根本を理性と神秘の相互関係に着目して読み解いた一冊」ということになっています。

こういう本を読んでいつも驚くのは今日的な問題がすでに十分に考えられていると云うことを知るということです。

「理性」「知性」「神秘」とかぼくが普段取り組んでいる「研究」ってどんな営みなのかを考えるのに手掛かりとなります。 いまだによく解っていないのですが…

 

 

とはいえ

齋藤は「好きな本を聞かれても人によって答えるパターンを決めている」とし「本当に好きな本は誰にも言わない」という

という事もあって本当はぼくも本当の事を書いているわけでは無いかもしれません。

その他「今週の一冊」に選んだ本はまとめてあります。(参照)

トマス・アクィナス――理性と神秘 (岩波新書)

さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017 どもる体 (シリーズ ケアをひらく) 不確かな医学 (TEDブックス) 論文を正しく読むのはけっこう難しい: 診療に活かせる解釈のキホンとピットフォール

-追記-

読んでいただいたようです 


PDF

二日連続で病院で寝ると身体の具合が悪くなっていきますね。

査読も今年分は全部終わったし年内自分らの論文の完成に向けてもう少しあがこうと思います。


「スポーツを読む」 から

火曜日の朝の日本経済新聞に”「スポーツを読む」-シンポ特集” が掲載されていました。

作家の沢木耕太郎氏が基調講演でスポーツ作品を書くことについて語ったあと、ロンドン五輪銀メダリストの三宅宏実氏、堀場製作所会長兼社長の堀場厚氏、テレビ東京アナウンサーの大橋未歩氏がスポーツ報道に求めることなどについて活発に議論した。

という趣向のシンポジウムです。 沢木氏の基調講演も掲載されていました(<基調講演>スポーツを書くということ)。

アメリカの記者は試合を見て、各自の頭の中でそれぞれの違うストーリーをつくっている。ジョーダンはどのような考えで、あの場面で3点シュートを放ったのか。なぜ失敗したか、成功したか。キーになる空白の箇所を聞き出したい。記者が描いた試合の見方の構図にピタッとはまれば、彼にとってのストーリーが完成する。だから他の記者の質問に関心がない。

日本の場合は、そういう記事のつくり方をしていない。「あの選手はこんなことを言ったのに、どうしてうちの新聞には載っていないんだ」という話になるのだろう。だから全部の記者が同じ談話をほしがり、 皆で共有する。

今年ほど科学報道が話題になった年はありませんでした。山中氏のiPS細胞の発明に関わるノーベル賞が大きなきっかけになりました。

ライフサイエンス 新着論文レビュー“などの試みが始まっていてこちら側からの切り込みは進んでいます(これ本当によいサービスですよ)がマスコミ例えば新聞からの切り込みは未だ不十分です。”Nature”, “Cell”, “Science”に掲載された論文はそのまま報道される。論文へのリンクなどは一切貼らない,曖昧なコメントがつくだけのお寒い状況はまったく変わっていません。これはiPS森口以後でもほとんど状況に変わりはありません。

そもそも研究成果は雑誌での発表とリアルタイムに報道される必要など全くなく一週間,一ヶ月,一年単位でじっくりと紹介・評価されればよいのだと思います。雑誌のimpact factorにしても二年くらいの時間の経過で同じ科学者仲間がいかにその論文を自分の論文に引用したかで計算されるのです。

研究成果を紹介するのに当該論分やその関連論分を読まずして論文を発表した本人の簡単なコメントだけを取って記事を書くような記者が「ジョーダンはどのような考えで、あの場面で3点シュートを放ったのか。なぜ失敗したか、成功したか。キーになる空白の箇所を聞き出したい。記者が描いた試合の見方の構図にピタッとはまれば、彼にとってのストーリーが完成する。だから他の記者の質問に関心がない。」というような取材態度に基づいての記事は書けないのも道理です。
New York Timesなどの科学記事を読めば自分たちの報道がいかに”いけてないか”解りそうなものですが…


「キャパの十字架」を読んで

雑誌文藝春秋の新年号に沢木氏の「キャパの十字架」というドキュメンタリーが掲載されています。

戦争報道の歴史に燦然と輝く傑作「崩れ落ちる兵士」──。だがこの作品は本当にキャパのものなのか? 七十六年間封印されていた「真実」がついに明らかになる。

という触れ込みです。これは面白いです。是非読んで見てください。

雑誌なので写真の質が悪いのが難点ですが単行本化されるときにはこの点は解決されると思います。電子版でinteractiveなものが出ればさらに楽しく読めると思います。

読んで以下の様なことを考えました。

例えば誰かがある科学上の学説を論文としてまとめたとします。論文の査読上は特に問題は指摘されず発見の価値も高いということで雑誌への掲載が決まりました。しかしその論文には「ウソ」が記載されていました (この際この「ウソ」が意図的なウソかどうかは問いません。とにかく科学的な手続きによって検証されうる「ウソ」が含まれているのです)。

一方その発見自体は他の科学者によって追試されていつの間にか科学的な定説となっていきました。つまり「ウソ」によって導かれた結論はそれ自体は「本当」だったのです。

こういう状況をどう考えますか。

hard coreは「正しい」のだからsoft shellの瑕疵は見逃すのでしょうか。それともshellの瑕疵に基づき一旦はcoreは棄却されるべきなのでしょうか。(参照

沢木氏の考察の結果がどのようなものであるとしてもキャパの「崩れ落ちる兵士」または「人民軍兵士の死」は完全に一人歩きをしてきたのです。


2012年のベスト〜本(ノンフィクション)〜

去年に習って二系統に分けてみます。

 

まず非科学系

三位

Quiet” (参照)

二位

武器としての交渉思考」 (参照)

一位

Antifragile: Things That Gain from Disorder ” (参照)としようと思います。

実はまだ2/3位しか読んでいません。年末年始で読了したいと思います。

 

情報の呼吸法」(参照)

20歳の自分に受けさせたい文章講義」(参照)

などもよかったと思います。

 

次に科学系

三位

弱いロボット」(参照)

二位

医学と仮説」(参照) 出版されたのは昨年です。

一位

バイオパンク」(参照)としようと思います。

 

医学書などはぼくはほとんど読みませんが

内科救急 見逃し症例カンファレンス M&Mでエラーを防ぐ) (参照1, 参照2, 参照3)はタメになったとハッキリと言えると思います。

日本にもこういった文化が根付くとよいと思います。

 

ハイポキシア生物学の2012年を振り返って (参照昨年分もたぶんやります。


PDF

年末ですが判で押したような生活を送っています。
今年も某ブログに触発されてやってみます。(参照:2010年のベスト〜本(ノンフィクション)〜)

二系統に分けてみます。

まず非科学系。

ドストエフスキー
Thinking, Fast and Slow
ときて

Bestは
一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル
としておきます。

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次に科学系
不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生
原書は随分前に出版されてぼくは英語で読みましたが邦訳が今年出ました。
The Immortal Life of Henrietta Lacks参照

遺伝子医療革命―ゲノム科学がわたしたちを変える(参照
年始に出た本ですがすばらしい本だと思います。

Bestは
The Emperor of All Maladies: A Biography of Cancer(参照)
としておきます。
人類と「ガン」と関係の歴史というか年代記(クロニクル)です。副題をそのまま訳せば「ガンの伝記」ということになります。ガンの基礎研究というより社会への受容や治療法の変遷についての記述に力点が置かれています。特定の患者が登場する情緒に訴えるタイプのガンと人類との闘いを描いたものではありません。

医学部の学生教育として,上記三冊を英語でじっくり一年くらいかけて購読するゼミなどを開けばすごく有用だと思います。
必要な生物学的な知識などもその過程で身につけていくようなコースを開くのです。
このようなやり方で学んでも従来の試験を受けてもらっても十分に合格する基礎的な知識とか臨床に応用可能な知恵が身につくと思います。教科書の内容をそのまま暗記するだけのカリキュラムはうちの大学の学生にはふさわしくないと思います。

ちなみに,最新号のNEJMで著者のインタビューが聴けます。

今年はこれ以外に
ひらがな日本美術史
読破しました。

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年末までに
2011年のベスト〜本(フィクション)〜 (参考:2010年版
ハイポキシア生物学の2011年を振り返って (参考:2010年版
をやろうと思います。


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