2018年 研究総括

 

恒例ですので今年も「ハイポキシア生物学の2018年を振り返って」書こうと思ったのですがネタ切れなので自分の研究室の2018年の総括もいれて水増しします。

でも短いです。すみません。

 

今年の成果を報告する必要がありまとめてみたら論文は英文/邦文、原著/総説合わせて10報出せました。

教員は二人しかいないのでこれで十分だと自分では思っていますが他の人がどう思うかはわかりません。

 

今年はじめたプロジェクトにバクテリアのメタゲノムがあります。

12/27に論文がなんとかアクセプトになりました。

ノウハウを獲得したので今後しばらく続けていこうと思っています。

 

pubmedで”HIF[TIAB] and 2018[DP]” (2018 12/31)と検索窓に入力すると1717報の論文があると返ってきます。”HIF[TIAB] and 2016[DP]”では1695篇です。”HIF[TIAB] and 2017[DP]”1773報です。

“hypoxia[TIAB] and 2017[DP]” では6789報だったのが”hypoxia[TIAB] and 2018[DP] “(2018 12/31)では6826報です。

数年前から免疫の分野でHIF関連の優れた研究が次々と発表されるという傾向は今年も持続していました。一方で分子生物学会や癌学会の演題を検索しても低酸素とかHIFとかのキーワードをもつ演題はほんと少なくなりました、というのも去年と一緒です。

今年も免疫系の雑誌でよく取りあげられていたと思います。

 

多分これは書いて良いと思うのですが来年の9月の末にGLSさんが来日して職場でもセミナーを開いてくれる予定になっています。

セミナーのトピックスはhistory behind the science的なものにしてもらおうと思っています。

皆さんHIFについて彼が話しているのは聴いたことがあってもそれ以外の話はあまり聴かれたことがないのではないかと思います。

敢えてこじんまりとやろうと思います。またアナウンスします。

 

ぼくの論文の被引用回数をGoogle Scholarで定点観測をしています。

  • 2013年: 732
  • 2014年: 728
  • 2015年: 669
  • 2016年: 558
  • 2017年: 585
  • 2018年: 541 

と推移しています。

伸びが止まったもいえるしこれくらいで定常状態になったともいえるしこればっかしは自分がどれだけがんばっても過去の業績については何もできないのでこれから自然減を新たな論文で補っていくということになります。 まあどうでもよいことなのですが被引用回数は論文(雑誌でなく)に対する評価このように明確に数値化される指標があると気になります。

という訳で来年もよろしくお願いします。

来年は医学部の学生と読書会もはじめます。一冊目は「エピジェネティクス――新しい生命像をえがく」です。

このブログも続けていきます。


「私の人生観」

小林秀雄に「私の人生観」という作品があります。講演録のような体裁で書かれた比較的に長いものです。

冒頭近くに

天職」についての記述があります。

私は書くのが職業だから、この職業に、自分の喜びも悲しみも託して、この職業に深入りしております。深入りしてみると、仕事の中に、自ずから一種職業の秘密というべきものが現れてくるのを感じて来る.あらゆる専門家の特権であります。秘密と申してもむろんこれは公開したくないと意味の秘密ではない、公開が不可能なのだ.ヒトには全く通じようもない或るものなのだ。それどころか、自分にもはっきりしたものではないのかもしれぬ。ともかく、私は、自分の職病の命ずる特殊な具体的な技術の中に、そのなかだけに、私の考え方、私の感じ方、要するに私の生きる流儀を感得している。かような意識が職業に対する愛着であります。

という文章があり、その直後に

今日では様々な事情から人が自分の一切の喜ぶ喜びや苦しみ悲しみを託して悔いぬ職業を見つけることが大変困難になったので、多くの人が職業の中に人間の目的を発見することを諦めてしまったからです。これは悲しむべきことであります。

とあります。 ぼくは職業的に麻酔と基礎研究をしていますがいまや医者という職業は普通の労働者が行うものとなってしまいこの職業は「天職」として全うするのが困難になってしまったと思います。

今年世間的に話題になった医学部・医科大学の入学試験問題もこのような状況を反映したものだと思います。

 

一方基礎研究の界隈では研究者は単なる労働者でありタイムカードでその勤務状況を管理すべきだという議論はあったとしてまだまだすごく少数派です。

この「私の人生観」後半にはこんな記述があります。

私がここで、特に言いたい事は科学とは極めて厳格に構成された学問であり仮説と検証との間を非常な忍耐力を持って往ったり来たりする勤労であって今日の文化人が何かにつけて口にしたがる科学的な物の見方とか考え方とか言うものとは関係がないと言うことです。そんなものは単なる言葉に過ぎませぬ。実際には様々な種類の科学があり見る対象に従い見る人に気質に従い異なった様々な見方があるだけです。対象も持たず気質も持たない精神は科学的見方と言うような漠然たる観念を振り回すより他に能がない。心理的現実だとか歴史的現実だとか、何だかんだと彼んだとかいう現実の合理的模像が、彼を閉じ込めている。

おっしゃる通りに「科学的」であるとはそう簡単なことではありません。

これは職業的な科学者でもいうのですから閉口します。

医療でも同じです。医療とて体系を持った学問であり「仮説と検証との間を非常な忍耐力を持って往ったり来たりする勤労」であるのですがそれを理解していない人は多いと思います。

扱う材料に精通し、材料の使い方に個性的方法を自覚し、仕事の成り行きに関し、素人に伺い知れない必然性を意識し、成就した仕事に自分の人格の刻印を読む、そういうことがどんな仕事にせよ、練達の人には見られるのであるが、

 

前回書き忘れました。 「人体はこうしてつくられる――ひとつの細胞から始まったわたしたち

「素人に伺い知れない必然性を意識し、成就した仕事に自分の人格の刻印を読む」ような一冊です。

こういう本を書いてみたいものだと思います。

 

人体はこうしてつくられる――ひとつの細胞から始まったわたしたち


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恒例ですので今年も「ハイポキシア生物学の2017年を振り返って」をやります。 でも短いです。すみません。

~メトリクス~

pubmedで”HIF[TIAB] and 2017[DP]” (2017 12/31)と検索窓に入力すると1717篇の論文があると返ってきます。”HIF[TIAB] and 2016[DP]”では1719篇です。

“hypoxia[TIAB] and 2016[DP]” では6607篇だったのが”hypoxia[TIAB] and 2017[DP] “(2017 12/31)では6616篇です。

昨年から免疫とくに獲得免疫の分野でHIF関連の優れた研究が次々と発表されるという傾向は今年も持続していました。 分子生物学会や癌学会の演題を検索しても低酸素とかHIFとかのキーワードをもつ演題はほんと少なくなりました。

例年だとここで今年読んだ論文を紹介するのですが今年はなしです。 12月忙しくて準備不足。

この分野から来年こそは某ノーベル賞が出ることを祈っています


今年

ぼくの論文の被引用回数をGoogle Scholarで定点観測をしています。

  • 2013年: 724
  • 2014年: 718
  • 2015年: 651
  • 2016年: 547
  • 2017年: 570

と推移していて減少傾向が止まったように見えるのですがどうなのでしょうか

h-indexも45になりました。 これの引用が伸びました。

ぼくがscienceをすることの目標の一つは「他人の世界観を変革する」事なので論文が他人の論文に引用されるのはその指標の一つになっています。

引用されない論文は「産業廃棄物」だとぼくは思っています。


歩くこと

日が長い季節には帰宅途中、天満橋で電車を降りて(普段は終点の淀屋橋まで乗っています)歩くときがあります。

目標は、阪急梅田駅。

最短で歩けば3kmくらいですがわざといろんな道草を食べながら歩くと4km長ければ5kmくらい歩くことになります。小一時間くらいでしょうか。

研究室でうじうじ考えていても限界があります。そんな時は歩きます。

大阪の通りを見ながら考え事をしながら歩きます。

こんな本があります。

ウォークス 歩くことの精神史

興味があればどうぞ。

 

という訳で来年もよろしくお願いします。このブログも続けて行きます。


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恒例ですので今年も「ハイポキシア生物学の2016年を振り返って」をやります。

2002年に帰国したとき産業技術総合研究所の主任研究者になりました。

そこからしばらく基礎研究者が麻酔もする人間になっていたのですが,結局は麻酔をする人が基礎研究もする生活に戻りました。

今年の7月から再度基礎研究者が麻酔もするということになりました。


~メトリクス~

pubmedで”HIF[TIAB] and 2016[DP]” (2015 12/28)と検索窓にと検索窓に入力すると1688篇の論文があると返ってきます。HIF[TIAB] and 2015[DP]では1774篇です。

“hypoxia[TIAB] and 2014[DP]” では6207篇だったのが”hypoxia[TIAB] and 2016[DP] “(2015 12/28)では6471篇です。毎年これだけの論文が安定的に出ているという事に驚きます。

ちなみにコントロールの”iPS[TIAB] and 2014[DP]”では724篇で”iPS[TIAB] and 2015[DP]” (2015 12/28)では705篇でした。

今年は免疫とくに獲得免疫の分野でHIF関連の優れた研究が次々に発表されました。


アルバート・ラスカー基礎医学研究賞

アルバート・ラスカー基礎医学研究賞をSemzan氏が他の二人の研究者と受賞しました。

ぼくの研究の区切りがついたような気持ちがして清清した気分になりました。

とにかく自分が若い頃(1990年代)重要だと思ってかなり入れ込んだ仕事(HIF-1活性化の分子機序の解明)が確かに意味のあることだったと認めてもらえたことにすごく満足しています。 1990年代はこの分野の研究ヒストリーですごくexcitingな10年でした。この10年間を学問領域の立ち上がりからつぶさに観察・関与できて幸せな研究人生を送れたと思います。

残るはノーベル賞です。晴れ舞台でかつての仲間とreunionできたら最高です。

このブログに発表したエントリーをすこし変更して再度掲載してまとめとしておきます。手抜きです,済みません。

来年も研究はしますから関係者の皆さんよろしく!!


Lasker award

今年の2016 Albert Lasker Basic Medical Research Award

Gregg L. Semenza博士が、米国と英国の他の二人の研究者と共に決まりました。

 

受賞は

Oxygen sensing – an essential process for survival

への貢献です。

 

彼がJohns Hopkins Universityで運営してた(今もやってますが)labにぼくは1999年の8月から2002年の2月までvisiting professorとして参加しました。

 

彼の言葉で今でも印象に残っていることが二つあります。

HIF-1のcloningは彼が主に中国人のポスドク(Wang)と行った仕事なのですが、ある日、自分のオフィス(といってもラボの一角を仕切って作った2.5畳のスペース)の扉を閉めて「Kiichi、偉大な仕事をするためには優秀なポスドクが必要なんだ」と彼に言われたこと。

もう一つはぼくらのFIH-1の論文が出てしばらくした頃、研究室のぼくのベンチまで(彼がベンチまでやってくるのはとっても珍しい)満面の笑顔で「RatcllifeがFIH-1のクローンを欲しいといってきたよ」とわざわざいいに来たことです。

 

学会で来日したときには京大の麻酔科の比叡山が見える研究室を訪問してくれました。

その折りに「いつまで麻酔なんてやっているんだと。とっとと止めて研究に専念しろ」と言われたことも思い出しました。

 

Semenza研はHIF-1のcDNA cloning, HIF-1aのノックアウトマウスの報告において世界での先陣をきり、酸素分圧のセンシング機構でもFIH-1のcloningに成功していたのでこの分野でGreggが受賞するのは当然です。

 

彼自身が執筆したEssayが読めるようになっています。(参照)

Greggらしい文章ですね。

知っていたエピソードもあるし始めて聞いたネタもあります。

このビデオのGreggがいる場所は彼のオフィスです。BaltimoreのInner Harborが一望できる素晴らしい場所です。以前のオフィスとはまったく似ていません。 彼の部屋の片隅にMac SE/30が置いてあります。聞いたら初めてR01 grantが当たった時に使っていた記念の品なのだそうです。

 

この賞の受賞者は来月早々に発表されるNobel賞を受賞することが多いそうです。こっちももらってlab. memberがre-unionできたら幸せだろうな。

 

Google Schalorの統計に寄ればぼくはGreggとの共著論文ランキングの10位です。

 

ぼくらが20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて行っていた研究がLasker賞に結実したことはとても嬉しいです。

今回の受賞理由に挙がられている研究は1990年代にほぼ終わっていてHIFa水酸化酵素の報告もPHD, FIH-1とも2001年です。2001年にHIF活性化調節のセントラルドクマが定立されたのです。

ぼくらがその当時やっていたことは生物学上の重要課題であった、その課題の解決に貢献ができたということでぼくは満足です。

極東の一麻酔科医ができる最高の貢献だったと自負しています。

 

 

故森健次郎先生が大学院の研究を淀井淳司先生の研究室でやれとぼくに命令しなかったら、またその後ぼくにお前は日本にいたらダメになると言ってくれなかったらぼくがGreggの研究室に参加することはなかったし、研究もとっくの昔に止めていたと思います。

 

 


Lacker賞関連の紹介論文

Lacker賞関連の論文をいくつか紹介します。 いわゆる超一流誌に発表された論文で全てfreeで読むことができます

NEJM

The Hypoxia Response Pathways — Hats Off!

M. Celeste Simon, Ph.D.

 

JAMA

Pathways for Oxygen Regulation and Homeostasis

William G. Kaelin Jr; Peter J. Ratcliffe; Gregg L. Semenza

3人の共著!?論文です。

 

JCIには

William Kaelin, Peter Ratcliffe, and Gregg Semenza receive the 2016 Albert Lasker Basic Medical Research Award

Jillian H. Hurst

 

Cellは豪華版です。

Into Thin Air: How We Sense and Respond to Hypoxia.

Thompson CB.

に加えて

Karen氏とRatcllife氏の対談的インタビュー

Semenza氏のessay

 

今回の,受賞理由は1990年代の研究に基づきます。

HIF-1研究の初期から酸素分圧の低下に依存しないHIF-1の活性化の研究が続いていてこのラインの研究ががん研究とマージしたことがHIF-1の学問がblakeした理由だと理解しています。

PHDのcloningの論文が発表されたときもGreggはアレが本当の低酸素のセンサー分子であるかどうかは解らないという感想を述べていました。

PHD(PHD2)の発現はHIF-1により亢進することが知られていてそのような性質の分子を「センサー」とゥ呼ぶのが適切か解らないという意見です。まあ格好はいいわけですが。

それを割り引いてもHIF-1活性化のbona fide hypoxia senserの実体はいまだ藪の中だとぼくは考えています。

 

またぼくはこの論文この論文をすごく評価しています。


第14回がんとハイポキシア研究会での講演

第14回がんとハイポキシア研究会が11/4から岐阜市で開催されます。

二日目の午前中に20分ほどフリートーク風に今年のラスカー賞をきっかけに低酸素研究のいままでを話すことになっています (2016 年アルバート・ラスカー基礎医学賞を記念して)。

【追記】”Oxygen, Hypoxia and Beyond“として使ったスライドをfigureshareに上げてあります。(参照)


この分野ですがラスカー賞の対象になるくらいには発展していますのでおびただしい数の総説が今まで出版されています。

それをなぞるのでは面白くないのでちょっとひねった話をしたいと思っています。

ぼくの話を聞いていただくためには特別な予備知識は必要はないのですが以下の論文のアブストラクトだけでもながめておくとより楽しんでいただけるのではないかと思っています。

ラスカー賞の対象となった研究は1990年から10年くらいの期間に行われた研究が対象となっていますがその間に出版された論文を選んでみました。

どの論文もすでに古典となっている論文です。

読んでいない論文があればこれを機会に熟読玩味してみてください。

なお論文の頭に#をつけた論文はLasker財団のページで受賞理由で取り上げられているものです。

論文はpubmedにリンクしてあります。

EPO遺伝子の発現誘導

The regulated expression of erythropoietin by two human hepatoma cell lines. Goldberg MA, Glass GA, Cunningham JM, Bunn HF. Proc Natl Acad Sci U S A. 1987 Nov;84(22):7972-6. PMID: 2825172

Regulation of the erythropoietin gene: evidence that the oxygen sensor is a heme protein. Goldberg MA, Dunning SP, Bunn HF. Science. 1988 Dec 9;242(4884):1412-5. PMID: 2849206

Regulatory elements of the erythropoietin gene. Imagawa S, Goldberg MA, Doweiko J, Bunn HF. Blood. 1991 Jan 15;77(2):278-85. PMID: 1985694

Erythropoietin mRNA levels are governed by both the rate of gene transcription and posttranscriptional events. Goldberg MA, Gaut CC, Bunn HF. Blood. 1991 Jan 15;77(2):271-7. PMID: 1985693

この4篇に代表されるように初期にBunn氏の研究室が重要な役割を果たしました。 肝臓がん由来の細胞株でEPOの誘導が観察されること,EPO遺伝子上にRegulatory elementsが存在することなど後のHIF-1単離につながる重要な発見を報告しています。

 

追走するSemenza研

これを追いかけるようにまた並走してSemensa氏の研究室から次々に論文が出ていきました。

Polycythemia in transgenic mice expressing the human erythropoietin gene. Semenza GL, Traystman MD, Gearhart JD, Antonarakis SE. Proc Natl Acad Sci U S A. 1989 Apr;86(7):2301-5. PMID: 2928334

Human erythropoietin gene expression in transgenic mice: multiple transcription initiation sites and cis-acting regulatory elements. Semenza GL, Dureza RC, Traystman MD, Gearhart JD, Antonarakis SE. Mol Cell Biol. 1990 Mar;10(3):930-8. PMID: 2304468

Hypoxia-inducible nuclear factors bind to an enhancer element located 3′ to the human erythropoietin gene. Semenza GL, Nejfelt MK, Chi SM, Antonarakis SE. Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 Jul 1;88(13):5680-4. PMID: 2062846

A nuclear factor induced by hypoxia via de novo protein synthesis binds to the human erythropoietin gene enhancer at a site required for transcriptional activation. Semenza GL, Wang GL. Mol Cell Biol. 1992

Cell-type-specific and hypoxia-inducible expression of the human erythropoietin gene in transgenic mice. Semenza GL, Koury ST, Nejfelt MK, Gearhart JD, Antonarakis SE. Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 Oct 1;88(19):8725-9. PMID: 1924331

 

HIF-1の登場

General involvement of hypoxia-inducible factor 1 in transcriptional response to hypoxia. Wang GL, Semenza GL. Proc Natl Acad Sci U S A. 1993 May 1;90(9):4304-8. PMID: 8387214

Transcriptional regulation of genes encoding glycolytic enzymes by hypoxia-inducible factor 1. Semenza GL, Roth PH, Fang HM, Wang GL. J Biol Chem. 1994 Sep 23;269(38):23757-63. PMID: 8089148

1995年にはHIF-1の蛋白質の同定とcDNA単離が報告されました。

Purification and characterization of hypoxia-inducible factor 1. Wang GL, Semenza GL. J Biol Chem. 1995 Jan 20;270(3):1230-7. PMID: 7836384

Hypoxia-inducible factor 1 is a basic-helix-loop-helix-PAS heterodimer regulated by cellular O2 tension. Wang GL1, Jiang BH, Rue EA, Semenza GL. Proc Natl Acad Sci U S A. 1995 Jun 6;92(12):5510-4. PMID: 7539918

HIF-1のcDNA cloningの後の最も大きな問題はその活性化の分子機構の解明となりました。 活性化と一言にいっても当時はその意味合いも曖昧でした。 PNASの論文ではmRNAの発現をNorther blotで解析して1%O2, CoCl2, DFX処理でmRNAが「誘導」されるという実験結果が提示されています。 HIF-1a HIF-1bに対する抗体を使ったデータはありますがHIF-1aに加えてHIF-1bの蛋白質発現も「誘導」されるという結果が提示されています。 Hep3Bを用いた実験結果ですのでこれは現在流通しているコンセンサスとは異なります。

そこの後の解析で少なくとも細胞株ではHIF-1a, HIF-1bともmRNAは酸素分圧が変化に応答して発現が大きく変化すること言うことはないが,HIF-1aの蛋白質の発現は酸素分圧の低下に相関して増大することが解ってきました。

Hypoxia-inducible factor 1 levels vary exponentially over a physiologically relevant range of O2 tension. Jiang BH, Semenza GL, Bauer C, Marti HH. Am J Physiol. 1996 Oct;271(4 Pt 1):C1172-80. PMID: 8897823

そうこうしているうちに1997年にはHIF-1aが酸素分圧依存のユビキチン化を受けていて低酸素環境下では蛋白質が安定化するという機序で細胞内で蓄積するという報告が相次ぎました。

 

HIF-1の酸素分圧依存性の活性化

Hypoxia-inducible factor 1alpha (HIF-1alpha) protein is rapidly degraded by the ubiquitin-proteasome system under normoxic conditions. Its stabilization by hypoxia depends on redox-induced changes. Salceda S, Caro J. J Biol Chem. 1997 Sep 5;272(36):22642-7. PMID: 9278421

Regulation of hypoxia-inducible factor 1alpha is mediated by an O2-dependent degradation domain via the ubiquitin-proteasome pathway. Huang LE, Gu J, Schau M, Bunn HF. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Jul 7;95(14):7987-92. PMID: 9653127

Regulation of the hypoxia-inducible transcription factor 1alpha by the ubiquitin-proteasome pathway. Kallio PJ, Wilson WJ, O’Brien S, Makino Y, Poellinger L. J Biol Chem. 1999 Mar 5;274(10):6519-25. PMID: 10037745

1999年にはこのユビキチン化にVHL-E3 ligaseの構成分子-が重要な役割を果たしているという一連の報告がされました。ここら辺からKaelin氏, Ratcliffe氏が大きな役割を果たすようになってきました。

The tumour suppressor protein VHL targets hypoxia-inducible factors for oxygen-dependent proteolysis. Maxwell PH, Wiesener MS, Chang GW, Clifford SC, Vaux EC, Cockman ME, Wykoff CC, Pugh CW, Maher ER, Ratcliffe PJ. Nature. 1999 May 20;399(6733):271-5. PMID: 10353251

Ubiquitination of hypoxia-inducible factor requires direct binding to the beta-domain of the von Hippel-Lindau protein. Ohh M, Park CW, Ivan M, Hoffman MA, Kim TY, Huang LE, Pavletich N, Chau V, Kaelin WG. Nat Cell Biol. 2000 Jul;2(7):423-7. PMID: 10878807

Mechanism of regulation of the hypoxia-inducible factor-1 alpha by the von Hippel-Lindau tumor suppressor protein. Tanimoto K, Makino Y, Pereira T, Poellinger L. EMBO J. 2000 Aug 15;19(16):4298-309. PMID: 10944113

2001年は当たり年でした。 VHLを含むユビキチン化システムのHIF-1aへの指向性がHIF-1aのプロリン残基の水酸化に依存しているという論文がScieceにKaelin氏とRatcliffe氏のグループからback-to-backで立て続けにでてCellにはその水酸化を担う酸素添加酵素のcDNA cloningに成功した世という論文がRatcliffe氏の研究室から報告されたのです。

HIFalpha targeted for VHL-mediated destruction by proline hydroxylation: implications for O2 sensing. Ivan M, Kondo K, Yang H, Kim W, Valiando J, Ohh M, Salic A, Asara JM, Lane WS, Kaelin WG Jr. Science. 2001 Apr 20;292(5516):464-8. PMID: 11292862

Targeting of HIF-alpha to the von Hippel-Lindau ubiquitylation complex by O2-regulated prolyl hydroxylation. Jaakkola P, Mole DR, Tian YM, Wilson MI, Gielbert J, Gaskell SJ, von Kriegsheim A, Hebestreit HF, Mukherji M, Schofield CJ, Maxwell PH, Pugh CW, Ratcliffe PJ. Science. 2001 Apr 20;292(5516):468-72. PMID: 11292861

 

HIF-1aプロリン残基を水酸化する酸素添加酵素の同定

C. elegans EGL-9 and mammalian homologs define a family of dioxygenases that regulate HIF by prolyl hydroxylation. Epstein AC, Gleadle JM, McNeill LA, Hewitson KS, O’Rourke J, Mole DR, Mukherji M, Metzen E, Wilson MI, Dhanda A, Tian YM, Masson N, Hamilton DL, Jaakkola P, Barstead R, Hodgkin J, Maxwell PH, Pugh CW, Schofield CJ, Ratcliffe PJ. Cell. 2001 Oct 5;107(1):43-54. PMID: 11595184

 

実はぼくらのFIH-1のcDNA cloingもひっそりと2001年に報告したのですがこれがもう一つの水酸化酵素だという報告は次の年になされました。

これで酸素分圧依存性のHIF-1a蛋白質の安定性とHIF-1aの転写活性化を説明するセントラルドグマが定立されたのです。

 

日陰者のFIH-1

FIH-1: a novel protein that interacts with HIF-1alpha and VHL to mediate repression of HIF-1 transcriptional activity. Mahon PC, Hirota K, Semenza GL. Genes Dev. 2001 Oct 15;15(20):2675-86. PMID: 11641274

FIH-1 is an asparaginyl hydroxylase enzyme that regulates the transcriptional activity of hypoxia-inducible factor. Lando D, Peet DJ, Gorman JJ, Whelan DA, Whitelaw ML, Bruick RK. Genes Dev. 2002 Jun 15;16(12):1466-71. PMID: 12080085


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