恒例ですので今年も「ハイポキシア生物学の2015年を振り返って」をやります。


~メトリクス~

pubmedで”HIF[TIAB] and 2015[DP]” (2015 12/28)と検索窓にと検索窓に入力すると1712篇の論文があると返ってきます。HIF[TIAB] and 2014[DP]では1705篇です。

“hypoxia[TIAB] and 2014[DP]” では6081篇だったのが”hypoxia[TIAB] and 2015[DP] “(2015 12/28)では6207篇です。毎年これだけの論文が安定的に出ているという事に驚きます。

ちなみにコントロールの”iPS[TIAB] and 2014[DP]”では728篇で”iPS[TIAB] and 2015[DP]” (2015 12/28)では724篇でした。

 


~注目論文~

論文のチェックを毎週行っています。 まずタイトルを読んでこれはと思うとアブストラクトまで読みます。そこから図までチェックする論文は毎週20篇くらいはあると思います。 そこから論文を印刷して赤ペンでチェックしながら全部読んで引用文献もチェックした論文にはPapersで★を五つの満点をつけます。

数が多くなってはシグナルとしての効果が薄くなるのであまりたくさんの論文には★★★★★をつけません。

以下★★★★★の論文の一部を列挙してみます。

 

#1 Hypoxia Signaling Cascade for Erythropoietin Production in Hepatocytes. MCB 鈴木さんの研究室からの論文。

#2 Glutathione and thioredoxin antioxidant pathways synergize to drive cancer initiation and progression. Cancer Cell 一種のリバイバルですね

#3 Insulator dysfunction and oncogene activation in IDH mutant gliomas Nature


ミトコンドリア関連

#4 Supporting Aspartate Biosynthesis Is an Essential Function of Respiration in Proliferating Cells Cell

#5 An Essential Role of the Mitochondrial Electron Transport Chain in Cell Proliferation Is to Enable Aspartate Synthesis. Cell

#6 Metabolic rescue in pluripotent cells from patients with mtDNA disease. Nature

#7 Mitochondrial reticulum for cellular energy distribution in muscle. Nature

#3 “にはちょっと驚きました。

“#4″ ,”#5″ は最近のぼくの研究の興味もあって興味をもって精読しました。

 

#8 A lactate-induced response to hypoxia. Cell 

#9 Ferritin-Mediated Iron Sequestration Stabilizes Hypoxia-Inducible Factor-1α upon LPS Activation in the Presence of Ample Oxygen. Cell Reports 

ちょっとホントかねとも思いましたがおもしろいことにはおもしろい。

 

最後に

#10 Hypoxia fate mapping identifies cycling cardiomyocytes in the adult heart. Nature

#11 Integrated molecular analysis of adult T cell leukemia/lymphoma. Nature Genetics

以下の二つとくに#11 “には脱帽です。


今年一年ぼくたちのjournal clubで読んだ論文をまとめて見ました。

http://togetter.com/li/912111

 

もう死んでしまった師匠は研究はウシの涎の様なものだ、つまりキリがないのだと常々話していました。

ぼくは低酸素研究の以前にはthioredoxinという小さいー分子量が小さいという意味ですー蛋白質の研究をしていました。今まで細々としか続けてこなかったthioredoxin研究をぼくのメインテーマに据えて行こうと思っています。

 

2016年もしばらくはこのブログは続けるつもりです。

 

最後に

<blockquote class=”twitter-tweet” lang=”ja”><p lang=”ja” dir=”ltr”>なんだかんだいって、学位論文を出すことが大学院生に課せられているものです。これは何を意味するかというと、「オリジナル」を生み出せ、ということです。自分の専門分野については、指導教授よりも詳しくなれということ。大学院の様相はもの凄い勢いで変転していますが、この根幹は変わりません。</p>&mdash; 丸島和洋 (@kazumaru_cf) <a href=”https://twitter.com/kazumaru_cf/status/682257610892955649″>2015, 12 30</a></blockquote>

<script async src=”//platform.twitter.com/widgets.js” charset=”utf-8″></script>

だってさ。


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ハイポキシア生物学の2011年を振りかえって今年のブログ納めにしようと思います。

昨年同様まず統計から。
pubmedを(HIF[TIAB] and 2011[DP])で検索すると1291件と出ました。昨年が1136件でしたのでほぼ同じ勢いです。毎日3つ以上HIF関連の論文が出版されているのです。

また(hypoxia[TIAB] and 2011[DP])だと4652件。昨年が4167件でしたのでこちらはたぶん有意に増加ですね。

ちなみに(iPS[TIAB] and 2011[DP])は 598件ですし,(anesthesia[TIAB] or anesthesiology [TIAB]) and 2011[DP] は4679件です。

IMG_1409

酸素がさまざまな生命現象に関わっているということがあるので酸素分圧感知機構-HIFの経路も様々な生命現象に関わっています。すでに2000年にはGLSによるこんな総説が出ているほどです。
そして今年はとうとうNEJMに
Oxygen Sensing, Homeostasis, and Disease

N Engl J Med. 2011 Aug 11;365(6):537-47.

が掲載されました。快挙ですね。

昨年

来年はHIFの活性化機構を原理として利用する方法でない細胞内酸素分圧のimagingが可能になってくると思います。今年発表されたいくつかのprobeを使ったよい研究が出て来るのが楽しみです。

と書きました。

理想のプローブは今年も現れませんでしたが
Hypoxia-sensitive fluorescent probes for in vivo real-time fluorescence imaging of acute ischemia.

J Am Chem Soc. 2010 Nov 17;132(45):15846-8

で記述されているローブには興味を引かれました。
研究会でも直接お話しを伺うことができました。
腎臓は酸素消費量が多くHRE依存的な遺伝子発現が通常酸素分圧下で生きているマウスでも観察されます。このような領域を低酸素領域と呼ぶかどうかは別としてこの程度のHIFの活性化をある程度の線形性をもって表現できる低酸素プローブが開発されてリアルイメージングに応用できるとよいと思います。
ぼくのほしいプローブはこんなプローブです。よろしくお願いします。できたらはじめに使わせてください。

その他の低酸素プローブにはあまり興味をもてませんでした。

Natureに植物の低酸素応答に関する論文が二つback-to-backで出ていました。
Oxygen sensing in plants is mediated by an N-end rule pathway for protein destabilization

Nature. 2011 Oct 23;479(7373):419-22. doi: 10.1038/nature10536.


Homeostatic response to hypoxia is regulated by the N-end rule pathway in plants.

Nature. 2011 Oct 23;479(7373):415-8. doi: 10.1038/nature10534.

たぶんぼくは完全に理解はできないと思いましたがネタとしては知っておくのがよいと思ったので読んでみました。

TRPA1 underlies a sensing mechanism for O2.

Nat Chem Biol. 2011 Aug 28;7(10):701-11. doi: 10.1038/nchembio.640.

もよい論文です。TRP channelがサブタイプ特異的に環境の酸素分圧の上がり下がりをセンスしていてるということを示した論文です。この論文も著者の高橋さんにぼくらの勉強会でセミナーをしていただきいろんな話を聞けました。来年度やりたい人がいれば挑戦していただきたいとぼくは思っています。
今年も医科研の坂本先生のMint3ネタで論文が出ています。
Deletion of the Mint3/APBA3 gene in mice abrogates macrophage functions and increases resistance to lipopolysaccaride-induced septic shock.

J Biol Chem. 2011 Sep 16;286(37):32542-51.

Pyruvate kinase M2 is a PHD3-stimulated coactivator for hypoxia-inducible factor 1.

Cell. 2011 May 27;145(5):732-44.

MCM proteins are negative regulators of hypoxia-inducible factor 1.

Mol Cell. 2011 Jun 10;42(5):700-12.

Hypoxia. Cross talk between oxygen sensing and the cell cycle machinery.

Am J Physiol Cell Physiol. 2011 Sep;301(3):C550-2.

これらもよかったです。
GLS件はやはり一歩進んでいる感じがします。
以前といってもぼくが大学生の頃NHKのFM放送に作家の五木寛之が出演していて自分の立ち位置をトラック競技になぞらえて話していたことがあり今でも記憶に残っています。つまり自分は他のランナーの集団から少し先を走っているのであるがその少しはそのように見えるだけであって実はトラック一周先行した上での少し先なのだと。生命科学の世界でもそのような研究室ってありますよね。
そうそう
Control of T(H)17/T(reg) balance by hypoxia-inducible factor 1.

Cell. 2011 Sep 2;146(5):772-84.

これも印象的でした。先行論文があったのですがこっちはCellということで勢いの違いはあるのだと思います。

A HIF-1 target, ATIA, protects cells from apoptosis by modulating the mitochondrial thioredoxin,TRX2.

Mol Cell. 2011 Jun 10;42(5):597-609.

thioredoxin関連はいつも注目しています。

また腎臓のEPO産生細胞についての京大の柳田さん-御大ではありません。念のため。でも御大みたいなものかも-の研究室の
Dysfunction of fibroblasts of extrarenal origin underlies renal fibrosis and renal anemia in mice.

J Clin Invest. 2011 Oct 3;121(10):3981-90. doi: 10.1172/JCI57301


東北大学の山本先生のお部屋の鈴木さん方の
Isolation and characterization of renal erythropoietin-producing cells from genetically produced anemia mice.

PLoS One. 2011;6(10):e25839.

はすごいと思いました。

論文を読むとPapersで整理して☆をつけます。
最高が☆☆☆☆☆なわけですが,今日整理していて

Hypoxia increases transepithelial electrical conductance and reduces occludin at the plasmamembrane in alveolar epithelial cells via PKC-ζ and PP2A pathway.
Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2011 Apr;300(4):L569-78.

にも☆☆☆☆☆がつていました。
これ麻酔科医にとってはとても興味深い論文です。

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低酸素関連で
Hypoxia and inflammation.

N Engl J Med. 2011 Feb 17;364(7):656-65.

Oxygen Sensing, Homeostasis, and Disease

N Engl J Med. 2011 Aug 11;365(6):537-47.

の二篇NEJMに出たのには感動しました。
この世界Nature, Cellといっても十分でなくNEJMに総説として取り上げられてやっと一人前という世界ですから。

最後にぼくの研究室の論文を紹介してお終いにしたいと思います。
Hydrogen Sulfide Inhibits Hypoxia- But Not Anoxia-Induced Hypoxia-Inducible Factor 1 Activation in a von Hippel-Lindau- and Mitochondria-Dependent Manner

Antioxid Redox Signal. 2012 Feb 1;16(3):203-16. Epub 2011 Oct 17.

院生の甲斐さんの論文です。
これは結構引用される論文になると思います。

気がついた論文を列挙してみました。

今年☆☆☆☆☆をつけた論文が20篇ほどありました。☆☆☆☆で 10篇くらいです。ですので紹介したのはほんの一部です。
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というわけで今年もこのブログ愛読ありがとうございました。
今の職場を辞めるまで続けると思います。

それでは皆さんよいお年をお迎えくださいませ。


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今日で今年の仕事は最後にしたいです。

ここ二週間ほど夕方になると熱っぽくなりほんと電池切れといった感じになります。

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さて最後に今年のハイポキシア生物学を振り返ってみようと思います。

pubmedを(HIF[TIAB] and 2010[DP])という検索式で調べてみると1136件の論文がヒットします。

過去5年間で同じ検索をすると論文数は下のグラフのように推移していました。

論文数.tif

HIF-1のcDNA単離からすでに15年経ちますがこの分野なお成長し続けています。

また(hypoxia [TIAB] and 2010[DP])だと4167件です。

一方、(anesthesia[TIAB] or anesthesiology [TIAB]) and 2010[DP]だと4361件です。

低酸素研究は麻酔研究全体に匹敵する規模の研究領域なのでしょうか。

ちなみにiPS[TIAB] and 2010[DP]は559件でした。

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今年のこの業界のトピックスをぼくの観点から具体的に論文を挙げて概観してみたいと思います。

あくまでぼくの興味に基づいています。

一月の Keystone meetingの雑感でも書きましたが、FIH-1と Chuvash polycythemia関係でよい研究がいくつか出て来ました。

医科研の清木先生の研究室からの一連のMint3関連の研究では

  • A membrane protease regulates energy production in macrophages by activating hypoxia-inducible factor-1 via a non-proteolytic mechanism
    J Biol Chem. 2010 Sep 24;285(39):29951-6
  • が今年出ました。すばらしいです。

    FIH-1のknockoutの論文もやっと出ました。

    The Asparaginyl Hydroxylase Factor Inhibiting HIF-1alpha Is an Essential Regulator of Metabolism

    Cell Metab. 2010 May 5;11(5):364-78.

    Chuvash polycythemia関連では

    などが出版されました。
    10年前に関わった研究(これこれ)が発展してきてうれしい。

    また代謝との関連でHIF-1, HIF-2が論じられる頻度が格段に増えてきました。

    おびただしい数の論文がでましたが

    をあげておこうと思います。示唆に富む論文だと思います。

    これまたKeystoneでも論じられていましたが高山医学の遺伝学がHIFと完全に結びついてきました。


    はどはその成果です。

    結局HIF周辺に落ちてくるわけですからビックリします。

    HIF-2とHIF-1の違いとくにHIF-2の特権性をあらわにした論文がいくつも出ました。

    これらはその例だと思います。

    genome研究の成果としては

  • Genome-wide association study of renal cell carcinoma identifies two susceptibility loci on 2p21 and 11q13.3
    Nat Genet. 2010 Dec 5
  • この論文も見逃せません。

    2p21の遺伝子はEPAS1です。

    来年はHIFの活性化機構を原理として利用する方法でない細胞内酸素分圧のimagingが可能になってくると思います。

    今年発表されたいくつかのprobeを使ったよい研究が出て来るのが楽しみです。

    それとの関連で

    も注目すべき論文だと思います。

    鉄代謝はもっともっと追究されるべき分野だと思います。これにはぼくも何とか食い込んでいきたいと思っています。

  • Regulation of iron homeostasis by the hypoxia-inducible transcription factors (HIFs)
    J Clin Invest. 2007 Jul;117(7):1926-32.
  • またstem cellの学問との関連を追及した良い論文が出て来ました。

  • Regulation of the HIF-1alpha level is essential for hematopoietic stem cells.
    Cell Stem Cell. 2010 Sep 3;7(3):391-402.
  • 臨床との関連でいくつか挙げておきます。

    最後に

  • Adenoviral transfer of HIF-1alpha enhances vascular responses to critical limb ischemia in diabetic mice
    Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Dec 15;106(50):21276-81.
  • この論文で使っているadenovirusはぼくがGLS研時代に作出したものです。

    とうわけでまとまりに欠けてますが 2010年のハイポキシア生物学を振り返ってみました。
    
今日は1時間くらい掛けました。

    それでは皆さんよいお歳をお迎えください。

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