「神」と再会

On 2017/3/21 火曜日, in book, hypoxia reseacrh, by bodyhacker

例年この時期は花粉症の症状はきつくないのですが今年はひどい。

来年も今年並みになるのであれば何か根本的な対策を講じる必要があるという位ひどいです。

生産性がガタ落ちです。

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「神」と再会

ぼくは大学を卒業後4年間臨床麻酔だけをした後,大学院に入学しました。 どこで何を研究するか当時まだ健在だった森先生と激論の末,ウイルス研究所の淀井淳司先生の研究室に「わらじを脱ぐ」ことになりました。

当時淀井先生の研究室ではいくつかのプロジェクトが動いていたのですがぼくはthioredoxinという蛋白質の細胞内での機能の解析をテーマとすることになりました。

最初の三年くらいはデータらしいデータも出ず,しかし,それを軌道修正してくれる人もいないという状況で孤軍ではないまでもとにかく奮闘をムダに続けていました。だからといって放置されていたわけでもなかったのですが…

意地で頑張っていたら,三年目くらいからデータが出始めて四年目にはたぶんこのまま続けていれば論文になるだろうというところまでようやく到達しました。

 

淀井先生の研究室に伝説の研究者がかつて在籍していました。ぼくが淀井研に参加した当時は米国で研究を開始していたので直接の交流はなかったのですがそれ故伝説化というか神格化-まさに神格化という言葉がぴったり-されていました。

そもそもthioredoxinも「神」がADFとして単離に成功した蛋白質でした。

 

今となってはよく覚えていないのですが何かの機会に「神」にお会いしたときに淀井先生から促されてぼくの研究の紹介をしたことがありました。

その時に「これは細胞内のレドックスシグナルにカスケードが存在しているということを主張しているのだね」というようなコメントをもらって「はっ」と蒙を啓かれたという体験をしたことを今でも覚えています。

ホントに今も研究続けている理由の一つと言ってもよいかも知れないほどの体験でした。

今でもdataさえ積み上げれば解ってくれる人は解ってくれると思ってはいるのですが論文には物語はやっぱり必要だろうとおも思っています。

少ししてその論文は出版されてぼくの学位論文になりました。

ぼくの25年ほどの研究人生での最高傑作だと現在でも思っています。留学の時応募した奨学金に2年連続通ったのもその論文のお陰です,きっと。

発想がすばらしいのです端的に。

 

その「神」が日本で開催された学会に出席の為一時帰国されて先週の月曜日に淀井研縁の7人で酒を呑みました。

初心に戻る事ができました。

 

「神」語録をもう一つ。

医学部を卒業して国家試験に合格した能力がある大学院生に4年で学位を取得させられなければそれは指導者の責任だ

聞いたときギョッとしました。

指導者がアホだと院生が学位を取得できない!! つまり院生が学位を取れないとうことは指導者がアホ!!

 


悪魔の勉強法」に参考文献として取り上げられていた「伊藤君AtoE」を読みました。

おもしろいしタメになります。

梅田の紀伊国屋でも一冊しか置いてありませんでしたけど。

A 伊藤に長い間片思いするが、粗末に扱われ続けるデパート勤務の美人

B 伊藤からストーカーまがいの好意を持たれてブチ切れる、バイトに身の入らないフリーター

C 伊藤の童貞を奪う、男が切れたことのないデパ地下ケーキ店の副店長

D 処女を理由に伊藤にふられるも、売れっ子放送作家を初体験の相手に選ぶ大学職員

E 伊藤が熱心に勉強会に通う、すでに売れなくなった33歳の脚本家

AからEの5人が伊藤君と関わっていく小説です。

Apple Musicで「三番目の風」という曲を聴いてこれは名曲だと思ったのですがPVを見てぼくの思ったのと違ってびっくりしました。

でも「名曲」です。


有識者会

土曜日にいつもお世話になっている有識者とカンファレンスを開いて次のprojectへのアドバイスをいただきました。

このprojectは何とか成就したいです。

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放牧か飼育か

On 2014/4/13 日曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

10日ほど前から風邪なのか花粉症か区別の付かないような症状が出ていたのですがここにきてようやく寛解状態に向かっている感じがしてきました。 とはいえどうもスッキリしません。

「脳の中の時間旅行 : なぜ時間はワープするのか」 に書いてあったのですが体温が高くなると時間が早くゆっくり進む(と感じる)のだそうです。

言われてみるとそんな気もします。

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再現するのって結構むずかしい

今ボストンにいる甲斐さんの論文 The volatile anesthetic isoflurane differentially suppresses the induction of erythropoietin synthesis elicited by acute anemia and systemic hypoxemia in mice in an hypoxia-inducible factor-2-dependent manner がEuropean Journal of Pharmacologyにアクセプトされて出版されました。(参照

結構な難産でした。

理由は簡単で査読者を簡単に納得させるためにはデータ量が足りなかったからです。現象はすごくおもしろいし十分な再現性があると思いますが論文として査読を経るとなるといろいろと指摘されることになります。 査読コメントにはトンデモないものもありEditorに抗議をしたりしてやっとアクセプトです。最近は一回くらいrejectされても査読の問題点を取り合えずeditorに送ってみるくらいにはずうずうしくなりました。大抵の場合(といってもぼくのレベルの場合はですけど)はもう一度査読に廻してくれます。

生体が低酸素に暴露されると血清中のエリスロポエチンの濃度が上昇します。甲斐さんの論文の前に田中さんが低酸素血症では脳と腎臓でEPOが誘導されて同時に血清中のEPOの濃度がおそらくHIF-2a依存的に上昇するのではないかという論文を発表していました。またこの上昇は揮発性吸入麻酔薬イソフルランに感受性です。つまりイソフルランの吸入でEPOの上昇は抑制されます。しかしこの抑制は脳でのみ観察されて腎臓でのEPOのmRNA誘導は抑制されませんでした。

今回は脱血により貧血状態を作った場合にどうなるのかという検討を行いました。マウスの眼窩から脱血を行うとヘモグロビンが低下します。 貧血を誘導しても低酸素血症とほぼ同じような時間的なプロフィールでEPOの上昇が観察されます。しかし低酸素血症の場合と異なりこの上昇は腎臓でのみ観察されて脳では観察されません。さらにイソフルランは脱血モデルは腎臓でのEPO mRNAの上昇を抑制しました。 つまり組織低酸素をもたらす低酸素血症と脱血による貧血ではEPO誘導の機序が異なりまたイソフルランへの感受性にも違いがあるということがわかったということです。

簡単な実験なのですが結構おもしろい事を主張しているとぼくは思っています。

このような実験を進めたのには訳があります。

すごく以前にぼくが留学する前に一緒に研究をしていた伊藤さんという大学院生がいました。今は高松の病院で臨床医として活躍しています。ぼくと研究をした初めての大学院です。 彼と行った実験結果をまとめた論文があります。

Reversible inhibition of hypoxia-inducible factor 1 activation by exposure of hypoxic cells to the volatile anesthetic halothane.参照

つまり揮発性吸入麻酔薬のhalothaneは培養細胞 (Hep3B細胞)では低酸素誘導性のHIF-1の活性化を抑制するという発見です。 単純な実験ですが何の問題も無くアクセプトされました。 その後-といってもぼくらの論文の5年後ーにAnesthesiologysという雑誌に Up-regulation of hypoxia inducible factor 1alpha by isoflurane in Hep3B cells. という論文が掲載されました。

ぼくらはhalothaneという薬剤を使いましたがこっちは同じ揮発性吸入麻酔薬ですがisofluraneを使っています。 ぼくらは低酸素環境下でのHIF-1の活性化への影響に主眼を置きましたが、こちらの論文では20%酸素環境下でのisofluraneのHIF-1活性化に与える影響を調べたものです。

実はぼくはisofluraneの影響もそれまでに調べたことはありましたがHIF-1の活性化を観察することはありませんでした。

培養細胞に麻酔薬に暴露するだけの簡単な実験ですから間違えようがないともいえるのですが、この齟齬の理由は定かではありません。

Anesthesiology誌の論文はぼくが査読したのではありませんが査読がぼくに廻ったとしてもぼくらの実験結果と違うという理由でreject相当とは判断でき無いくらい小さくまとまった論文でした。

何時か動物の生体内でこの問題に決着をつけたいということはすっと思っていました。 そこに田中先生が来てくれたので彼と相談して研究を始めたことがまとまったものが紹介した

General anesthetics inhibit erythropoietin induction under hypoxic conditions in the mouse brain. です。

この実験でハッキリしたことは空気を吸入して生きているマウスをisofluraneに暴露してもHIF-1やHIF-2の活性化は観察できないうことです。 そして今回の甲斐さんの論文です。 これらの研究でも実は行っていない検討がいくつかあるのですがぼくとしてかなり満足しました。

これに限らず、一見矛盾する研究結果がいろんな雑誌で発表されています。

人によっては明らかに自分では再現できない観察結果を論文にする人もいますがそうで無い場合もいくらでもあります。 なので「再現性」の問題は難問だとぼくは思っています。

少なくとも「著者しか再現できないからその研究の主張が「間違え」だとか「意味が無い」」という言い方にはぼくは同意できません。


放牧と飼育

@enodon さんのブログエントリー「放牧ラボとブロイラーラボ~人材育成の流儀」 を読みました。

私がかつて所属した浅島誠先生の研究室も「放牧ラボ(研究室)」でした。もちろん研究室のテーマはありましたが、院生が必死に考え、先輩たちから方法を聞いたり、どこかに学びに行ったりして研究していました。論文を書くのも、エディターとのやり取りも、院生主導です。

ぼくの院生時代の研究室もこんな感じでした。

という訳でぼくは4年(医者は修士課程が無く直接博士課程に入ってそのかわりに4年です)で学位は取れませんでした。 でも今となってみればこういう研究室だったので今の自分があると思っています。

一度はぼくを破門した当時の麻酔科の教授には「大学院でがつがつ研究成果を上げる必要はない。お前みたいな凡庸な人間は努力して10年くらいの後に自分のテーマといえるものが見つかればそれで十分である。」と言われました。その観点からは「放牧上等」ということでしょうか。

そうなると、悠長に院生の自立を待つ時間がありません。テーマを与え、こうやれ、と細かく指示する。医学系の研究室に多いと思いますが、院生は実験データだけ出すことを求められ、論文は書くことに慣れている教授が書いてしまう。そのほうが効率がよいわけです。院生にとっても、早く論文が出ますし、影響力の高い論文を出すこともできる。次の職を探す上で有利になります。

ぼくの留学先はこんな感じだったと思います。

ポスドク、テクニシャンはすごいストレスを感じていたと思います。週に一回のデータ検討会が終わと一週間が終わった気がするとポスドクの一人が話していました。木曜日にやっていたのですが彼にとって金曜日は休息日なのです。

論文もPIのおじさん(今ではあんなに有名になりましたがぼくが合流したときはprofessorではありませんでした)がぜんぶ書いてしまいます。余所のPIにきいても素晴らしい英語を書くと言われていました。Endnoteも使わずあっという間に論文を仕上げてしまうのです。

ぼくも自分のアイデアで行った実験は自分で論文を書きましたがPIの仕事は彼が論文を書きました。 この経験からも得るところはありました。

ちなみにさっきの教授には留学するときに「米国で一旗揚げようなどと妙なことを考えてはいけない。自分の道楽(研究の事)に家族を巻き込むなどの愚をおかしてはいけない。とにかくちゃんと食べて元気で帰国するように。お金が無くなったら牛肉を食べて牛乳を飲んでいればなんとかなる。」と言われました。

別に何の成果もなくとも「骨は拾ってやる」という意味だったのでしょうか。すでに退官していたのですけど…

というわけでこんなtweetをしたのですが若い人中心にちょいウケしたようです。

(明かな誤字の修正をしました)

 


某問題は笹井さんが出てきて話すそうですね。

ぼくとしては実は

 

 

と思っています。そして「何か」が何か知りたいと思っています。

御大も

 

とtweetしています。

実は多くの人に取って笹井さんの会見は先週の「某キャンペーン」より重要な「意味」を持つと思います。

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写真の左奥の建物はあの「新阪急ホテル」です。こんな観点から会場に選ばれていたのですね。

文藝春秋の5月号

特集 は

立花 隆 生命の謎に挑む

「寿命、容貌、知能、運動神経……運命は変えられるか」

です。

三編の対談

「百万人ゲノム計画」で医療の常識が変わる
(産業技術総合研究所フェロー)浅島 誠

人類の起源をたどる「ゲノムの旅」
(東京大学教授)菅野純夫

がんの遺伝子から特効薬を作る
(自治医科大学学長)永井良三

中山先生による未来予想

人間が“第二の創造主”になるとき  (九州大学教授)中山敬一

に加えて

私たち、遺伝子検査を受けてみました   阿川佐和子×檀 ふみ×冨田 勝

という鼎談で構成されています。

「私たち、遺伝子検査を受けてみました」は立ち読みでもよいので読みましょう。


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