研究室に参加している医学部の学生が第一著者の論文が出版されました。雑誌の都合でLetter to EditorになりましたがAdditinal Filesが5まである立派な論文です。
田中くんおめでとう。
当部門からの研究成果が論文になりました https://t.co/v50jVJUjcv
— 侵襲反応制御部門@KMU (@hss_kmu)
クラーク電極を使っていたときから細胞の酸素消費量のassayを担当してもらっていました
現在も彼が第一著者の論文を計画中です
実験は全部終わっています
もう博士(某)でいいと思うのですが… https://t.co/6FTxNOH2xF— Hirota, K. (@bodyhacker)
the mule
この前の日曜日に久しぶりに家内と映画を観ました。
クリント・イーストウッドが監督・主演の「運び屋」です。
軽い気持ちで選んだので席の予約もせずに出かけて映画館には20分くらい前に到着しました。予想に反してこの時点で残席はかなり少なくなっていて2人で並んで座ることができませんでした。
時間になったので映写室に入ろうとすると結構な行列ができていました。
珍しいなと思ったのですが理由がわかりました。お爺ちゃんが多くて動作が緩慢なのです。実際観客の平均年齢はかなり高く40歳を越えていたと思います。
ユリの栽培をしていた朝鮮戦争の退役軍人が麻薬(コカイン!!)の運び屋(mule)をするという実話に基づいた映画です。映画でもNew York Timesの記事に触発されたとend roleで出てきます。
特にすごく期待をしていた訳ではなかったのですがこれが面白い。はじまると直ぐに画面に引きつけられて当然そうなるだろうというラストまで引っ張って行かれます。
クリント・イーストウッド自身がインタビューでこう語っています。
アール-主人公の名前-は私だけでなく、多くの私の世代の男たちを代表している。我々の世代の男たちは、人間の評価を、いかに仕事で成功したかで計りがちだ。でも、価値観は時代とともに変わっていく。いくら歳を取ってもそれに追いつかなければ。人は何かを学ぶのに、遅すぎることはないんだ。それは、ずいぶん前から私の映画のテーマになっている。「グラン・トリノ」もそうだった。頑固な差別主義者が、人生の終わりに変わるチャンスを得る。最後に彼はあれほど嫌っていたアジア人たちのために命を投げ出す。素晴らしい変身じゃないか。私は、人生は1本の映画のようなものだと思う。
という訳でお爺ちゃん方の映画なのです。
これも予想通り終わったあと家内に説教されました。子どもが二人いますが家内が育てました。この映画の主人公まったく省みなかったのです。
映画では いわゆるoldiesが何曲も掛かっていました。帰りの電車の中でApple Musicで探すとちゃんとlist ができていて聴くことができました。良い時代になりました。
でも実際この映画何にも起こりませんよ。想像通りに最後まで行くだけです。
ウェルビーイング
Wiredという雑誌があります。日本版VOL.32のトピックが”digital well-being“です。
想像の通りにwell-beingはWHO憲章の”Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”(健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます)に由来します。
「健康」とか「幸福」だと手垢にまみれているのでwell-being。
Kindle 版もあるしまあ読んでみることをお薦めしますがその前に編集長の巻頭言とドミニク・チェン氏のエッセイ「「わたし」のウェルビーイングから、「わたしたち」のウェルビーイングへ」を読んでください。
ネットで読める文章なので引用してみます。
このなかで提示されているウェルビーイング研究領域としての挑戦のひとつに、地域文化によって主観的ウェルビーイングの因子が異なるという事実のよりいっそうの探究が挙げられている。なかでも面白いのが、日本、韓国、中国、そしてロシアとノルウェーを含めた24カ国においては、幸福の概念が「運」と結びついているという指摘だ。
「幸福」という言葉に「福」という漢字が入っていることも挙げて、このタイプの幸福はluck-based happiness(運勢型幸福)と命名されている。
luck-based happiness !!
ピエール・ルジャンドルやイヴァン・イリッチといった西洋の歴史家や哲学者が論じたように、「病気を治す」という思想は、問題を解決するためにシステムを制御するというテクノサイエンス主義と同根である。そこから、個々人の固有性を度外視した客観的な方法が適用される。
このような方法論が現代に通用しなくなっています。
石川善樹氏の
a Syllogism of WELL-BEING アイデア/ナレッジ/ノウハウ 「よい人生とは何か?」をめぐる三段論法
も必読と思いますがこれはネットでは読ませてもらえません。
こんな話もあります
デジタル機器の利用は、ウェルビーイングにとって本当に「悪」なのか?https://t.co/xpddVhUVWi
— WIRED.jp (@wired_jp)
physician-scientist
Wiredはオリジナルは英語の雑誌です。
こんな記事がありました。
WHY YOUR DOCTOR SHOULD ALSO BE A SCIENTIST
医者でかつ研究者をphysician-scientistと呼ぶ場合があります。MD/PhDなんていう云い方もあります。
このような人たちがなぜ必要なのかを説いたエッセイです。
Physician-scientists bridge the gap between scientific theory and practical medicine. We need to boost their ranks.
が〆の段落です。
日本の医学部は6年かけて卒業します。こんな長い間一体何やっているんだとか国家試験に受かるだけなら1年か2年で十分じゃないかという声もあります。
ぼくの研究面での恩師の先生は医者としての研修中に”Letter: Two cases of T-cell chronic lymphocytic leukemia in Japan.”という症例報告をNew England Journal of Medicineに発表しました。これは後に”Adult T-cell leukemia: clinical and hematologic features of 16 cases”としてまとめられました。
つまりATLの世界初の症例報告を行ったのです。
皆さんもご存じの通りATL研究はその後大きな研究領域を形成するようになりました。世界に先駆けてウイスルも日本人が同定に成功しました。
AIDSのウイスルHIVとかその治療法が開発されたのもATL研究という資産があったからこそだと思っています。江戸末期から明治なってはじまった日本の西洋医学研究の一大金字塔です。
このような事業はphysician-scientistがいたからこそ達成できた事だと思います。
ぼくは医学部での6年に加えて麻酔科臨床をまる4年やってから基礎研究に入りました。
特にこの10年間がムダだったとは思っていないしむしろいろんな意味で必要だったのではないかと思っています。
そして今でも手術室で麻酔をしながら基礎研究をしていますが15年くらい前から10年くらいは本当にしんどかったですphysicalに。時間外2000時間よりハードな生活を送っていました。
最新の測定器機を使ったりする実験は採用していません。conventionalなmethodでイケるところまで行くという方法論です。
なのでいわゆるhigh impact factorの雑誌は初めから狙っていません。 ぼくのpublication listを調べると被引用回数で500回を越えているJBCの論文があります。これはぼくの関わったNature Geneticsの論文の被引用回数より多いです。理由は簡単です。これらが良い論文だからです。
今後もこういう方向性でいけるところまでいこうと思っています。
ぼくもいろんな場所でセミナーというか講演を行う場合があります。最後のスライドは研究成果の力点を基礎部門に置くときは
で
臨床部門に置くときは
としています。ぼくは医者なのだということを主張しているつもりです。
このエッセイには日本語訳があります。
「医学の発展には、臨床と研究をつなぐ「フィジシャン・サイエンティスト」の養成が不可欠だ」
です。
一昨日、昨日から一転して春の陽気です。
何時に家を出るとロス時間なく職場にたどり着けるかを検討しました。私鉄各社が時刻表を微妙に変えるので定期的な検討が必要になってきます。
昨日30分遅く出てみたら結局30遅く着くだけだったし阪急電車で座れないかもという局面だったのでこれはボツ。今日15分遅く出てみたらなんといつもの京阪特急に淀屋橋に乗ることができました。つまりぼくは今までムダに15分早く家を出ていたのですね。
朝イヤなニュースをみて心がすさんでいたのですが論文がアクセプトされたのを11時頃知ってげんきになりました。
「ゆるく考える」
東浩紀さんの「ゆるく考える」を読みました。日本経済新聞、雑誌文學界その他に発表した比較的に短い文章を集めて一冊にしたのです。
日経のものは2018年に夕刊でコラム的(プロムナード 金曜日)に発表されたのもの、文學界のものは2008–2010年に掲載されたものでそれに2010–2018 年にわたっていろんなメディアに散発的に発表されたものの集合体です。タイトルに「ゆるく」とあるように東さんの他の著作と比較して大分-「おおいた」ではなく「だいぶ」ーゆるいです。
2018年の連載なので日経電子版を購読している人は第一章のに入っているプロムナードのエッセイは全部読むことができます。
には特に興味を引かれました。
ぼくには2人子どもがいますが育児は家内がほとんどしてしまったのでこういう事を今まで実感を持って考えた事がなったのです。その代わり大学院生は今まで20人近く看てきたので「大学院生指導の反復可能性」というエッセイは書けるかも知れません(「育児の反復可能性」)。
第二章は「なんとなく、考える」というタイトルの連載評論で構成されています。東さんが著作で扱ってきた主題を2010年風に概説しているような内容でこれは東さんの体系への良いイントロダクションになっていると思いました。
そしていままでの思索の集大成というべき
へと流れ込んでいきます。
は文庫本、新書になっています。
何か一冊とすれば「ゲンロン0 観光客の哲学」をお薦めします。読み終えれば感動すら覚えると思います。
朝日新聞の企画「平成の30冊」では4位に入っています。
このところ通勤電車の中でもmacにかじりついて某仕事に掛かっていました。
今週末で締め切りなのでそれをクリアしてしまえば… という所だったのですが無事作業が終わりました。
原著論文の執筆という「通常業務」に戻ります。
今日はゆっくり寝れます。
論文が出版されました
大学院生の角さんの論文が出版されました https://t.co/5ITkUIP1lA
— 侵襲反応制御部門@KMU (@hss_kmu)
propofolの細胞毒性はHIF-1の活性化によってレスキューされるという実験事実を培養細胞を用いた実験系で示した論文です。
稟議書が回り始めたので勤務先からのプレスリリースは月曜日には出ると思います。
【関西医大プレスリリース】「プロポフォール」副作用の機序解明,副作用が生じるメカニズムと、そのリスク要因などを発見 詳細は https://t.co/PlLD7IWzXg #KMU #関西医科大学 #関西医大 #プロポフォール
— kmuinfo (@kmu1928)
【注目プレスリリース】「プロポフォール」副作用の機序解明 副作用が生じるメカニズムと、そのリスク要因などを発見 / 関西医科大学 https://t.co/TYLuZU5pcl
— 日本の研究.comニュース (@rjp_news)
ぼくのつもりではこの論文より早く世にでるはずだったのですがぼくの「作戦間違え」で遅れました。 Scientific Reportsに出しなおしてからは安産で前回に続き追加実験無しで悠々と凌ぎました。
とにかく無事世に出て良かったです。
共著者からも
院生さんはもう自分で結構な解析ができるようになりました。
“自分は、Figure6のGene set enrichment analysisを中心にデータ解析で貢献。あと、配列データの登録も” 共同研究論文がScientific Reportsに掲載 / “ぼうのブログ” https://t.co/cWgfg4mYCg
— 研究もする生命科学DB流通業者 (@bonohu)
今日N本師匠の見廻りを受けてマウンティングうけた。
— Hirota, K. (@bodyhacker)
N本師匠が西野七瀬さんが所属するアイドルグループの集会できる事になったとのマウンティグを受けました。
「どもる体」
医学書院から「看護教育」という雑誌が出ています。職場から電子版が読めるので思いつくとまとめ読みをします。 (看護研究というのもあってやはり毎号読んでいます。https://webview.isho.jp/journal/toc/00228370/51/3
マニュアル化して理論を追求することを放棄していように見える麻酔関連の雑誌に比較して理論と実践のバランスがよく結構楽しめます。
「看護教育」で2017年4月から2018年3月まで伊藤 亜紗さんの「連載 リズムとからだ」という連載がありました。
「吃り」「吃音」を題材にからだのリズムを考察した研究結果です。 この連載が本になって医学書院から出版されました。
【新刊】『≪シリーズ ケアをひらく≫どもる体』 吃音とは、言葉が肉体に拒否されている状態。しかし、なぜ歌っているときにはどもらないのか? 徹底した観察とインタビューで、吃音という「謎」に迫った画期的身体論! 詳細はこちら→https://t.co/xaG9JwPAdd #医学書院 pic.twitter.com/4bFSE6sn2s
— 医学書院 販売・PR部 (@igs_pr)
「どもる体」です。
ぼくは中学生くらいの時には「吃音」と「チック」があったのですがそのうちに克服されました。