何にもしていません

On 2014/11/2 日曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

日当直です。

金曜日はちょっとエライ目に遭ったのですが、今日は今まで平穏で意味のあることは一切していません。



Nature誌に”The Top 100 Papers“という記事が掲載されていてちょっとした話題になっています。

科学論文の引用索引であるSCI(Science Citation Index)の初版が発行されてから50年になる。SCIは、Eugene Garfieldが設立した科学情報研究所(ISI)によって1964年5月に印刷版の提供が開始され、研究者たちのデータ検索に非常に大きな変化をもたらした。その後の電子版提供の影響は特に著しく、研究論文の重要度評価のためのモデルの1つとなった。この50周年を記念して、Nature はSCIを現在所有するトムソン・ロイター社に、オンライン学術データベース「Web of Science」にある被引用数が多い論文のオールタイムベスト100のリストアップを依頼した。これはなかなか面白い試みであることが明らかになり、また非常に意外な結果も示された。

という内容となっています。

「また非常に意外な結果も示された」という処が今回の記事の肝となっているのです。

例えば”The discovery of high-temperature superconductors, the determination of DNA’s double-helix structure, the first observations that the expansion of the Universe is accelerating”などのノーベル賞を受賞した仕事についての論文はTop100のリストには入っていません。 その代わりに実験手法やデータの解析方法の論文が軒並み上位を占めるという結果なったのです。 例えば10位までをリストアップしてみると以下の様な結果となっています。

Rank: 1 Citations: 305,148 Protein measurement with the folin phenol reagent. Lowry, O. H., Rosebrough, N. J., Farr, A. L. & Randall, R. J. J. Biol. Chem. 193, 265–275 (1951).

Rank: 2 Citations: 213,005 Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Laemmli, U. K. Nature 227, 680–685 (1970).

Rank: 3 Citations: 155,530 A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Bradford, M. M. Anal. Biochem. 72, 248–254 (1976).

Rank: 4 Citations: 65,335 DNA sequencing with chain-terminating inhibitors. Sanger, F., Nicklen, S. & Couslon, A. R. Proc. Natl Acad. Sci. USA 74, 5463–5467 (1977).

Rank: 5 Citations: 60,397 Single-step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction. Chomczynski, P. & Sacchi, N. Anal. Biochem. 162, 156–159 (1987).

Rank: 6 Citations: 53,349 Electrophoretic transfer of proteins from polyacrylamide gels to nitrocellulose sheets: procedure and some applications. Towbin, H., Staehelin, T. & Gordon, J.

Rank: 7 Citations: 46,702 Development of the Colle-Salvetti correlation-energy formula into a functional of the electron density. Lee, C., Yang, W. & Parr, R. G. Phys. Rev. B 37, 785–789 (1988).

Rank: 8 Citations: 46,145 Density-functional thermochemistry. III. The role of exact exchange. Becke, A. D. J. Chem. Phys. 98, 5648–5652 (1993).

Rank: 9 Citations: 45,131 A simple method for the isolation and purification of total lipides from animal tissues. Folch, J., Lees, M. & Stanley, G. H. S. J. Biol. Chem. 226, 497–509 (1957).

Rank: 10 Citations: 40,289 Clustal W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice. Thompson, J. D., Higgins, D. G. & Gibson, T. J Nucleic Acids Res. 22, 4673–4680 (1994).

一位は誰でも知っている蛋白定量法の一つであるLowry法の報告です。 ちなみにMullisによるPCR法の報告は63位です。

Rank: 63 Citations: 15,160 Primer-directed enzymatic amplification of DNA with a thermostable DNA polymerase. Saiki, R. K. et al. Science 239, 487–491 (1988).

100位で被引用回数は12,119となるようですし10,000回以上は148篇、1,000回以上の被引用回数の論文は14,499篇に留まるようです。 Google Scholarの統計を用いた結果も参照できて似たような傾向です。 Google Scholarだと

Citations: 223,131 Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Laemmli, U. K. Nature 227, 680–685 (1970).

Citations: 192,710 Protein measurement with the folin phenol reagent. Lowry, O. H., Rosebrough, N. J., Farr, A. L. & Randall, R. J. J. Biol. Chem. 193, 265–275 (1951).

Citations: 190,309 A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Bradford, M. M. Anal. Biochem. 72, 248–254 (1976).

一位から三位はこのような結果となっています。

ちなみにTakahashi & YamanakaのiPS細胞の報告 Induction of Pluripotent Stem Cells from Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures by Defined Factors Volume 126, Issue 4, 25 August 2006, Pages 663–676 は10821回(Google Scholar)

今年のノーベル賞論文である The hippocampus as a spatial map. Preliminary evidence from unit activity in the freely-moving rat Brain Research Volume 34, Issue 1, 12 November 1971, Pages 171–175 は2662回(Google Scholar)の被引用回数です。

ノーベル賞を受賞すると被引用されやすくなるでしょうから単純には比較できませんが…

これをどのように解釈するかについてはいろんな意見があると思います。 少なくとも一線を画したと後に考えられる論文は10年もすれば1000回は引用されるだろうからそうでない論文はそう考えられていないとかもというくらいはいえるのかも知れません。

こんなtweetもありました。



すごいです。 学者冥利に尽きますね。

ぼくも1000回はなんとか目指したいのですが…


スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?: アスリートの科学」 を読みました。

「世界記録はどこまで伸びるのか」 とか 「「黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎」

といったような人間の運動能力を論じたものです。 どこまでが遺伝子で決まっていてどこからがトレーニングなどで獲得したものかということが議論になるし最近ではエピジェネティックスな影響があるのかないのかなども焦点になると思います。

第13章はいわゆる「高地順応」についての章「世界で最も思いがけない(高地にある)才能のふるまい」です。 最近Genes & Developmentによい総説が出ていました。figure4面白いですけど怪しい感じもしますというか怪しいだろう。

Human high-altitude adaptation: forward genetics meets the HIF pathway Abigail W. Bigham and Frank S. Lee Genes Dev. 2014 28: 2189-2204


「数独」を数学する-世界中を魅了するパズルの奥深い世界

これめちゃくちゃ面白いです。

「数独」を数学する-世界中を魅了するパズルの奥深い世界-

さて明日の朝までこれからどうしよう。



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今日は朝から日当直です。24時間病院内にこもります。

6時頃登院して手術後のインタビューの準備をして一廻したところで緊急手術がさっきまでありました。二つめは故あって手術室の温度を高く保ったままでしたのでこっちも消耗しました。一緒に当直をしている先生方がしっかりしていて精神的にはかなり楽でした。

しかしすごい雨です。この雨でiPhoneが濡れて風前の灯となりかけている院生がいます。早く”四様”にしろという啓示と受け取るのが吉でしょう。
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Scienceから高地順応の遺伝学についての論文が二報出ていました。

Genetic Evidence for High-Altitude Adaptation in Tibet

Science 2 July 2010: Vol. 329. no. 5987, pp. 72 – 75

Sequencing of 50 Human Exomes Reveals Adaptation to High Altitude 

Science 2 July 2010: Vol. 329. no. 5987, pp. 75 – 78

HIF pathwayがここでも重要な役割を果たしているということが重要なメッセージなんでしょうね。

以前に紹介したことがある

Natural selection on EPAS1 (HIF2α) associated with low hemoglobin concentration in Tibetan highlanders

Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107, 11459 (2010).

も合わせて読みたい論文です。こちらの方が示唆的だと思います。

これらの論文は別の読み方もできます。

チベットで暮らす高地順応が出来ている人たちはわずか3000年の間にすごいスピードで30以上の遺伝子への変異を蓄積してきたわけです。すごいスピードです。人類学的にはこちらの意味合いのほうが重要かもしれません。

高地順順応それも世代を超えたセレクションは単純ではないですね。まただからといって高山病が直るとか予防できるとかには繋がらんと思います。

『七人の侍』と現代――黒澤明 再考

を読みました。

タイトル通りの内容です。

冒頭晩年の黒澤明への辛辣な批判が書き連ねられすこしハラハラしましたが、内容には感服しました。

良い本です。昨今の岩波新書の中でも出色の出来だと思います。

冒頭を読んで最近読んだエッセイを思い出しました。

筑摩書房のPR雑誌「ちくま」に掲載された斎藤美奈子氏のエッセイ、

[世の中ラボ]4・「女性を描く」と強姦小説+妊娠小説になるのはなぜ?

です。

大江健三郎と村上春樹と最新作が俎上にあがり、めった切りにされるのです。片やノーベル賞作家、もう一人は現在もっともノーベル賞に近いと言われるいまや日本を代表する二人に作家の小説における「女性」の描き方がなっていないと斉藤氏は主張するのですが、確かにそうだねとあっさり同意してしまうほどの迫力。たしかに青豆が天吾とセックスしていないのに天吾の子を身ごもるなどありえないのです。

それはともかく、大江健三郎は高校生から彼がノーベル賞を受賞することまでぼくにとってはもっとも尊敬する作家でした。ー村上春樹氏はぼくが高校一年生の時分には作家としてデビューしていませんでしたー
高校生一年の時偶然に彼の短編小説「個人的な体験」を読まなければぼくの人生は全く別のものになっていたと断言できます。この小説を読んで、このまま田舎でぶらぶらしている訳にはいかないと漠然と考え勉強を真剣にするようになり結果として今の時分につながるわけです。

ー「同時代ゲーム
」や「万延元年のフットボ-ル」は今読み返しても良い小説と思いますが実は「個人的な体験」は今読み返すとどこに心を動かされたのかよく思い出せないのです。しかし、とにかく、これにより実存主義に目覚めたぼくはサルトルの著作を読むようになり「実存主義者」になったのです。今でもぼくは「実存主義」を信奉しています。ー
以来大江健三郎の小説・評論・エッセイは古本屋で買い求めたりして読破して北野ですが、ノーベル賞の受賞の前後、具体的には「治療塔惑星」位からまったくついていけなくなり「燃えあがる緑の木」の第一部「燃えあがる緑の木〈第1部〉「救い主」が殴られるまで」にいたっては通読を放棄してしまいました。以後彼の新作は読んでいません。

というようなことを思い出しました。

『七人の侍』と現代――黒澤明 再考 (岩波新書)

今日は論文の作業はもうしません。疲れた。


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