週に二往復強制的にある程度長時間列車に閉じ込められます。

以前はMacbook Airで仕事をしていたのですが,揺れるので列車酔いになってしまい効率が悪いのでキッパリと止めてしました。 代わりに紙に印刷されている文字を読むか寝るかどちらかとしました。 本を読むことが選ぶことが多くなっています。

ぼくの速度だと片道で新書一冊ですね。この分量が絶妙です。 新書は机に座って取り組むより列車中で読むと意外な発見がありよいと思います。 金銭的なコストは1時間300円という事でしょうか。新刊書を選ばなけ ればもっとコストは下がると思います。

と云うわけで最近読んだ何冊かを紹介してみます。

今回は星海社の新書から三冊紹介します。

まず

武器としての交渉思考 (星海社新書)

以前に出ていた「武器としての決断思考 (星海社新書)」-「ブキケツ」と略すのだそうです-の続編です。

ぼくの病院での現在の仕事の70%は交渉です。これをどううまくこなすかがすごく大きな課題です。

現在また将来「交渉」をする必要のある全ての人にとってすごく役に立つ新書です。瀧本先生も「そう,2人以上の人間が集まったら,必ず交渉の必要が出てくるわけです」とおっしゃっておられます。

時間のないひとは,『ガイダンス』と『「バトナ」は最強の武器』『5時限目 「非合理的な人間」とどう向き合うか?』を読めばよいと思います。

交渉について,ぼく自身念頭に置いていることがあります。

権限のない人と交渉しない,という事です。

権限のない人が「交渉相手」として出てきたときは権限を持っている人に交渉を替わってもらう必要があります。権限のない人といくら話しても合意事項が後にひっくり返る,交渉に手間取るなど良いことは一つもありません。

皆さんもこの「ブキコウ」を読んで交渉思考を身につけましょう。

二冊目は

じじいリテラシー (星海社新書)

オヤジ転がしの指南書というと本書の精神をゆがめることになるのかもしれませんが要約するとそうなります。 この程度のリテラシーは確かに若い人に身につけてもらいたいと思います。 ぼくらはあんたらとは異なる世代に属しているのですよ。どちらかが「合わせる」必要があるとすればそれへはあんたらの方なんだよ,ということです。

最後は,

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

ぼくは自分がヘタなので文章術は出版されれば眼を通すということを続けています。

本書もこの値段の価値は十分にあっておつりがくるほどだと感じました。 「書くことをやめて“翻訳”」するのだという言い方は実際に文章を書く時にはマントラのように唱える価値のある素晴らしい言葉だと思います。

自分の考えた事をそのまま吐き出すのでなく,他人に解る用に翻訳して出力するというほどの意味です。

ここで試し読みができます。「参照

星海社の「武器としての教養」シリーズの新書には外れはないです。

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雑誌Natureに”Retraction record rocs community“というタイトルのエッセーが掲載されています。

“Anasesthesiology tries to move on after fraud investigation”というサブタイトル付きです。

「麻酔科医」が行った数百という研究発表にmisconductがあったという事実(参照)が明らかになっているのですがそれを受けてのエッセイです。

Most anaesthesiologists insist that there is no evidence that their field is more prone to fraud than any other. But Carlisle says that anaesthesiology does offer many opportunities to generate large sets of clinical data very quickly. Millions of anaesthetic procedures are performed every year during surgeries, and patient outcomes are immediate and easy to measure. There are “frequent opportunities for anaesthetists to conduct clinical studies very quickly, potentially by themselves, without overview from other people”, he says. “This might contribute to greater opportunities for them to succumb to the temptation of fraud.”

Millions of anaesthetic procedures are performed every year during surgeries, and patient outcomes are immediate and easy to measure.

確かにそうなのですが,自分の患者のoutcomesを意識していない麻酔科医も結構います。麻酔をしたらそれでお終いって感じで。

frequent opportunities for anaesthetists to conduct clinical studies very quickly, potentially by themselves, without overview from other people

これも事実だと思います。こっそり患者さんから採血してデータを収集してもなかなか他のスタッフには気づかれません。

日本麻酔科学会ではとりあえず機関誌への投稿論分について以下の様な方針で臨むようです。


【事前登録義務化】

臨床研究に関して、2009年4月1日施行の厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」には、公開されているデータベース(国立大学附属病院長会議、財団法人日本医薬情報センター及び社団法人日本医師会が設置したものに限る)に臨床研究計画を登録しなければならないとされており、JA誌においても臨床研究の事前登録義務化を明示する事に致しました。このため、下記のように改訂致します。

  • 2013年4月以降の投稿論文から事前登録を完全義務化とします。

  • 2013年4月以降の査読に関して、2009年4月以前つまり厚生労働省の義務化以前の研究論文に関しては、倫理員会の承認番号、研究期間を記載してあるときのみ査読を開始します。ただし、査読者又はJA編集部から依頼があれば、倫理理員会の承認日、そのコピーなどの提出が求められる場合がありますのでご注意ください。

  • 過去のデータを基にした後ろ向き観察研究は事前登録の必要はありませんが、論文中に「倫理委員会の承認を得た」あるいは、「倫理委員会から、倫理委員会の審議は不要との通知を得た」との記載を必要としますので、この点もご注意ください。


これは麻酔科学会の学術集会にも適応される方針なのでしょうか? そうだとすれば本物ですね。

上記のエッセイにはeditorialがついています。

Through the gaps

Natureでeditorialがつくほどの大事件なのでしょうね。確かにそうとも思えます。

調査報告書によればFujii氏はこれらの研究成果をもって学会賞に5回応募したとのことですが受賞には至らなかったとのことです。(参照)

Fujii氏の発表した論文は引用回数などから判断すれば相当のインパクトを少なくとも麻酔科学の世界に与えたと考えられます。日本の麻酔科学教室で客観的に彼より「業績」のある教授は少ないかもしれません。にもかかわらず学会賞の受賞には至らなかったというのは審査がいい加減だったか審査員が審査員が不正に気付いていてそれ故に受賞に至らなかったかのどちらかだ思いますがホントの所はどうなんでしょうね。

またいまだにFujii氏の論文が大量にpubmedに収録されていて各雑誌のwebサイトから閲覧可能な状況となっています。


すこし前にAKB48の1830mを聞いてから「ユングやフロイトの場合」と「アボガドじゃね〜し」という曲が妙に頭の中で「鳴って」気持ちが悪いです。ちょっと困っています。

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日本の麻酔科医が発表した数多くの論文についてその正当性が疑問視されて当該麻酔科医が所属する日本麻酔科学会が5月に調査委員会を立ち上げて一連の問題について調査を行いその結果を先頃発表した(参照)。不正論文の「世界記録の樹立」ということで多くの一般報道もなされた。ぼくも日本の麻酔科医の一人なので自分のメモも兼ねて少し書いてみる。

報告書に依ればこの麻酔科医の発表した論文のほとんどに不正が認められたと結論している。

5月に麻酔科学会が調査委員会を立ち上げたと聞いたときまず考えた事はこの委員会の調査権限のことだった。

当該麻酔医は日本に住んでいるので学会が調査委員会を立ち上げて聞き取り調査などを行うとしてもそれは可能かもしれないが,本人が学会による調査を拒んだ場合はどうなるのだろうかとナイーブに考えてた。
結局本人と関係者の多くが麻酔科学会の調査に応じたようだ。
また本来この調査は該当麻酔科医が所属した研究機関や病院が行うものだと思った。実際4/6付けの23の雑誌の編集長による共同声明の宛先は各大学の医学部長,病院の院長,麻酔科の主任教授となっていた。学会の調査が,大学,病院から委託を受けての調査なのか公益法人たる責任上行った調査なのか不明だった。この部分についてもっと丁寧な説明をすべきだと思った。

麻酔科学会は以下の再発防止策を提案しているがこれが有効かどうかはわからない。

  • 国内外ジャーナルの査読機能を高めることに資するべく,本件の全容を日本語および英
    語で公表する.
  • 医学研究施行と報告上の倫理規定について学術集会,セミナー等を毎年開催し,周知す
    る.
  • 研究施設の責任者,筆頭著者,共著者の医学研究施行の責務について改めてガイドライ
    ン等でまとめ,周知する.
  • 疑わしい論文に関して,情報提供を受けつけ,調査する体制を学会内で作ることを検討
    する.

いろんな「研究」がある。学会などで質問しても答えをはぐらかされたりするとその研究の当否については自分で追試を行う以外判断の基準がない。しかし,自分で追試をして同じ結果が得られなくともその研究で提示された結果や結論が間違っているとは言えない。ぼくが再現できなかったというだけである。
査読でもその度にその研究者の論文を10編も20編も読み込んで査読をするわけにはいかないのだから論文の審査の段階では詳細なチェックは無理だ。
手口も,馬脚を現さないような巧妙な不正もありうる。逆に,画像を使い廻すなどの単純な場合はほんとうにタダの取り違えではないかと思うほどだ。

専ら研究者の倫理に訴える基礎研究に較べて,臨床研究には厚生労働省から研究者が遵守すべき倫理指針がある意味明確に示されている。(参照:「臨床研究に関する倫理指針」)
つまり患者さんにちゃんと説明して同意してもらう必要があるとか試料の取り扱いには気をつけてくださいという内容である。
今回の一連の論文の多くは臨床研究であったしきっかけはいくつかの論文は研究施設の倫理委員会から適切な了承を得ていなかったという点で論文が雑誌から撤回されたことであった。

一方先に報道された慶応大学の呼吸器外科での医療倫理違反行為事例(参照:本学医学部・病院で発生した医療倫理違反行為についてのお詫びならびに対応と再発防止策に関するご報告)では,患者の同意無く手術中に骨髄から髄液を採取したという事実が大学の調査によって認定されこれが倫理違反行為とされたようである。
関与した慶応大学の教員が二名おそらく引責辞任をしている-もしかしたらタダの一身上の理由の辞任かもしれませんが-。
倫理委員会の承諾を得る前に患者から試料を無断で採取すれば後に倫理委員会の承諾を後付で得ようとも「有罪」となる。明快である。

この事件は海外でも報道されている。
Report: Japanese Anesthesiologist Fabricated Data in 172 Studies“と題された文章は経緯や背景についてうまくまとまっていると思った。
しかしすごい事が書いてある。

Dr. Steen has been considering a formal study of whether anesthesiology is more vulnerable to fraudulent research, but has not yet launched such an analysis. One possibility, he said, is that anesthesiologists who conduct randomized controlled trials may have less oversight than other specialists, such as cardiologists or neurologists. If so, those who want to fabricate their results would have an easier time doing so, he said.

(太字はぼく)

New record for faking data set by Japanese researcher“においても

Assuming all of the fraudulent papers get retracted, Fujii will set a new record for the most retractions ever, more than doubling his closest competitor. At Retraction Watch, where they follow these issues closely, they’re pondering whether anesthesia itself has a problem . Of over 2,000 papers that have been retracted over the last four decades, a full 13 percent have involved anesthesiologists.

(太字はぼく)

などと言われていてまるで「麻酔科医」は「バカ」扱いであるがそう言われるとそう思えてくるから不思議だ。

麻酔科学会は今回の調査を受けて麻酔科医個人への何らかの対応を行うようである。
もっとも程度の高い処分は「除名」である。学会の認定では共著者の責任もゼロではない。これも含めてどうなるのでしょうか?

ある新聞報道には

「昇進して教授を目指していたのではないか」。29日の会見で、調査特別委員長の澄川耕二・長崎大教授は捏造の動機をこう分析した。大学に勤める医師は教育・臨床に加えて研究も重要な業務で、論文はその結晶だ。
ある麻酔科医は「教授選では多くの人が、その人物より論文が載った雑誌のインパクトファクター(IF、雑誌の影響力を示す数値)を基準にする」と語る。
IFは雑誌によって1未満~30以上とばらつきがあるが、藤井医師が論文を投稿していた専門誌のIFは5~3と「それなりに一流」(澄川教授)だった。だが200本以上の論文を量産しながら、藤井医師が教授になることはなかった。
「一流誌に載れば周囲からほめられる。(藤井医師にとって論文投稿は)麻薬のようなものだったのでは」と語る関係者もいる。

とある。

このあたりからはすごくいやらしい印象を受けた。調査には相当の労力が掛かったと思うが,このような感想みたいなものが出てくると気持ちが悪い。
日本の麻酔科の「教授」ってこんなこといえるほどエライ先生ばっかりなんでしょうか。研究を行っている人が皆「教授を目指している」って本当なの? それでは麻酔科学会は全ての大学の麻酔科関連教授の全ての研究についてその正当性と有用性の証明を当人に行わせてみたらどうだろうか?
「教授選では多くの人が、その人物より論文が載った雑誌のインパクトファクター(IF、雑誌の影響力を示す数値)を基準にする」ってウソだよね。正当性は本人してもらうとして有用性は今の時代大学で契約している値段の高いサービスを用いなくともgoogleで論文の引用回数などを調べることが簡単にできるから麻酔科学ではいかに「インパクトファクター」が反映されていないかが解るのでは。

 ,というようなことを考えてみたくなる。


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このところするべき事が溜まってきていてブログエントリーを書く精神的な余裕がありませんでした。書き始めれば15-20分なのですが書き始める気にならないというよりこんな事をしていて良いのかという罪悪感に駆られてはばかられるのです。
というわけで久々のエントリーです。

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まず御大ブログのエントリー「「選択と集中」はあかん!」からです。
御大に「自分は野武士だ」といわれると「ぼくはベトコン」という事になってしまうのですがさすがにいいこと書いておられます。
少し引用します。

いまの日本、広大な生命科学のフィールドでいったいいくつかの野武士研究室が棲息しているのでしょう。
年間5億円のお金を、20の研究室で分配するとして、各研究室は平均、2500万円をもらいます。その結果残りの200の研究室は競争審査の結果でゼロになります。ゼロです。大半の研究室は死になさいと言われるようなものです。これがしばらく続けば、実質消える運命にあるのかもしれません。なんども言いますように、ゼロ査定ではね。野武士でも200万くらいはないと、生きていけないでしょう。ベトコンでも年間50万円くらいの研究費がないと。でもこの5億のお金を220の研究室でわければ、みんな野武士くらいの研究室にはなれるのです。ベトコンならゆうゆうです。ただし、給料分は自分でなんとかしないとね。でも大学なんかは本来教育で給料をもらっているのですから、なんとかなるはずなのです。

太字はぼくがつけました。

ぼくもそう思います。大学院生を何人か抱えて研究費ゼロでは立ちゆきません。今までそこそこ生き残ってきた研究者がいきなり兵糧攻めにされるとホント困ってしまいます。マラソンをして研究費を稼ぐことのできるほどの人はよいのですがぼくなど走る暇さえありません。
ホント困ります。
昨日も夜は,無影灯の見積もりをとって来年度の部署の活動目標の作業をしていました。イヤになってしまいます。

でもこういう純然たる雑用も極めるとノウハウとして蓄積してきます。「おかげで」大抵のことは経験させていただきました。
やっていないのは,手術室の設計と入学試験の問題作りくらいではないかと。
将来この経験が生きる局面が出るのかどうかはよく解りません。
若い人もこういう苦労をした方が良いと思います。来年度はこういう仕事は放り投げてやろうと思っています。

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最近,科学領域での不正が話題になることが多いと感じています。
例えば,「これ」とか「これ」。

前者は以前から知っていましたが後者は麻酔科領域の話ですごく驚きました。

すこし調べるだけですでに”Anesthesia & Analgesia”と”Anaesthesia”では編集長の見解も表明されています。(参照1参照2
A&Aは事実のみを述べていて”倫理委員会”の審査無しに行った研究を倫理委員会の認可があるように記載したという理由でretractされと述べているだけです。

しかし”Anaesthesia”ではあたかもデータの処理法に根本的な不正が存在することを示唆する内容になっています。
とくにAnaesthesiaは焦点の研究者の論文のmeta-analysisまで掲載されています。つまり如何に統計学的にあり得ない論文であるかを確率論に則って論証したという論文です。(参照3

結論の部分を引用します。

In conclusion, I have shown that the distributions of continuous and categorical variables reported in Fujii’s papers, both human and animal, are extremely unlikely to have arisen by chance and if so, in many cases with likelihoods that are infinitesimally small. Whether the raw data from any of these studies can be analysed, and whether this might provide an innocent explanation of such results [4], is beyond the scope of this paper. Until such a time that these results can be explained, it is essential that all Fujii et al.’s data are excluded from meta- analyses or reviews of the relevant fields. The techniques explored in this paper offer a method of assessing data integrity in RCTs published by other authors, for instance within systematic reviews by the Cochrane Collaboration.

太字はぼくがつけました。

びっくりしました。

いったいこういう人たちは何の目的でこんな事をするのでしょうか。
不正はいろんなレベルで起こります。超一流紙を舞台にしても起こるし誰も見向きもしない雑誌を舞台にしても起こりますね。
研究費の獲得だけではないような気もします。
ひょっとすると,「俺っていけてる」ということを証明したくてするのでしょうか。

東邦大学はなぜが英語のページのみで経緯の調査結果を報告しています。この人はこれからどこに行くのでしょうか?

日本麻酔科学会はこの件について現時点では沈黙しています。


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