「聴診器賦」

On 2015/1/17 土曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

昨日は寝る直前に1時間ほど働いたほかは、平和な当直でした。

今日の午前は故あって麻酔をしたのですがいわゆる会心の麻酔でした。

ぼくなど特別な技もないので落ち穂拾い稼業を行っているだけの人間なのですがちょっと本気を出すと結構行けるかもと錯覚します。

 

集中治療領域での人工呼吸にはいろんなモードが存在しますがどれがどうなのかというようなことについての知識には直ぐに遅れを取ってしまいます。今日の医局の会ではその中の一つについてのミニレクチャーを聞きました。


聴診器賦

雑誌New Yorkerに面白い記事がありました。 ”Ode on a Stethoscope“というタイトルで、日本語にするのは簡単ではないのですが「聴診器賦」とでも訳せばいいのでしょうか。

医学雑誌は、研究結果や症例報告を掲載するのが主目的で発行されていますが多くの雑誌が「詩」を掲載しています。こういった”poem”についての考察を展開しています。

New Yorkerの記事は、呼吸器関連の専門誌に掲載されたAn Intern’s Recollection of a Night at the V.A., July 2004というタイトルのpoemの引用から始まります。

無料で公開されていますので全文を引用します。 つまりこんな”poem”です。

After the code,

a perfusing rhythm back and a new

chest tube to suction, my chief offered

some feedback on

my central line:

the needle was

in the wrong place,

just like me.

作者は当時麻酔科のレジデントだったそうです。

 

この記事、なかなか良い着眼点だと思いました。

POEMS synderomeという疾患単位があるのですがそれについてのPOEMもあるのだそうです。

 

麻酔科領域の専門誌であるAnesthesiologyにも”MIND to MIND”というシリーズタイトルで このようなコーナーがあります。

”Creative writing that explore the abstract side of our profession and our lives”なのだと謳っています。

例えばこんな感じです。

 

医者も職業の一つでその部分集合である麻酔科医にも専門誌で普通に議論されるような論点とは異なる職業人としての哀感があってそのようなものを表現してるのだと思います。一応毎回眼は通しています。

 

そういう眼で医学雑誌の”POEM”を眺めると面白いと思います。

医学雑誌以外にこういうコーナーってどれくらいあるのでしょうか。

 

雑誌の表紙

雑誌といえばその表紙が時々話題になります。Cellとその関連誌の表紙は毎号気合いが入っていて時々業界で話題になります。tumbrでなんどもreblogされる表紙もあります。 例えばこれ

表紙といえば日本分子生物学会の雑誌”Genes to Cells”の表紙も素晴らしいです。ギャラリーがあります。これだけなら完全に「世界制覇」を果たしています。【作品」はどれも甲乙つけがたい力作です。


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「正し」くありたくない人たち

On 2014/5/24 土曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

当直でした。

19時には終わり夕ご飯を食べてシャワーを浴びたらあり得ないくらいに眠くなったので寝たらいつものように5時に起きました。7時間も寝ていたことになります。連続してこんな長時間寝たのは数ヶ月ぶりです。

という訳で朝からいろんなことをしていたら今日どうしてもしなくてはいけないことが全て消化できてしまいました。

某案件は催促されるまでしないことにしてすごく解放された気持ちになっています。

これからも仕事はどんどん断ります。

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雑誌New Yorkerに心理学者のMARIA KONNIKOVAがエッセーを書いていました。

タイトルは「I DON’T WANT TO BE RIGHT」、副題は「Why Do People Persist in Believing Things That Just Aren’t True?」です。

麻疹(measles)、おたふくかぜ(mumps)、風疹(rubella)の予防のためにMMRワクチンを接種しますがこのワクチン接種が児に自閉症様の症状を引き起こす可能性を指摘した論文がLancet誌に掲載されたりしてーこの論文は後にretractされましたーMMRワクチンの接種に否定的な考えが流布したことがありました。 現在では、MMRワクチン接種と自閉症の発症の関係は医学的には否定されたとのコンセンサスがあるとの考え方が少なくとも医者の間では支配的です。 (参照1, 参照2)

これを背景にしたエッセーです。

最近Pediatrics誌に”Effective Messages in Vaccine Promotion: A Randomized Trial“という論文が掲載されました。

  1. 米国CDCによる、MMRワクチンと自閉症の関連には証拠がないという説明を要約したもの(CDCと明示されていない)
  2. 麻疹、おたふくかぜ、風疹に罹患した場合の疾患の症候や危険性について書かれた情報(CDCの文書と同等のもの)
  3. CDCが発行しているものを元にした、麻疹で死にかけた幼児のドラマティックな記述
  4. MMRに罹患した子供たちとその親を含んだ「疾患イメージ」
  5. 健康と無関係な文書を読んだ対照群(鳥の餌付けのコストと利点について)

の5パターンの文書を1759人の親に提示してワクチン接種を自分の子供に受けさせるかどうかの意志について文書提示の前後で調べたという論文で、結果は上記のどの文書も親の考えに影響を与えなかったというものです。

もっと興味深いのは、1の「正しい」記述を提示された群では、反ってワクチン接種への指向性が下がりまたワクチン接種と自閉症の関連あると信じやすくなったという結果です。backfire effectと言うのだそうです。

“I DON’T WANT TO BE RIGHT”という訳です。

 

低線量の放射線の健康に対する影響もこんな状況になっています。

「科学的」「医学的」に「正しい」とその人が思っている言説を「声高に」叫ぶことは反って間違った行動を人々に引き起こす可能性があります。

 

学会でもホントかうそかわからないようなちょっと怪しいことを熱心に何度も主張する人がいて反ってなんか胡散臭く感じる時があります。

 

文献を整理しておきます。 pubmedに収録された論文は適切な購読権がないと全文を読めない場合もあります。

“I DON’T WANT TO BE RIGHT” New Yorker

Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children. Lancet

How the case against the MMR vaccine was fixed. BMJ

Effective Messages in Vaccine Promotion: A Randomized Trial. Pediatrics

 

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雑誌ScienceのやっているサイトにAdam Ruben氏が”Experimental Error“というブログを書いています。

今回は Forgive Me, Scientists, for I Have Sinned

There are some things I need to confess. This isn’t easy to say, but after working as a real scientist with a Ph.D. for 6 years, I feel it’s finally time to come clean: Sometimes I don’t feel like a real scientist. Besides the fact that I do science every day, I don’t conform to the image—my image—of what a scientist is and how we should think and behave. Here’s what I mean:

いくつか引用してみます。

  • I don’t sit at home reading journals on the weekend.

  • I have skipped talks at scientific conferences for social purposes.

  • When someone describes research as “exciting,” I often don’t agree. Interesting, maybe, but it’s a big jump from interest to excitement.

  • Sometimes I see sunshine on the lawn outside the lab window and realize that I’d rather be outside in the sun.

  • I have never fabricated data or intentionally misled, but I have endeavored to present data more compellingly rather than more accurately.

  • I have pretended to know what I’m talking about.

  • When a visiting scientist gives a colloquium, more often than not I don’t understand what he or she is saying. This even happens sometimes with research I really should be familiar with.

  • I have performed research I didn’t think was important.

  • I allow the Internet to distract me.

  • I have read multiple Michael Crichton novels.

  • I have taught facts and techniques to students that I only myself learned the day before.

  • I find science difficult.

  • I am afraid that people will read this confession and angrily oust me from science, which I love.

科学者はこうあるべきだとかどうとか最近声高に言う人がいてちょっと良くない傾向だと思っています。

鬼塚ちひろさんの曲に”We can go”というのがあって

吐き気に潰れてゆく中で柔らかな手に触れる どうか完全なものたちがそこら中にあふれないように We can go to the place, where we are forgiven

とうたっているのですが、もう10数年来のぼくのテーマソングなんです。

Ruben氏はこんな本も出しています。

Surviving Your Stupid, Stupid Decision to Go to Grad School

Kindle版もあります。どうぞ。

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今日からNHKで「シャーロック」が始まります。 息子はもう全部観たのだそうでけどぼくは吹き替えでないと解らないので…

MARIA KONNIKOVAにはこんな著作があります。

シャーロック・ホームズの思考術

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Naure Medicineに”The mathematician versus the malignancyという記事が出ていました。

数理生物学が医学研究に果たす利点について解説したものです。こういう記事を見るー読むではないーとオボちゃんもうかうかしてられません。世界基準の美人研究者にならんとね。



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On 2014/2/9 日曜日, in anesthesia & critical care medicine, by bodyhacker

金曜の夜から土曜日にかけて関東は大雪だったそうです。

今回の大雪で全国レベルでは7人の死亡者がでて1000人以上の人がけがをしたということですがこの数字は今後増えていくかも知れません。(参照)

東京都心でも30cm程度の積雪を記録したということで雪国育ちのぼくからしてもほぼ一晩でこれだけ積もったら東京の人はひとたまりもないだろうなとは思います。

生まれ育った六日町-ぼくの家はそのなかの大巻でした)にいたぼくが時分(1970年から80年にかけて)は毎年3m越の積雪があって「もうこんな場所で生きていくのはいやだ」と思い関西に出てきたのです。 しかし、ぼくが京都に出てきて以来は積雪はどんどん減っていき1mに届かないというような年もあったようです。最近になり積雪量が増えてきて今年は現在1m程度のようです。(参照)

雪が全くない状態から一晩で一面の銀世界が眼の前に出現したら人間は感動しますよね。30cm積もれば真っ白になると思います。 京都でも丸太町通り付近で積雪30cmというのは経験した記憶はありません。

三島由紀夫の小説「春の雪」の「ある雪の日」の朝も春の雪と云うくらいですから節分より「後」のはずです。 赤穂浪士の討ち入りも新暦では1703年1月30日、桜田門外の変が1860年3月24日なのだそうで2・26事件は1936年2月26日でいずれも今回と同じ時期です。2・26事件のときは東京では積雪は35cmだったのだそうです。(参照1, 参照2) この時期に東京はまとまった雪に見舞われることが多いようです。

雑誌New Yorkerの今週号の表紙イラストは雪をテーマとしたPerfect Stormです。

140210 2014 p154

このイラストの作者はこんなこといっています。

> “Snow is inherently nostalgic. It encourages you to travel back and think about your life. I think it’s something about the way it blankets reality, sort of erasing the present one dead pixel at a time. And that makes room for the past,”

またこのページでは過去のNew Yorkerのカバーイラストのうち雪がテーマのものを15作品観ることができます。一番古いのは1944年!!

そうでなくとも子供達は人生初の大雪を楽しんだのではないでしょうか。 阪神地区では土曜日の未明から雪が雨・みぞれになって折角の雪が台無しになってしまいました。


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