阪神地区は穏やかな年末です。

昨日までは本を読んでいましたが今朝からはTV番組の録画をみていました。これも観ました。

カメラロール-1251

 

自分のフォトストリーム-626

 

過労死対策の一環で手帳に毎日どんな麻酔を何時までしたかなどの簡単なログを採っています。どんな映画を観ただとかどんなものを食べただとかの記録も書くので見直すと面白いです。

米国にいるときに始めた週間でしたがその時のノートは失ってしまいましたー正確には見つからないー。 日本に2002年に帰国してからはほぼ日手帳を使ってログを採っています。

 


 

2013年最後のエントリーは恒例の「ハイポキシア生物学の2013年を振り返って」です。(参照

 

メトリクス

pubmedで「HIF[TIAB] and 2013[DP]」と検索窓に入力する(as of 2013/12/31)と1487篇の論文があると返ってきます。「HIF[TIAB] and 2012[DP]」では1399篇です。

「hypoxia[TIAB] and 2013[DP]」では5317篇でhypoxia[TIAB] and 2012[DP]では5115篇です。「高度成長」が続いています。 ちなみにiPS[TIAB] and 2013[DP]では720篇でした。 日本では報道の回数は圧倒的に多いのですがまだまだ広がりはこれからなのでしょうか、それとも結局は潤沢な研究費を使える研究室に特権的な領域にでありつづけるのでしょうか。

 

昨年から今年にかけてerythopoietin(EPO)の発現制御でめざましい進展がありました。これには東北大学の山本雅之先生と鈴木教郎先生の研究室の貢献が大です。

山本先生の講演を二回、鈴木先生の講演を一回聴きました。論文もいくつか読んでご本人らに話しも伺いました。

異次元の解析ですっかり説得されています。

山本先生も鈴木さんもまだ筑波大学に在籍した当時に研究を開始されここまでたどり着かれました。 大根田さん、山下さんらを含む多くの研究者の努力の結晶です。

ここまで解析が精緻化すると培養細胞を用いた検討などは説得力に乏しいという事になってしまいます。

ぼくらも解析に値する面白い現象をいかに見つけていくかということが課題になるというふうに考えています。

Erythropoietin production in neuroepithelial and neural crest cells during primitive erythropoiesis. Nat Commun. 2013 Dec 6;4:2902. 

Plasticity of renal erythropoietin-producing cells governs fibrosis. J Am Soc Nephrol. 2013 Oct;24(10):1599-616.

A mouse model of adult-onset anaemia due to erythropoietin deficiency. Nat Commun. 2013;4:1950.

などは最近発表された論文です。

 

「代謝」「炎症」

 

低酸素研究が低酸素への細胞の影響という文脈で解析される機会はどんどんと減ってきています。完全に臨床的な諸現象のタメの重要な要素として取り上げられるようになってきています。 キーワードを挙げれば「代謝」と「炎症」という事になると思います。 なかでも代謝研究はHIFという補助線の登場と質量分析器の普及と平行して完全にリバイバルしていまや大流行となりました。 実験医学の増刊でそのものズバリのムックも出版されました。(がんと代謝~何故がん細胞が好んで解糖系を使うのか?メタボローム解析が明かすがん細胞の本質から代謝研究がもたらす創薬・診断まで) 炎症関連では”Chronic Inflammation: Molecular Pathophysiology, Nutritional and Therapeutic Interventions)という書籍も刊行されました。バランスがとれたよい本だと思います。 個々の論文を紹介する時間がないのですが一つだけあげて置きます。 “Adora2b-elicited Per2 stabilization promotes a HIF-dependent metabolic switch crucial for myocardial adaptation to ischemia.” です。 実はぼくもこのアイデアと似て非なる幼稚なものを考えた事がありましたがこんなに精緻なしかも大きな論文にまとめるなんて脱帽です。

と昨年書きましたが今年もこの傾向は進んできたと思います。 最新号のCellに以下の様な論文が出ています。

Probing DNA by 2-OG-Dependent Dioxygenase 

Declining NAD+ Induces a Pseudohypoxic State Disrupting Nuclear-Mitochondrial Communication during Aging 

dioxygenase, mitochondria, agingといえばHIFとかoxygen metabolism ということになります。

様々な生活習慣病の成立に通奏低音のように流れる慢性炎症の成立・維持に果たす酸素代謝の「乱れ」が果たすクリティカルな役割はほぼ確定していると思いますが各疾患モデルにおける解析は端緒についたばかりだと思われます。

 

FIH-1

セントラルドグマではPHDsに並ぶ「低酸素センサー」と考えられているFIH-1 (参照1, 参照2)ですがKOしてもパッとした表現型が得られるわけでもなく時々「ハッと」するような論文が出るもののイマイチ感がぬぐえない状況が続いていました。

2009年に東大の坂本さんがMint3-FIH-1-HIF経路の存在を証明した論文を発表されてから徐々に盛り上げってきて仙台ではFIH-1特異的な水酸化酵素活性阻害剤の話を聴いて、坂本さんや田久保さんのポスターみてこれからどんどんこの分野が盛り上がっていくぞという「兆し」を感じました。 とりあえずどうやって諸先生にぶら下がって行こうかと思案中です。

 

 

Cold-inducible RNA-binding protein (CIRP) triggers inflammatory responses in hemorrhagic shock and sepsis は面白かったです。

温度って重要なんですよ。

Persisting mild hypothermia suppresses hypoxia-inducible factor-1alpha protein synthesis and hypoxia-inducible factor-1-mediated gene expression. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.

 


利根川進 以前と言っても20年ほど前大学院生だった時分に福武書店から出版された講演録を読んだことがあります。ーググってみました。「心とコンピュータ」という本です。-

研究者は研究人生で何か一つでも大きな仕事をすればそれで十分評価されるのだから焦るな。そういう分野を持てるまではじっと我慢すればよいのだ。ただ大学院生とかポスドクの時期の仕事はPIの仕事になる場合があるのですごいアイデアを思いついたら独立するまで温存しろ、みたいな話をしていたと記憶しています。

どこかで書いたことがあるかもしれませんがぼくは大学院生としては劣等生で数年間というもの意味のある実験結果は何も挙げられませんでした。さすがに悩んでもう大学院をやめてしまおうとか思った事もありあるところからは意地で実験を続けていたという側面もありましたが一方では実験をするのが結構心地よく特にデータが出たしてからはもっと実験をしたいものだと思いながら生活していました。研究室に行かない日は一年で10日もないという生活を送っていたと思います。それで結構利根川さんのその話は心に残っていたのです。

彼のいう「大きな仕事」というのはぼくが考える「大きな仕事」と較べればスケールが違うのでしょうが似たような事は大学院時代にお世話になったJY先生にもいわれた事があります。しかし自分ではではそれなりの仕事と思っていても他人はそうは思ってくれないと言うことも実際にはあります。新聞などで報道されるような研究というのはやはり「実用」ということが前提としてあるのでしょうが、研究といってもいろんな研究があるのです。 iPS細胞で網膜を再生して患者に使うというようなレベルだと十分に「役にたつ知識」ということになると思うのですが多くの研究成果は直接には何かの役に立つわけではありません。

翻訳家の山形浩生氏のブログエントリーを最近読みました。「役立たずな知識の有益性」という随筆が紹介されていました。

ーちなみにこのフレスクナーって人は野口英世の共同研究者の細菌学者のフレスクナーの弟さんのようですー

以前に麻酔科学会のニュースレターに書いた文章-学会員以外は眼にする事は無いと思いますーを掲載してみます。 今でも考えはまったく変わっていません。 一番たちの悪いのは思いつきでする患者を巻き込む臨床「研究」だと思っています。

第30回日本麻酔科学会山村記念賞をいただきました。ありがとうございました。

栄誉とは無縁の研究生活を送ってきたので”素直に”うれしいです。

医者が行う研究には大きく分けて臨床研究と基礎研究がありますがぼくは意識的かつ排他的に基礎研究に従事してきました。

4年間の臨床三昧の生活のあと1992年に大学院に入学して以来です。 特に信念があってテーマを選択したわけではありません。当時教室を主宰していた故森健次郎先生に言われるがまま半ばいやいや始めたのが細胞機能のレドックス制御という仕事でした。その延長線上で低酸素の仕事を現在でも継続しています。

森先生に初めに言われたことは,「臨床応用とか患者の病気を治してやろうだとか大それた事をお前が考えてもダメだ」,また「”ハウス栽培”ー有名な指導者のもとで指示通りに働くという意味ですーで花を咲かせてもつまらないから10年後くらいに小さな花が開くような”よい研究”をしろ」と言うことでした。また「一流研究者などにならなくてよいのでせめて二流研究者なれ」とも何度も言われました。いまだに真意というか寓意がよく理解できませんが研究だけは継続しています。

麻酔科学会の若い世代の会員の先生方も何か興味をもてる研究テーマを見つけてそれがたまたま麻酔・周術期管理と関係があればラッキーというノリで研究をしてみたらいかがでしょうか。何がどんな局面でどんな風に役に立つかなど普通の人には初めから解るはずなどありません。

最後に,今までぼくと一緒に研究をしてきてくれた大学院生の諸先生,研究への支援をいただいた北野病院の足立健彦先生,京都大学の福田和彦先生に感謝して擱筆します。

森先生はぼくの能力を正確に見切っていたのですね。

「今さら麻酔科学会の賞?」と思ったのですが教室の福田先生の勧めで応募してみました。

Greggも米国の小児科学会の賞-一応あの人小児科医だったんですよ.ぼくが研究室に参加した時はまだ准教授でbeeper持ってました。-をもらっていたなと思いだしたこともあります。

 

去年の暮れに書いたのですが大学の研究生活ってホントによいものなんです。ぼくも研究費を安定的に確保する術が得られればこれはパラダイスです。とくに「有名」大学に在籍している必要はありません。だって廻りにすごいばかりだとちょっと嫌気がさすでしょう二流研究者としては。(参照

という訳で2014年は研究室を本格的に再稼働させて臨床検体を用いた検討を始めて他人に解析してもらえるような現象を見つけていきたいと思っています。

自分のフォトストリーム-479

 


-追記-

「心とコンピュータ」って本棚にありました。この部分はほぼ正確に記憶していたようです。

 

自分のフォトストリーム-260

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