当直でした。
19時には終わり夕ご飯を食べてシャワーを浴びたらあり得ないくらいに眠くなったので寝たらいつものように5時に起きました。7時間も寝ていたことになります。連続してこんな長時間寝たのは数ヶ月ぶりです。
という訳で朝からいろんなことをしていたら今日どうしてもしなくてはいけないことが全て消化できてしまいました。
某案件は催促されるまでしないことにしてすごく解放された気持ちになっています。
これからも仕事はどんどん断ります。
雑誌New Yorkerに心理学者のMARIA KONNIKOVAがエッセーを書いていました。
タイトルは「I DON’T WANT TO BE RIGHT」、副題は「Why Do People Persist in Believing Things That Just Aren’t True?」です。
麻疹(measles)、おたふくかぜ(mumps)、風疹(rubella)の予防のためにMMRワクチンを接種しますがこのワクチン接種が児に自閉症様の症状を引き起こす可能性を指摘した論文がLancet誌に掲載されたりしてーこの論文は後にretractされましたーMMRワクチンの接種に否定的な考えが流布したことがありました。 現在では、MMRワクチン接種と自閉症の発症の関係は医学的には否定されたとのコンセンサスがあるとの考え方が少なくとも医者の間では支配的です。 (参照1, 参照2)
これを背景にしたエッセーです。
最近Pediatrics誌に”Effective Messages in Vaccine Promotion: A Randomized Trial“という論文が掲載されました。
- 米国CDCによる、MMRワクチンと自閉症の関連には証拠がないという説明を要約したもの(CDCと明示されていない)
- 麻疹、おたふくかぜ、風疹に罹患した場合の疾患の症候や危険性について書かれた情報(CDCの文書と同等のもの)
- CDCが発行しているものを元にした、麻疹で死にかけた幼児のドラマティックな記述
- MMRに罹患した子供たちとその親を含んだ「疾患イメージ」
- 健康と無関係な文書を読んだ対照群(鳥の餌付けのコストと利点について)
の5パターンの文書を1759人の親に提示してワクチン接種を自分の子供に受けさせるかどうかの意志について文書提示の前後で調べたという論文で、結果は上記のどの文書も親の考えに影響を与えなかったというものです。
もっと興味深いのは、1の「正しい」記述を提示された群では、反ってワクチン接種への指向性が下がりまたワクチン接種と自閉症の関連あると信じやすくなったという結果です。backfire effectと言うのだそうです。
“I DON’T WANT TO BE RIGHT”という訳です。
低線量の放射線の健康に対する影響もこんな状況になっています。
「科学的」「医学的」に「正しい」とその人が思っている言説を「声高に」叫ぶことは反って間違った行動を人々に引き起こす可能性があります。
学会でもホントかうそかわからないようなちょっと怪しいことを熱心に何度も主張する人がいて反ってなんか胡散臭く感じる時があります。
文献を整理しておきます。 pubmedに収録された論文は適切な購読権がないと全文を読めない場合もあります。
“I DON’T WANT TO BE RIGHT” New Yorker
How the case against the MMR vaccine was fixed. BMJ
Effective Messages in Vaccine Promotion: A Randomized Trial. Pediatrics
雑誌ScienceのやっているサイトにAdam Ruben氏が”Experimental Error“というブログを書いています。
今回は “Forgive Me, Scientists, for I Have Sinned“
There are some things I need to confess. This isn’t easy to say, but after working as a real scientist with a Ph.D. for 6 years, I feel it’s finally time to come clean: Sometimes I don’t feel like a real scientist. Besides the fact that I do science every day, I don’t conform to the image—my image—of what a scientist is and how we should think and behave. Here’s what I mean:
いくつか引用してみます。
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I don’t sit at home reading journals on the weekend.
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I have skipped talks at scientific conferences for social purposes.
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When someone describes research as “exciting,” I often don’t agree. Interesting, maybe, but it’s a big jump from interest to excitement.
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Sometimes I see sunshine on the lawn outside the lab window and realize that I’d rather be outside in the sun.
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I have never fabricated data or intentionally misled, but I have endeavored to present data more compellingly rather than more accurately.
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I have pretended to know what I’m talking about.
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When a visiting scientist gives a colloquium, more often than not I don’t understand what he or she is saying. This even happens sometimes with research I really should be familiar with.
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I have performed research I didn’t think was important.
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I allow the Internet to distract me.
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I have read multiple Michael Crichton novels.
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I have taught facts and techniques to students that I only myself learned the day before.
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I find science difficult.
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I am afraid that people will read this confession and angrily oust me from science, which I love.
科学者はこうあるべきだとかどうとか最近声高に言う人がいてちょっと良くない傾向だと思っています。
鬼塚ちひろさんの曲に”We can go”というのがあって
吐き気に潰れてゆく中で柔らかな手に触れる どうか完全なものたちがそこら中にあふれないように We can go to the place, where we are forgiven
とうたっているのですが、もう10数年来のぼくのテーマソングなんです。
Ruben氏はこんな本も出しています。
Kindle版もあります。どうぞ。
今日からNHKで「シャーロック」が始まります。 息子はもう全部観たのだそうでけどぼくは吹き替えでないと解らないので…
MARIA KONNIKOVAにはこんな著作があります。
Naure Medicineに”The mathematician versus the malignancy”という記事が出ていました。
数理生物学が医学研究に果たす利点について解説したものです。こういう記事を見るー読むではないーとオボちゃんもうかうかしてられません。世界基準の美人研究者にならんとね。