Pepperくんに会いました

On 2014/8/18 月曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

日曜日は日当直でした。 出勤するとほぼお約束となっている某手術の麻酔を担当しました。 その後何もないのでデスクワークをしたり実験をしたりで過ごして結局朝まで出動要請はありませんでした。

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職場を移って主に学生の教育に興味を持ってきています。いろんなワークショップなどに参加させられるので自然に学生の教育について考えるようになってきたのです。

New York Timesに”The Drawn-Out Medical Degreeというタイトルの記事が出ています。 米国の話です。

medical schoolの修業年限をもう少し短縮できるのではないかという提案です。

主なる理由は、年限が短くなれば学費のローンの総額が減るまた少しでも早めに医師としてのキャリアを始めれば早くお金を稼ぐことができるようになるということになります。

現在の米国のカリキュラム(2年を基礎的な2年を臨床的なものに使う)は基本的には1910年に発表された”Flexner Report“での勧告に基づいているのだそうです。

見直してもよいのではないかということです。

最近行われたアンケートではmedical school20校のうち30%位が3年間のプログラムを考慮しているかすでに準備中という結果が出ているとのこと。

American Medical Associationもこのような流れを後押ししていて、competency-based programsの導入を促しています。何年やったかでなくある課題をクリアしたか否かが重要というprincipleです。ちなみに日本の専門医制度もこのようなprincipleになっていくべきとされています(参照)。

しかし、一方詰め込みは学生、教員双方にburnoutを引き起こすという意見もあるようです。

例えばNEJMのこの問題についての評論記事”The 3-Year Medical School — Change or Shortchange?“では、medical schoolの第四学年を無くするのは”unwise”だといっています。  

students needed more experience taking care of patients, not less, and would miss out on opportunities like the chance to work in other countries and to delve more deeply into topics like medical ethics, patient safety and health policy

とのことです。     

N.Y.U.School of Medicineでは去年から150人の定員のうち16人が3年間プログラムを始めたそうです。この16人は卒後N.Y.U.School of Medicineでレジデントをすることが”保証”されているということです。つまり、第4学年の時にmatchingの為の労力を使わなくともよいのです。    

というわけでこのような流れは加速していく勢いなのですが結局は年限が短くなるとローンの負担が短くなるとのが学生側にとっての大きな理由のようです。  

米国では35歳以下の医師の占める割合は、1975年には28%だったものが2011年には15%まで低下しているのだそうです。つまり高齢の医学生が増えてということです。少しでも早く医師として働きだしたいと思う学生も増えているのですね。

日本ではどうなのでしょうか? 自治医科大学では臨床実習は5年次でお終いというカリキュラムを組んでいると思います。 つまり5年間で6年分を実質上終わるという考えなのでしょうか。 その意味では日本でもやろうと思えばいくらでもできそうですが国家試験の受験資格で厚生労働省とももめそうです。


NYTの別の記事”Second-Chance Med Schoolでは米国でMedical Schoolに入学できなかった人たちがカリブ諸島のいろんな国のMedical schoolで学んでいる姿をreportしています。 これはこれでなかかな大変みたいですね。


「医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい」を読みました。

現代日本の医療批判が展開されている本です。 ぼくもある程度長く大学病院で医師として勤務していますがそのぼくでもそんなこと見た事も聞いたことも無いというようなさまざまなエピソードが例示されています。しかしこれらは「本当」にあったことなのだとは思います。 でも、これを「丸々真に受ける人」がいると大変困ってしまいます。

私は今の日本の医療に必要なのは、シュプレヒコールを挙げて財政難の国家財政から、少しでも多くの金を引っ張ることではなく、「競争」だと思っています

という「結論」には賛成です。

病院同士、医者同士はもっと競争をすべきだと思います。そのインセンティブの一つとして「混合診療」があるのであれば大賛成です。

産科の領域ではすでに「競争」が始まっていると思います。患者のアメニティーと医療安全のバランスをうまく取っている病院・クリニックは妊婦さんが集まっています。こういった医療機関は大病院への搬送を含むバックアップ体制も整っていて安全性は高いと思います。

麻酔診療の「質」が患者さんの病院選択の基準になることは現時点では多くはないと思いますが「日帰り手術」などにインセンティブがついていまより数が多くなっていけば麻酔の「上手」「下手」は日帰りができるかどうかに直接影響していきます。経食道エコーの技術などの従来型のものとは全く別のスキルが求められて行くと思います。

麻酔科医も、過去自分が手がけた麻酔記録によって評価される時代がやってくると思います。

よい医療を受けるには「コネ」が大事というのは本当だと思います。今日も一件そんな案件をハンドルしました。「六次の隔たり」より少ない次元で確実に観てもらいたい医者に診てもらう事ができるということは実際あります。いいのか悪いのか知りませんけど。


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ここに触発されて研究室の本棚にある新書から医療に関連のあるものを五冊選んでみました。

医者と患者と病院と (岩波新書)
医者と患者と病院と(岩波新書)

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砂原 茂一
岩波書店
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1983年に出版された新書ですが今日性を保っています。この30年間日本の医療が本質的には進化していなかったことを証明してると思います。

 

死の壁 (新潮新書)
死の壁(新潮新書)

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養老 孟司
新潮社
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養老先生の「壁」シリーズの一冊。

 

いのち 生命科学に言葉はあるか (文春新書)
いのち 生命科学に言葉はあるか(文春新書)

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最相 葉月
文藝春秋
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最相 葉月さんが12人の対話者に行ったインタビューをまとめたものです。生命倫理を考える時に一度は読んでおいた方がよいと思う本です。

 

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)
羊の歌―わが回想(岩波新書 青版 689)

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加藤 周一
岩波書店
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加藤周一の半自伝。彼は東大の医学部を出た血液内科医だったんです。

 

「おろかもの」の正義論
小林 和之
筑摩書房
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サンデル先生の本よりぼくは好きです。

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ソフトバンクのPepperくんの実物を見ました。

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