書評: 「RAW DATA」 を読んで

On 2020/3/28 土曜日, in book, Net Watch in Science, by bodyhacker

RAW DATA(ロー・データ) (PEAK books)(羊土社)を読んだので紹介します。

羊土社がはじめた”PEAK books“レーベルの一冊です。

他に「すこし痛みますよ」(This is going to hurt)などもすでに出版されています。こっちは英語で詠みました。

RAW DATAですがKindleで英語版を買おうとしても円で邦訳を買った方が安いという大サービスです。

 

まず出版社のサイトの要約です

EMBOJournal元編集長が研究の光と影をノベライズ。 研究の喜びと不正の本質に迫る、カレンとクロエの物語。 4年かけた研究成果が有名雑誌にアクセプトされ、バラ色の未来ヘ歩みだす若手研究者クロエ。 同僚として祝福しつつ、少しの嫉妬心、なによりも自分の実験がうまくいかないことへの焦りが募るカレン。

ふとした偶然からクロエ論文の齟齬が明らかになり、ラボは騒然となる…。 研究の喜びと不正の本質に迫る、科学者としての生き方を描いた小説。 内情を知る、学術誌EMBO Journalの元編集長ならではの視点と巧みなストーリーで、「科学者として譲ってはいけない一線はどこか」を読者一人ひとりに問いかける。

ある架空の論文の出版にまつわる研究不正を巡る小説です。著者は自分が見聞きした様々なエピソードを投入していると思いますが実際の研究不正事件を元にして書かれているわけではないと思います。一応ストーリーがある小説なんでネタばらしは控えておきます。

研究といってもぼくが関与してきた分野は今では生命科学とひとくくりにされる分野です。 純粋な()医学と比較すれば論理的な推論を用いたりする分野でだとは思いますが数学や物理学などと比較すると「決定的」ではないと思っています。

3.11の福島第一原子力発電所事故でさえ解釈はさまざまでも放射性物質とその放射線量は物理学的な手法に基づきカウンターを用いて計測できたわけです。一方今回のコロナウイスルはその物理学的な存在でさえ感度・特異度などの議論に埋まって確定できないという有様です。

細胞を用いた実験結果は往々にしてヒトやマウスを含む個体で同じように適応できるわけでないしマウス個体で正しいと思われる結果もマウスのストレインが異なればたちまちあいまいになりヒトでは正反対の結論が導き出される場合もあります。マウスの疾患を完治させられる「療法」が見つかったとしてヒトの同様な疾患-これとてマウスとヒトではどこまで似ていて違うのかさえあいまい-を完治させることは稀であると言うことができます。

この様に生命現象を扱う生物学、医学を含むライフサイエンスには原理的な不確定要素があるという事情もあると考えています。

この小説はこのようなライフサイエンスの現場を活写して読者に研究とはどのような営みなのかについて最高をいう試みです。

展開は起承転結を含めてかなりベタです。しかしそれ故、ライフサイエンスの研究者が読めば、研究者の何気ない発言や行動様式があまりにも微に入り細に入り描写されていることに驚くと思います。 別の観点でからいえばこれからライフサイエンスの分野に入門しようと思っている学生には研究者の日常を知るよい資料となります。皆さんはこれからこんな感じの日常を送るのです。

 

不正がどのような影響を後生に与えるのかは予想が不可能です。多くの研究不正は何のインパクトも世界に及ぼさずに消えていきます。研究論文の5%しか作成していない日本人が、撤回論文が多い研究者上位10人のうち半分の5人を占めるそうである。第一位と二位は麻酔科医だ。二位の麻酔科医の不正が明らかになったとき前後でメタアナリシスの結果が変わったという論文がいくつか出版さたのを覚えています。とはいえ、これらの論文が消えたかといって生物学の根幹が揺らいだということはないし、このように論文はタダ消える場合がほとんどです。(参照1, 参照2)

厄介な問題は研究不正と見なされる行為の結果publish(世の中に公知の事実として告知すること)された現象なり法則はそれがpublishされた過程に不正があったという事実だけでは真偽が確定できないという事実です。

真偽が確定できないという現象は意図的な不正でなくとも起こります。これらを含めて再現性の問題と言うこともできます。

 

しかしここで考えたいのは研究倫理とか再現性とかそのような問題ではありません。

ここで抑制性T細胞の話を持ち出そうと思います。

ぼくの研究上のメンターである淀井淳司先生が、ある会の後の雑談の席で、その場にいた研究者に体して、抑制性T細胞(Ts)について必死に弁護していたのを横で聞いていました。

淀井先生がTsをあのような観点から観ていた事に驚いたし多田先生をそれだけ尊敬していたと言うことにも感銘を受たのでTsについては生物学的な興味とは別の興味を持っていました。

制御性T細胞を同定された坂口志文先生が以前にこう書いておられました。

獲得免疫反応をもつある種のT細胞が、頃合いを見計らって免疫反応を終了させるのだという理屈です。1970年代後半には盛んに研究されていましたが、どうも実体が見つからない。それどころか分子生物学的にありえないとわかり、論議は雲散霧消してしまいました。

しかし、何らかの制御するT細胞が存在しないと、どうしても免疫反応を説明することができないのです。何か制御する細胞があるはずです。その信念で、細々と研究を続けていました。

一旦は消えてしまった「獲得免疫反応をもつある種のT細胞」をその考え方を否定するのでなくそのような役割をもつT細胞があるとすればという仮説を頭の隅においての研究の過程で、坂口先生方は制御性T細胞を同定されたのだと思います。

日本免疫学会は学会が発行するNews Letter上で

特集「抑制性T細胞:過去と現在」にあたって

という特集を2003年に組みました。

その特集は

  • 抑制性T 細胞:過去と現在:多田富雄
  • 外から見たT sの世界歴史は繰り返す:石坂公成
  • 抑制性T 細胞と臓器移植:奥村康
  • 抑制T 細胞:谷口克
  • サプレッサーT細胞研究雑感:浅野 喜博
  • 何故,今,制御性T 細胞なのか:坂口志文

というラインアップでした。

子安先生がイントロダクションを上手くお書きになっています。

現在でも読むことができます

まず一読をお勧めします。

獲得免疫反応をもつある種のT細胞はつまり”Suppressor T cell(抑制性T細胞)という言葉はRich- ard Gershon,L.A.Herzenberg, そして私などが顔を寄 せ合って真剣に議論して決めた.それまで私はR e g u l a t o – ry T cellと呼んでいたが,Helper T cell も調節性T細胞 ではないかというもっともな意見から,サプレッサー T 細胞(T s )が用語として採用された”そのSuppressor T cell(抑制性T細胞)であろう。

抑制という現象は多くの人が気づいていたが,それが T 細胞によることが分かったのは,1 9 6 9 年のことである.

この特集の主人公は制御性T細胞(Treg)ではなく、Suppressor T cell(抑制性T細胞)つまりTsです。

先のエッセーで坂口先生が「獲得免疫反応をもつある種のT細胞」などと奥歯にものが挟まったようないい方をするには理由がありました。

■T s の異端審問

1990年代になると突然suppressor age は幕を閉じた.現象論だけが賑殷をきわめ,当時やっと可能になった分子的解析が欠けていたことによる.特にI-Jや抗原特異性の謎があった.過激な議論に「T s は存在しない」というのがあった.陰湿な異端審問的な論調に,私はある国際誌で”eppre si muovo!”(それでも地球は動く)というエディトリアルを書いたことがある.ガリレオガリレイの言葉である.私の恩師岡林篤教授は,「自分の眼で見た物だけを信じよ.ゆめゆめ疑うことなかれ」と口癖のように言われたのを実行したまでだ.

という記載のような運命をTsはその後たどることになったからです。

医学部の病理学の授業で非常勤講師として出講されていた奥村先生にTsの電子顕微鏡写真を見せられた時のことはよく覚えています。

私は Ts が生き延びて revival を迎えたことに満足しているが,残念なことに,日本の免疫学者たちは Ts が 流行らなくなった途端に,それまで自分たちが p r o u d していた筈の領域を容赦なく切り捨ててしまった.私は その背景は知らないが,こういう歴史は二度と繰り返し てもらいたくないものである.

石坂公成先生の「Ts が生き延びて revival を迎えた」という認識は何らかの波乱を含んでいると思うけど、「日本の免疫学者たちは Ts が 流行らなくなった途端に,それまで自分たちが p r o u d していた筈の領域を容赦なく切り捨ててしまった」という内容には気を止める必要はあると思います。

「Raw Data」の帯には池谷裕二先生の以下の様な惹句が印刷されています

不正、虚勢、焦燥、欺瞞、背徳 ――研究者の実態があまりにリアルに書かれていてハラハラしながら読み進めた。そして最後に本を閉じたとき、改めて「研究は美しい」と感じた。多くの人に研究の本当の現場を知ってもらいたい。

2003年にこのような特集を組んだ日本免疫学会はこの当時輝いていた。

この小説結構ベタなオチがついているのですがそれを示唆したくてこのようなネタを書いてみました。

 

ぼくはある経緯で大学院生活を活性酸素種(ROS)が細胞内シグナルのメッセンジャーであるという仮説を検証していた研究室で過ごしました。研究室には過酸化水素で細胞を処理するとある蛋白質のリン酸が特異的に亢進するとうような研究を行っている人もいました。ある種の脱リン酸化酵素が過酸化水素で失活してその結果リン酸化の亢進が観察されるなどあたり前の現象だと今では思われるけど当時はそうでなかったのです。学会や班会議でこのような結果を発表すると「お前たちは過酸化水素の生物学をやっているのか」などと誹謗中傷を受けました。バカ扱いです。結局このようなレドックス制御がリン酸化・脱リン酸化とならぶ細胞内シグナル伝達の原理だと世間に認められる様になったのは20世紀が終わる事だったと記憶しています。

その後留学先で低酸素の研究を手がけました。HIF-1の遺伝子単離にはぼくは参加しなかったのですがその後の酸素センシング機構の解明はつぶさにその進展を観察できました。この過程で仮説としては素晴らしく論文としても完璧というような論文の内容が再現できず結局は仮説ごと消えていった-どころがリトラクトされた-とものもあるし、その思想なりは立派に生き残ったという論文もありました。

RAW DATA(ロー・データ) 研究室に一冊そろえて是非お読みください。Kindle版もあります。


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大学院生の論文を1/18に某雑誌にsubmitしたですが査読に時間がかかって結局先週3ヶ月くらいかかってやっとdecisionをもらいました。

嫌な予感がしていたのですが実際は別になんて事のないコメントばかりでrevisionも済ませてしまいました。

連休の谷間で送り返してしまいます。

 

すっかりエントリーの更新が途絶えていましたが元気です。


「トップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文」

羊土社から最近出版されたトップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文〜言語学的Move分析が明かした執筆の武器になるパターンと頻出表現を紹介します。

トップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文〜言語学的Move分析が明かした執筆の武器になるパターンと頻出表現

英語に限らないのですが論文や科学的な総説をうまく書きたいという希望を持っています。

様々な論文執筆の指南書を出版される度に立ち読みしたり買ったりして読んで少しでも参考になればと努力を重ねている、つもりですがなかなか満足のいくデキにはなりません。

先日梅田の紀伊国屋書店でトップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文を見かけて買って読みました。

論文を執筆する際には,過去の類似論文を参考にすることが一番のコツで ある

論文には基本的な構成というものがある.決められたセクション分け (Introduction,Methods,Results,Discussion)もその1つだが,決 められていない部分にも一定のパターンがある.それが本書で示す12のMove である.もちろん論文をどのように書くのかは著者の裁量であるが,実際に は論文の型というものに配慮しなければならない.

という思想で論文の型を強調して執筆をしていくという方法が紹介されています。

 

本書に示す分析に用いたコーパスデータは著者の一人である石井先生が作成したもので 、特徴としては2つあるとのこと。

まず本コーパスデータは医学論文に特化し た特殊コーパスである点である.

また作成するにあたっては,医学論文15編 を分析し12のMoveに 基づいて395編の論文(総語数約140万語)を集めたという二点が売りです。

 

つまり「データ」に基づいているのです。

ぼくはNature, Cell, Scienceに論文を載っけるという方向で研究をしているわけでなく皆が名前は知っているようなopen journalに自分らの仕事が出れば良いという報告で論文を作成しています。その場合、英語がうまいとかそういったことはそう大きな問題でなくきちんとdataを揃えて論理的に並べればよほどひどい査読者に当たらない限りなんとなるものだと思っています。

なのでコーパスに適った文章が淡々と書くことができれば良いということになります。

型があってそれにははめると形になるという方法は大歓迎です。

 

通読しましたがぼくでも得るところは多いといえます。

 

妙な本を読む前にまずこれを読みましょう。

 

羊土社からは、ライフサイエンス英語表現使い分け辞典第2版が出版されています。

 

基本的な発想は一緒です。 ぼくが机の上に常においている唯一の辞典です。

オンライン版のライフサイエンス辞書を使う場面も多いです。

さらに河本先生はライフサイエンス辞書コーパス活用法というweb pageを運営されています。

ライフサイエンス英語表現使い分け辞典第2版 (ライフサイエンス英語シリーズ)

目次です。

Part1 論文を書く前に学びたい執筆のテクニック

1医学英語論文の流れとMove分析

1 論文のセクションとMoveとの関係

2 Move の特徴と役割

2 パラグラフ・ライティングの原則と流れのつくり方

1 原則1:パラグラフの基本パターンを構成する3つの要素

2 原則2:one paragraph, one idea の原則と流れのつくり方

3 パラグラフ間につながりを持たせるフックの活用

4 パラグラフの分け方と分量の関係

3 signpostの活用と論理展開の原則

1 signpostとは

2 パラグラフ構成における論理展開の原則

3 signpostとなるつなぎ表現のパターン

4 その他のsignpostとなる表現

4 論文における時制の意味とその重要性

時制の使い分けのポイント

* 5 引用のルール*

復習問題 Part2 医学英語論文の構成パターンと特徴的英語表現

Introduction

構成と書き方

Move構成と英語表現

* Methods*

構成と書き方

Move構成と英語表現

Results

構成と書き方

Move構成と英語表現

Discussion

構成と書き方

Move構成と英語表現


総説でました

意識の高い医者が読むと思われているIntensivistという雑誌があるのですが最新号に寄稿しました。

この雑誌毎回特集が組まれているようで今回は「酸素療法」。

酸素って難しいですというかまともなエビデンスってあるのかな。みんな苦労していると思います。

ぼくの担当した部分は、

低酸素の生物学 : 低酸素誘導性因子の果たす役割 Intensivist Vol10, No2 p259-269 (2018)

今回はこんな感じでまとめました

酸素は生命に必須な分子である。それ故、基礎医学の範疇にとどまらず基礎生物学の重要研究課題であり論文が刊行され続けている。臨床医学の分野でも「酸素」にまつわる様々な研究結果が存在し、読者諸氏もよくご存じの通り、心肺蘇生時の酸素投与ではその有用性を越えて有害性の有無を検討する臨床研究さえ存在する1。集中治療をふくむいわゆるクリティカルケアでは事情はさらに複雑でこのような現状を背景に酸素にまつわる知見の整理をする必要がありこの観点からIntensivistの特集「酸素療法」が企画されたのであろう。 この稿では、基礎生物学的な観点から低酸素応答・酸素代謝に関わる研究の現状を解説して、臨床現場での判断に還元できる応用可能な生体と酸素についてのコンセプトを提示したい。

興味があれば自分は医者でないけどという人でも読んでみてください。

医者特にcritical careに携わる医者は低酸素をこんな観点から理解しようとしているということがわかるかもしれません。

結構高価なムックです。

多くは臨床家向けの総説になっていますので一冊買うのはちょっとと思うかもしれません。

大学に所属している場合は図書館が医学書院と契約していて雑誌がごっそり読める場合がありますし麻酔科とか集中治療に関わる医者に聞いたら「はい」って感じで読ませてもらえるかもしれません。

INTENSIVIST Vol.10 No.2 2018 (特集:酸素療法)


コンピュータのファイル名

以前にもこのブログで取り上げたことがあるのですが再度書いてみます。

コンピュータのファイル名の件です。

コンピュータのファイルの名前の付け方にもいろんなルールがあります。勝手に名前をつけるとトラブルの元になります。

wikiにも記載があるほどです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB%E5%90%8D

Apple社も以下の様なことを以前には推奨していました。

ファイルに名前を付けるときは、次の点に注意してください。 コンピュータによっては、ファイル名に特殊文字を使うと問題が発生する場合があります。したがって、ファイル名には、アルファベットの大文字と小文字(A〜Z、a〜z)、数字(0〜9)、およびアンダースコア(_)のみを使用します。 ピリオド(.)はファイル名と拡張子との区切り文字としてのみ使用し、それ以外の場所には使用しないでください。ファイル名の先頭にピリオド(.)を使用することはできません。 ファイル名に拡張子(たとえば「letter.doc」というファイル名の「.doc」や「picture.jpg」の「.jpg」)を付けることによって、どのアプリケーションでファイルを開くかを区別しているコンピュータもあります。この場合、ファイル名に拡張子が付いていなければ、ファイルをダウンロードした人は、どのアプリケーションでファイルを開けばよいかがわかりません。 また、短いファイル名が必要なコンピュータもあります。誰もが共有ファイルを利用できるようにするには、8文字以下(拡張子を含む場合は拡張子を入れて12文字以下)のファイル名を付けてください。

”長さ”に関して言えば、ぼくとのやりとりでは8文字以下にする必要はありません。しかし拡張子は必ずつけてください。

ぼくはファイル名になるべく日本語を使わないようにはしていますが,解りやすくて便利なことがあるので厳密に守っているわけではありません。最近では使う場合が多いともいえます。

しかしファイル名に”ブランク”をつかうことはありません。またファイル名にギリシャ文字などは使いません。妙な事が起こることがあります。

つまり”西野七瀬.doc”はありです。 ”西野 七瀬.doc”は無し(”西野 七瀬.doc”はもっと無しです)で,この場合,”西野七瀬.doc.doc”とします。望ましいのは”nanasenishino.docです。 ”HIF-1α.doc”は無しで”HIF-1a.doc”です。

また以下が大切なのですが、自分の作業履歴はすくなくとも一日の単位で保存してください。

つまり”渡邉理佐.doc”というファイルで暫定的に作業を始めても作業が終われば”20180421渡邉理佐.doc”という風な名前で保存します。二日後にそれに修正を加えれば今度は”20180423渡邉理佐.doc”と名前をつけます。

こうやって投稿して論文がアクセプトされるまですべてのファイルを保存していきます。決して”上書き保存”をしてはいけません。

 

ぼくが作業をして結果を返すときは,”20180424_渡邉理佐-kh.doc”の様な名前をつけてぼく(kh)が修正を加えたことを明らかにして送り返します。

 

また”日麻.doc”のような名前のfileを送られても困ります。ぼくはある特定の一人とだけ作業をしているわけではありません。

何度も書きますが最低限日付をfile名に入れるだけでだいぶ違うのです。保存するサンプルには面倒でも日付を入れて保存するのと同じです。

日付ですが”141126″ではなく”20141116″と書くことにしています。

 

fileの名前の付け方に絶対的なルールはありませんがこれを皆さんにお願いする理由は単純です。ぼくがそうしているからです

このルールに沿っていない場合はぼくが即座に上記のルールでfile名を変更してしまいます。

もちろん皆さんが自分で独立して研究をするようになったら好きにしてください。

また 半角のカナの使用は絶対に止めてください。 また英数字を全角にするのも止めてください。


今、Natural Causes: An Epidemic of Wellness, the Certainty of Dying, and Killing Ourselves to Live Longerを読んでいます。

読み終わったら何か書いてみます。

Natural Causes: An Epidemic of Wellness, the Certainty of Dying, and Killing Ourselves to Live Longer (English Edition)


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三重大学の島岡要さんが行動しながら考えよう 研究者の問題解決術というタイトルの本を羊土社から出版されました。

本を送っていただきました。どうもありがとうございました。

早速帰宅時に読んでみました。

 

恒例によりちょっとした書評というより感想文です。 (参照1, 参照2, 参照3)


まずもくじです。

序章 悩める若手研究者とその卵たち12のケース

第1章 行動しながら考えよう―Thinking While Acting

第2章 ネガティブな感情を活用しよう―ネガティブな感情を避けるのではなく、自身の成功を導くものに転化させる方法

第3章 研究者は営業職。視点を切り替えよう―研究室内の上司-部下の関係を良好にするための方法

第4章 研究室での自分の立ち位置を分析してみよう―PI原理主義に染まって視野が狭くなった状態を脱却する方法

第5章 情報化社会だからこそ「暗記力」を強みにしよう―暗記力と理解力を鍛えて知的生産性を上げる方法

第6章 新しいことをはじめてみよう―進むべき道を探求し、自分で選んだことに自信を持つ方法

第7章 戦略的に楽観主義者になろう―失敗に対する耐性をつけ、研究を好転させていく方法

あとがきにかえて

最近の社会学とか心理学の最新の成果を援用して良く咀嚼して研究者が行動に踏み出すように後押しするために書かれた本です。

トランプ氏の大統領就任のエピソードまで含んだ今日性にあふれた一冊です。

特に今回は島岡さんの実体験が大量にぶち込まれていて読み始めると一気に最後まで引っ張られていきます。

 

序章に置かれた悩める若手研究者とその卵たち12のケースへの具体的な解決法の指南としてそれ以降の7章分が当てられるという形式となっています。

この「序章」が効果的です。

12のケースのうち2つを紹介します。ちょっと長い引用ですがお許しください。

大学院生Iさん 23歳 男性

修士課程の1年生です。学部2年の頃から研究室に出入りしていて低酸素環境におけるがん幹細胞の代謝変動について研究をしています。教授や先輩方の指導のおかげでこのたび筆頭著者の論文をネイチャー姉妹紙に出すことができました。来春には国際学会でオーラル発表予定しています。教授からは「君は研究者になるべきだ」と言われて僕もなんとなくそのつもりでいるのですが研究者として成功する自信がありません。どうすればスタッフや先輩方のように自信が持てるのでしょうか?

まず提示されるアドバイスは

「苦労して成功を体験して,戦略的に楽観主義者になろう」

ポスドクKさん 29歳女性

同じ研究分野の人が集まる学会や研究会に参加しても他人とコミニュケーションをとることができません。 講演を聞いていても色々と質問したい事は思い浮かぶのですが一度も質問に立った事はありません。自分がポスター発表する折りも「説明してもらえますか」と言われて初めて口を開く有様で「説明しましょうか」の一言はいつも喉元まで出かかって飲み込んでしまいます。これじゃあ,研究者というかそもそも社会人としてダメですよね。こんな性格だから最近は社会そのもので自分の居場所がないように感じてしまいます。

「内向的な人は多い,内向的である事をかえる必要はない。」


これらの「ケース」がどれくらい実在の人物に対応しているのかは不明ですが12ケースは誰しも一度は悩んだことのある問題点を抱えたケースとなっていると思います。

以下すこしぼくの体験を入れたコメントをしてみます。

第二章はネガティブな感情を活用しよう―ネガティブな感情を避けるのではなく、自身の成功を導くものに転化させる方法

ぼくは一言で言うと劣等大学院生でした。(参照)

ぼくは4年間-医者の場合は修士課程がなく博士課程が4年間の場合が多いのです-で博士号を取得できなかったのです。

しかしとにかくなんとかしないとはいけないと思いからがむしゃらに実験を毎日繰り返していました。

「なんとかしないとはいけない」という気持ちは,学位無しでは指導教授やぼくを破門した師匠に顔向けができないのではないか,このままでは自分はタダのバカとして埋没してしまうのではないか, というネガティブな感情でした。

学位が取れたらもう研究はするまいと思っていたのですが論文が出て学位が取れて結構ヒットしたらもっとやってやろうと思いはじめてそこから20年です。

留学の時の奨学金も二つ当たり「なんかチョロいな」とか思っていたのですからいい気なものです。

留学中は朝7時に研究室に来て16時には帰るという生活でした。土日は研究室には行かず。これは日本にいたときから比較して遥かに温い。

それなのに論文は結構出ました。

Nature姉妹紙にも出ました。他の研究室との共同研究でしたがfigureの控え目に言って半分以上はぼくの実験でした。追加実験無しでreviewerのコメントは統計法をきちんと書いてね位だったと思います。研究室のbossは最低でもco-1st authorを主張していましたが帰国することが決まっていたしぼくには何の執着もありませんでした。

Genes & Developmentにも出ました -IFは今ではそう高くないのですが当時はScienceより高く多分20位だったと思います-。これはco-1st authorでこれまたfigureの半分以上はぼくの実験結果でした。これも追加実験無しでover-discussionの部分をクールダウンせよという指示でresivionにかかった時間は二時間くらいだったはずです。朝返事が来たと言われて午後にはもう送り返したと言われたのを覚えています。ぼくを筆頭にとbossが言ったのですがこれも断りました。帰国することが決まっていたしぼくには何の執着もなかったので。今では被引用回数が1000回を越えました。

ちなみに,Nature姉妹紙は400回強でぼくの学位論文は800回強の被引用回数です。

ここでさっさと臨床に戻っていれば麗しい思い出に浸って余勢をゴージャスに送れたのにと思う事は今でもあります…

 

第5章 情報化社会だからこそ「暗記力」を強みにしよう―暗記力と理解力を鍛えて知的生産性を上げる方法

「暗記力」で受験を生き残ってきましたが単なる記銘力は低下してきています。

しかし,ぼくとて今でも「暗記力」は駆使しています。

50人以上の前で行う1時間くらいのプレゼンテーションなら一言一句暗記して臨みます。朝起きて蒲団の中でslideの「絵」が思い浮かびそこで話す言葉が想起できたらその日のプレゼンターションはぼくの基準では成功です。持ち時間の80%でまず終わることができるように調整します。

論文の執筆時の参考文献は100篇くらいならpost-itの力を借り手ですが何処に何が書いてあったか大体覚えています-但し論文が通れば全部忘れます-。

 

第6章 新しいことをはじめてみよう―進むべき道を探求し、自分で選んだことに自信を持つ方法

この章はとても身につまされました。

自分が無能であることが判明し,大学から追い出されるまではやってみようと思えるようになった。 引導を渡されたときには,その次のことを考えようと開き直れた。捨てる神あれば拾う神あり。”When one door shuts, anothor opens”だ。

これに尽きるなと最近日々思っています。

 

この本で言及されている何冊かをあげて置きます。

「弱いつながり―検索ワードを探す旅」

「暇と退屈の倫理学」 (参照)

「学びとは何か――〈探究人〉になるために」

「採用基準」

「ファスト&スロー」

島岡さんはこの本の原稿執筆をSiriとiPhone版のOneNoteを援用して行ったそうです。 ぼくも,大学院生IさんとポスドクKさんのエピソードは音声認識ソフトを用いて「入力」しました。確かにびっくりするほどの精度ですよね。

 

「何かを自分でする」,「何かをさせられる」という区別はなかなか難しいしホントはその中間的に皆生きているのだと思います。
島岡さんの提案もマニュアルではありませんのでそれを受け取る読者次第ですね。
ただ一読するとNUDGEされたという感覚は確実に残って何かはじめようと読者は思うようになります。

一般化できることを敢えて研究者向けに絞り込んでいることがこの本の成功を担保している要因だと思います。

 

この行動しながら考えよう 研究者の問題解決術」,少なくとも「科学の問題」以外で悩んでいる研究者には一読をお薦めします。

 

 

と考えてきてやっぱりこれかなと。

この本の要素が全部入っている一曲です。

ちなみに,乃木坂46の齋藤飛鳥さんは、

「私は人間的に暗いので、相手も『この人なんか暗いな』っていう一面があると仲良くなれそうだなと感じます」「たぶん、私一日中壁の目の前でも生きていくタイプ。それでも楽しく生きていけます」

なんだそうですよ。あまり信じてもらえないかもしれませんがー家内に聞けば解りますーぼくもホントは暗い人間です。

 

昨日この本を読み終えて風呂に入ったあとテレビで将棋の加藤一二三さんのドキュメントをNHKで放送していたのを偶然観ました。

加藤さんは,将棋が強くなるかも知れないと考えてキリスト教に入信されたのですね。

やっぱりぼくにはマネできないなと。

「科学の問題」以前に「人生の問題」で負けている,かも。


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