UCPな研究者とは

On 2014/7/14 月曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

 

金曜日当直で日曜日は日当直。中の土曜日は朝から学生さんも巻き込んだ医学教育ワークショップに出ていたので某原稿の作業が進みません。

ちょっとどうなるのか自分でもわからなくなってきました…

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研究室を出たところから 夕焼けがきれいです

 


継続して論文を出す

PLoS Oneに”Estimates of the Continuously Publishing Core in the Scientific Workforce”というタイトルの論文が出ていました。

出版社のElsevierが運営してるScopusというデータベースがあります。それを用いた研究です。

まず、研究者(Scopus author identifiersで区別します。なので場合によっては同姓同名の別人に同じauthor identifiersが振られている場合もあるかもしれませんし同一人物に別のIDが振られている可能性もあります)のうち1996年から2011年までの間に年に少なくとも一つの論文(item)を途切れなくpublishしている人が何人いるかを調べました。 この期間にScopusでインデックスされた研究者(Scopus author identifiersが異なる「人」)は15,153,100人いて1996年から2011年までの間に年に少なくとも一つの論文(item)を途切れなくpublishしていた人(person with UCP:uninterrupted, continuous presence in the literature, 「UCPな研究者」)は150,608人いました。つまり1%以下です。

この「UCPな研究者」は引用数の41.7%を占めていて、さらに引用回数が1000回より多い論文の87.1%は「UCPな研究者」が著者の一人になっていました。

 

「UCPな研究者」のこの期間中における論文数の平均は122.7篇で中央値は94篇でした。また「UCPな研究者」のH-indexの平均は23.1で中央値は21だったという事です。

一方UCPでない研究者の同時期の論文数の平均は4.9で中央値は1でした。H-indexの平均は1.8で中央値は1でした。

open journalなのでtableの一部を引用しておきます。SkipとかSkip-1とかありますねよく読むと結構おもしろいです。一度どうぞ。

Journal pone 0101698 t001

 

1996年ってぼくの名前が載った論文が世の中に出始めた年で1996年から2011年というのはぼくの研究歴そのもです、つまりぼくも15,153,100人のうちの一人です。

調べたらぼくは「UCPな研究者」でした。 つまり1996年から2011年まで途切れなくぼくが著者として入っている論文が出続けていました。ぼくが第一著者の論文もあるしコレスポンディンク著者の論文もあるしその他の共著者の論文もありました。

ぼくのH-indexは40ですが、論文数としてはぼくは122篇も論文はありません。多産ではないのです。

 

15,153,100人の中には例えば大学院生で一篇だけの論文に名前が出て以後研究活動を行っていない人も含まれているはずですのでUCPな研究者が1%位というのはあながち間違えではないかもしれません。

 

研究を継続するためには研究費が必要でその為には申請書の文献リストに論文が一つという訳にはなかなかいきません。 確かに毎年一つくらいはあった方がいいなという気もしますがいくつあったらよいのかについては誰も知りません。non-UPCであっても年に一報出ていれば研究活動の継続はできそうです。

日本では科学研究費の申請でその研究者の今までの研究ヒストリーが過去5年間の業績以外に正面切って問われることはありません。

つまりどこでまたは誰にトレーニングを受けて今までどのような職についてどのような研究をしてきてどのような論文を発表してきたかについては不問です。

「申請書が全て」が建前。でもぼくは実際はそうではないと思っています。

 

藤田保健衛生大学の宮川さんが安定した基盤的研究費をという提案をされています。大賛成です。

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最近、本をほとんど読んでいません。電車の中でもひたすら論文を読んでメモを取ったりしています。

残り2000語くらいとfigureをいくつかで取りあえずdraftができるのですがそこから「寄せ」があって…と考えるとこんなブログエントリーを書いている場合ではありません。

今日大学で科学研究費の内部監査大会がありました。某K大にいたときに一回「時計台」から人が来て一時間以上いじめられたことがあったのですがそれ以外はこういう監査はありませんでした。結局5分で終わりました。きちんとやっているという証拠を取っておくことが重要なのかも知れません。とにかく私立大学はイジメの対象になりやすいです。

大それた悪い事をやっているのは断然旧帝大だと思うのですが…

 

 


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金曜日に続いて日当直しています。

土曜日の朝に共同研究をしているH田さんが来てくれて3時間ほどいろんなことを話せて良かったです。 午後からはtaroが来て某講演会の作戦会議でした。うまくいくことを祈っています。

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久々のエントリーです。

原発事故と科学的方法という本を読みました。

著者の牧野淳一郎さんという方は現在は東工大で理論天文学、恒星系力学、並列計算機アーキテクチャーを研究している人で原子力関連の専門研究者ではありません。

3.11の地震による原発事故について政府、東京電力から提供される「公式発表」に疑問を感じて公表されたデータと「高校の物理でならう程度」の知識でできる計算を自分で行って原発から放出されてしまった放射性物質の量が膨大であることに気付いた、その後のことを個人的な日記などの記録から淡々と記録して「科学的な方法」「科学者の態度」について考察した本です。

岩波書店の雑誌「科学」に連載していた「3.11以後の科学リテラシー」というタイトルの文章の内容を一般向けにtwitterやウェブサイトに筆者が書いたものと一緒に再構成することでまとめて出版された本で本の帯によれば原発再稼働と健康被害推定をめぐる「実践的な思考の書」ということです。

 

岩波書店は科学という名前の月刊誌を発行しています。 東北の地震と続発する原発事故つまり3.11の後にはこれに関連した放射線・エネルギー問題が特集として取り上げられることが多くなっていると思います。 一種の「科学」の「世界」化ですね。さらに 科学者と社会の関わりに力点を置いた数多くの書籍が岩波書店から出版されてもいます。

信頼の条件――原発事故をめぐることば

科学者に委ねてはいけないこと――科学から「生」をとりもどす

などはその例です。

 

「科学」の最新号は11月号ですが 特集は「“科学的”とは何か」です。

特集の論文のタイトルを列挙してみます。

  • 「想定外」にみる科学主義の虚偽──地に墜ちた日本国家の信頼と倫理……松原望

  • 医学情報の科学的条件──100mSvをめぐる言説の誤解を解く……津田敏秀

  • 「科学的」であることを市民の側から考えるために──東京電力原発事故と被曝をめぐる「科学」的言説をめぐって……影浦峡

  • シミュレーションと予測の使われ方──福島原発事故をめぐって……牧野淳一郎

[規制と科学]

  • 放射線とベンゼンを例にみる規制と科学観──社会的受忍レベルの裂け目……神里達博

  • リスク評価に“中立”はあるか──森永ヒ素粉乳中毒事件にみる文脈依存性……中島貴子

[科学と社会の諸相]

  • 論理学とサイエンス・コミュニケーションの補完……村上祐子

  • 科学という眼鏡……有田正規

  • 科学的である,という難事……岩田健太郎

  • 「原発と活断層」をめぐる「科学」の扱い……鈴木康弘

  • 福島第一原子力発電所から海洋への放射能流出の現状……神田穣太

いろんな人が俎上に上げられ批判されます。

以前紹介した医学と仮説――原因と結果の科学を考えるの著者である津田さんによって東京大学病院の中川恵一医師がばっさりと斬られます。 原子炉事故後積極的に発言されてされていましたが「医学情報の科学的条件──100mSvをめぐる言説の誤解を解く」では曰く「目覆いたくなる日本の医学者」の一人として「データを科学的に論じる能力に欠けた医者」として批判されています。 ちなみに中川医師は牧野さんにも「原発事故と科学的方法」で批判を受けています。要するに「科学的」でないというわけです。

それでは「科学的」とは何かまたはどういうことかという事が問題になるわけですがこれを明確に定義することはできないので結局は歯切れの悪い議論となりなり[科学と社会の諸相]というようなアプローチとなるわけです。

しかし「科学の科学性を担保するのが誠実にして謙虚な弁証法だ」という言説には同意はできないしそもそも何のことを言っているのかぼくには解りません。

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科学雑誌”Nature“で科学者やその業績をどのように評価するかについての議論が特集として取り上げられました。

IMPACT:THE SEARCH FOR THE SCIENCE THAT MATTERS という特集です。

“The maze of impact metrics” はこの号のeditorialで問題が要領よくまとめられています

“Research assessments: Judgement day” 研究機関の評価のあり方に力点をおいたものです

Science publishing: The golden club “ CNSとまとめられるCell, Nature, Scieceなどに論文を載せている研究者はそれだけで「すごい」と世間的には思われていろんな「得」をするのですが最近はその神通力が効きにくくなっているかもというお話です。

Publishing: Open citations”, “Referencing: The reuse factor” この2つはちょっと短めのコメントです。

“Who is the best scientist of them all?”は ちょっと面白い読みものです。

Google Scholarの統計に基づくと歴代の研究者の中でh-indexの順番は 一位:S Freud:282 二位: E Witten: 243 三位: WC Willet: 220 だということです。 生物学に限ればM Friedman: 193, SH Snyder: 176, B Vogenstein: 167 となっています。

研究領域が異なるとh indexを直接比較することが適切でないというか場合があるというか比較できないのですがそれをどう補正するとよいのかという研究も紹介されています。

その領域の研究者のh-indexの平均で個々の研究者のh-indexを割った値をhs indexとして使うとよいのだそうです。(Universality of scholarly impact metrics)

この補正を加えると歴代のhs indexの一位はあのKarl Marxとなるのだそうです。

インディアナ大学の研究チームが作った Scholarometerというツールが紹介されています。これはGoogle Scholarのデータを使って研究者の名前と研究分野を入力するとh-indexを計算してくれるアルゴリズムです。

例えばShinya Yamanaka: 64(biology)と出てきます。

Gregg Semenza:125(biology)です。 これの面白いのは共著者の順番も出てくることです。

K HirotaはGregg Semenzaの共著者のランキングの二番目で15です。ちなみに一位はH Zangの17です。ぼくはGLSの共同研究者の二番目にランクされるというわけです-あくまで論文数ですけど-。

 

それではお前はどうなんだということで、Kiichi Hirota:40(Biology)でぼくの共著者ランキングはS Takabushi:18, K Fukuda:15, T Tanaka:13となっています。

 

全国の某診療科の教授のh indexランキングも作ることが可能ですね。だれか学会で発表したらどうでしょうか? この道具を使えば簡単ですよ。 例えばKazuhiko Fukuda:38(biology)で共著者のランキングはK Hirota:29, G Shirakami:22となります。 ぼくって福田先生とこんなに共著論文があったんですね。最大の共同研究者です。まあそうだと思っていたのですが実際にそうでした。

その他も10人ほど調べましたが差し障りがあるので公表しません。自分で調べてください。

名前がありふれている人は検索結果が全てその人のものとは限りません。 またGoogle Schalorから漏れている業績は検索に掛かりません。

日本語の特に製薬会社の出しているPR誌の「論文」や出版社から出ていても査読などのない「論文」-それを論文と呼ぶのかどうかわかりませんが-は検索から漏れています。 これはもちろんぼくの責任ではありません。

 

h indexは個人の業績を出版された論文などをもとに解析したものですが最近はAltmetricsという名前で呼ばれる手法も取り入れられています。

alternative metricsから作られた造語だということです。

ソーシャルメディア等における研究成果への反応をリアルタイムで収集し、そのインパクトを論文単位で定量的に表示する新しい研究評価指標とのことです。(参照)

ちょっと調べるとこんなページあんなページも見つかります。 

PLoS Oneこんなページを作っています。

 

評価の指標が単一でないことはよいことだと思います。

 

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一方”Science”では”Communication in Science: Pressures and Predators“という特集を組んでいました。  

今大流行のOpen Journal、peer review、大勢の人間を一カ所に集めて行う「学会」の問題点などを議論しています。  

“Scientific Discourse: Buckling at the Seams”

“Improving Scientific Communication”

“The Rise of Open Access”

“The Seer of Science Publishing”

“The Power of Negative Thinking”

“Hey, You’ve Got to Hide Your Work Away”

“Cloak-and-Dagger Publishing”

“The Annual Meeting: Improving What Isn’t Broken”

“Who’s Afraid of Peer Review?”

    査読のいい加減さがあばかれています。神戸市にある某国立大学の発行している医学雑誌も相当なもののようです。

“What’s Lost When a Meeting Goes Virtual Meetings”

“That Flatter, but May Not Deliver”

“Public Science 2.0—Back to the Future”

 

“The Power of Negative Thinking”“Who’s Afraid of Peer Review?”“Public Science 2.0—Back to the Future”は一読をお勧めします。

 

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h-indices in a university department of anaesthesia: an evaluation of their feasibility, reliability, and validity as an assessment of academic performance

Br. J. Anaesth. (2011) 106 (3): 325-330. doi: 10.1093/bja/aeq403

カナダのトロント大学の department of anesthesiaに所属する教員ーなんと268人もいますーの h-indexを二つのアルゴリズム(Elsevier社の ScopusとThompson Reuters社の Web of Science)を用いて求めてそれを解析したという報告です。

ScopusとWeb of Scienceでは求められるh-indexが異なるだの self-citationを含めるとか含めないとかグダグダ書いてありますけど,そもそも h-indexが30を越えないドングリの背比べをしているような研究者を比べても何か有意な結論が出てくる道理はありません。full professorでもindexのmedianが17で assistsant professorに至っては2です。これは冗談ではありません。カナダの麻酔科業界ってお気楽なところのようです。

h-indexとは別に平均引用回数が”<1”の場合は気をつけた方が良いです。出せば出すほど産業廃棄物を生み出しているようなものですから。

全国の麻酔科の教授,准教授のh-indexを調べてjournal of anesthesiaに投稿したら載せてくれますかね?

簡単ですから誰かやってみてください。

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折田先生 みんなバチバチ写真撮ってましたよ

日本では,実質的には,医学部に入学して,必要な単位を取得して,卒業して,国家試験に合格して,研修病院に就職して,研修期間を経ないと保険医として患者の前に立つことが出来ないという仕組みが採用されています。

以上のいずれのステップにも選抜,能力検査または振り分けのための仕組みつまりは試験があります。

入学試験における不正行為が刑法犯罪であれば,入学後の試験における不正行為ーなにが不正かいちいち定義されていませんーも刑法上の犯罪とみなされるのでしょうか。

大学の運営には多額の税金が投入されています。試験問題の扱いや不正防止,また不正者への対応も入学試験並みに行う必要がありそうです。
入学試験における不正と比較しても医者になることがコミットされている人間の不正ほうがよりシリアスだとも言えます。
隣の人の答案を見るなどもってのほか。授業でも「ここを試験に出すよ」などと学生に話そうものなら問題漏洩となる,そんな京都大学はぼくはいやですけどそうなっていくのでしょうか。定年までいるわけでないし良いか。

厳格化していくと,留年者が増えて卒業できる学生の数が減りそうですね。

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