「正し」くありたくない人たち

On 2014/5/24 土曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

当直でした。

19時には終わり夕ご飯を食べてシャワーを浴びたらあり得ないくらいに眠くなったので寝たらいつものように5時に起きました。7時間も寝ていたことになります。連続してこんな長時間寝たのは数ヶ月ぶりです。

という訳で朝からいろんなことをしていたら今日どうしてもしなくてはいけないことが全て消化できてしまいました。

某案件は催促されるまでしないことにしてすごく解放された気持ちになっています。

これからも仕事はどんどん断ります。

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雑誌New Yorkerに心理学者のMARIA KONNIKOVAがエッセーを書いていました。

タイトルは「I DON’T WANT TO BE RIGHT」、副題は「Why Do People Persist in Believing Things That Just Aren’t True?」です。

麻疹(measles)、おたふくかぜ(mumps)、風疹(rubella)の予防のためにMMRワクチンを接種しますがこのワクチン接種が児に自閉症様の症状を引き起こす可能性を指摘した論文がLancet誌に掲載されたりしてーこの論文は後にretractされましたーMMRワクチンの接種に否定的な考えが流布したことがありました。 現在では、MMRワクチン接種と自閉症の発症の関係は医学的には否定されたとのコンセンサスがあるとの考え方が少なくとも医者の間では支配的です。 (参照1, 参照2)

これを背景にしたエッセーです。

最近Pediatrics誌に”Effective Messages in Vaccine Promotion: A Randomized Trial“という論文が掲載されました。

  1. 米国CDCによる、MMRワクチンと自閉症の関連には証拠がないという説明を要約したもの(CDCと明示されていない)
  2. 麻疹、おたふくかぜ、風疹に罹患した場合の疾患の症候や危険性について書かれた情報(CDCの文書と同等のもの)
  3. CDCが発行しているものを元にした、麻疹で死にかけた幼児のドラマティックな記述
  4. MMRに罹患した子供たちとその親を含んだ「疾患イメージ」
  5. 健康と無関係な文書を読んだ対照群(鳥の餌付けのコストと利点について)

の5パターンの文書を1759人の親に提示してワクチン接種を自分の子供に受けさせるかどうかの意志について文書提示の前後で調べたという論文で、結果は上記のどの文書も親の考えに影響を与えなかったというものです。

もっと興味深いのは、1の「正しい」記述を提示された群では、反ってワクチン接種への指向性が下がりまたワクチン接種と自閉症の関連あると信じやすくなったという結果です。backfire effectと言うのだそうです。

“I DON’T WANT TO BE RIGHT”という訳です。

 

低線量の放射線の健康に対する影響もこんな状況になっています。

「科学的」「医学的」に「正しい」とその人が思っている言説を「声高に」叫ぶことは反って間違った行動を人々に引き起こす可能性があります。

 

学会でもホントかうそかわからないようなちょっと怪しいことを熱心に何度も主張する人がいて反ってなんか胡散臭く感じる時があります。

 

文献を整理しておきます。 pubmedに収録された論文は適切な購読権がないと全文を読めない場合もあります。

“I DON’T WANT TO BE RIGHT” New Yorker

Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children. Lancet

How the case against the MMR vaccine was fixed. BMJ

Effective Messages in Vaccine Promotion: A Randomized Trial. Pediatrics

 

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雑誌ScienceのやっているサイトにAdam Ruben氏が”Experimental Error“というブログを書いています。

今回は Forgive Me, Scientists, for I Have Sinned

There are some things I need to confess. This isn’t easy to say, but after working as a real scientist with a Ph.D. for 6 years, I feel it’s finally time to come clean: Sometimes I don’t feel like a real scientist. Besides the fact that I do science every day, I don’t conform to the image—my image—of what a scientist is and how we should think and behave. Here’s what I mean:

いくつか引用してみます。

  • I don’t sit at home reading journals on the weekend.

  • I have skipped talks at scientific conferences for social purposes.

  • When someone describes research as “exciting,” I often don’t agree. Interesting, maybe, but it’s a big jump from interest to excitement.

  • Sometimes I see sunshine on the lawn outside the lab window and realize that I’d rather be outside in the sun.

  • I have never fabricated data or intentionally misled, but I have endeavored to present data more compellingly rather than more accurately.

  • I have pretended to know what I’m talking about.

  • When a visiting scientist gives a colloquium, more often than not I don’t understand what he or she is saying. This even happens sometimes with research I really should be familiar with.

  • I have performed research I didn’t think was important.

  • I allow the Internet to distract me.

  • I have read multiple Michael Crichton novels.

  • I have taught facts and techniques to students that I only myself learned the day before.

  • I find science difficult.

  • I am afraid that people will read this confession and angrily oust me from science, which I love.

科学者はこうあるべきだとかどうとか最近声高に言う人がいてちょっと良くない傾向だと思っています。

鬼塚ちひろさんの曲に”We can go”というのがあって

吐き気に潰れてゆく中で柔らかな手に触れる どうか完全なものたちがそこら中にあふれないように We can go to the place, where we are forgiven

とうたっているのですが、もう10数年来のぼくのテーマソングなんです。

Ruben氏はこんな本も出しています。

Surviving Your Stupid, Stupid Decision to Go to Grad School

Kindle版もあります。どうぞ。

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今日からNHKで「シャーロック」が始まります。 息子はもう全部観たのだそうでけどぼくは吹き替えでないと解らないので…

MARIA KONNIKOVAにはこんな著作があります。

シャーロック・ホームズの思考術

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Naure Medicineに”The mathematician versus the malignancyという記事が出ていました。

数理生物学が医学研究に果たす利点について解説したものです。こういう記事を見るー読むではないーとオボちゃんもうかうかしてられません。世界基準の美人研究者にならんとね。



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On 2014/2/9 日曜日, in anesthesia & critical care medicine, by bodyhacker

金曜の夜から土曜日にかけて関東は大雪だったそうです。

今回の大雪で全国レベルでは7人の死亡者がでて1000人以上の人がけがをしたということですがこの数字は今後増えていくかも知れません。(参照)

東京都心でも30cm程度の積雪を記録したということで雪国育ちのぼくからしてもほぼ一晩でこれだけ積もったら東京の人はひとたまりもないだろうなとは思います。

生まれ育った六日町-ぼくの家はそのなかの大巻でした)にいたぼくが時分(1970年から80年にかけて)は毎年3m越の積雪があって「もうこんな場所で生きていくのはいやだ」と思い関西に出てきたのです。 しかし、ぼくが京都に出てきて以来は積雪はどんどん減っていき1mに届かないというような年もあったようです。最近になり積雪量が増えてきて今年は現在1m程度のようです。(参照)

雪が全くない状態から一晩で一面の銀世界が眼の前に出現したら人間は感動しますよね。30cm積もれば真っ白になると思います。 京都でも丸太町通り付近で積雪30cmというのは経験した記憶はありません。

三島由紀夫の小説「春の雪」の「ある雪の日」の朝も春の雪と云うくらいですから節分より「後」のはずです。 赤穂浪士の討ち入りも新暦では1703年1月30日、桜田門外の変が1860年3月24日なのだそうで2・26事件は1936年2月26日でいずれも今回と同じ時期です。2・26事件のときは東京では積雪は35cmだったのだそうです。(参照1, 参照2) この時期に東京はまとまった雪に見舞われることが多いようです。

雑誌New Yorkerの今週号の表紙イラストは雪をテーマとしたPerfect Stormです。

140210 2014 p154

このイラストの作者はこんなこといっています。

> “Snow is inherently nostalgic. It encourages you to travel back and think about your life. I think it’s something about the way it blankets reality, sort of erasing the present one dead pixel at a time. And that makes room for the past,”

またこのページでは過去のNew Yorkerのカバーイラストのうち雪がテーマのものを15作品観ることができます。一番古いのは1944年!!

そうでなくとも子供達は人生初の大雪を楽しんだのではないでしょうか。 阪神地区では土曜日の未明から雪が雨・みぞれになって折角の雪が台無しになってしまいました。


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ぜんぶ雪のせいだ

On 2014/2/8 土曜日, in anesthesia & critical care medicine, by bodyhacker

雪が降るとの天気予報で昨晩の八時過ぎには結構な量の雪が本当に降っていて二時くらいに寝る前に外を見たらかなり積もっていたのですが朝起きると雨・みぞれになっていて積雪としては大した事がないというすこし「残念」なことになっていました。 それでも雪が積もって風が吹くと体感温度は低くなります。

朝から最寄り駅のスタバで仕事をしようと思っていたのですが書き込みをした原稿を大学の研究室に忘れて出たことが発覚。雪が降り出したら困ると思い慌てて出てきたのです。ぜんぶ雪のせいです。

今日から医師国家試験だということです。三日間の長丁場です。試験中には気晴らしというものは無いから大変だろうなと思います。そもそも長時間椅子に座っていること自体一苦労です。

 

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New York Timesに“A solution for bad teaching”というエッセーが掲載されていました。 著者はAdam Grantさんというペンシルベニア大学の心理学の先生です。”Give and Take: Why helping others drives our success”と題する著書を出版しています。

冒頭の一文は”It’t no secret that tenured professors cause problems in universities”。

つまりよい研究者がよい教師とは限らないという、よくある話から説き起こされます。 いくつかの研究では”the relationship between teaching and research is zero”という結果が出ているのだそうです。うなずける話ですですね。一部のスター研究者の醸し出す教育内容とは別物の「効果」はあると思いますけど。

それでこのエッセーはこの状態をどう解決していくかというお話です。

研究のみを行うポジションと教育のみを行うというポジションに分けてしまう。 しかし現実には第三の形態である研究も教育も行うポジションが存在するわけです。 このバランスをうまく取ることが最良のパレート効率性を得るために重要だというありきたりといえばありきたりの話ですが短いし一読の価値はあると思います。教育は真剣に取り組むとすごく労力を消費します。

前の職場では余り意識しなかったというか何も考えていなかったのですが今の職場では結構な加重です。

 

医学部とか医科大学では研究と教育に加えて臨床という業務が普通は加わります。全ての分野でよい教師であることは不可能、と思っています。

医科大学は第一義的には職業訓練校です。基本的な知識を授けて学生はその習得度を評価されます。その成果が最終的には医師国家試験で試されます。

実をいうと今年までぼくはよく知らなかったのですが学生でも国家試験予備校の授業を受講したりするのだそうです。 であればあらかじめそのような授業のビデオを大学での講義で使ってはいけないのでしょうか? そうでなくとも各学会などが内容、出演者などを決めてビデオを作成してそれを通常の講義で利用する。 ぼくは人前で上手に話す能力が極端に低いので上手に話すことのできる人に講義をしてもらうととても助かります。専門医を取ったくらいの見た目のよい上手に話すことのできる先生方を「講師」として投入すれば学生も喜ぶのではないかと結構本気で考えています。何とかなりませんかね。

職場は医科大学でーぼくは教職の免許はもっていませんが学校の教員です-1月の末から3回生の学生さんが5週間の予定で麻酔科学講座で研修をしています。5週間(プログラムによっては三週間)、基礎講座を含む各講座に学生さんが配属されてその教室の「日常に浸る」ことで何かを感得して頂くという趣旨だと理解しています。なので臨床実習の「先取り」をするということが趣旨としては目的ではありません。 実習ですので最終的にはレポートで成果を報告する必要があります。 この活動は今のぼく-来年度であれば問題は解決していると思います-にとっては結構な負担なのですが一方すごくよいチャンスだと思っています。

とにかく彼らとよく話します。

「某」幹細胞の話をしていてクローン人間の話題になったときにKazuo Ishiguroの小説”Never let me go”を読んだ事があるかと尋ねると「ない」ということで急遽 映画”Never let me go”を観ることになりました。 ぼくも久しぶりに観たのですが気合いを入れて観るといろんな気づきがありました。 その後解説をして議論を小一時間行いました。 (こういった活動をレポートにしてそれで受け入れてもらうと助かるのですがこれは無理かやっぱり)

お昼も大学の食堂で一緒に摂ることもあって、今まで知らなかった職場のいろんなことを学生が教えてくれます。ぼくにとってはこれは新鮮で今回の大きな収穫です。

 

さっきのNYTのエッセーによれば、米国では寛大な先生の評価は低いのだそうです。どんどん学生に負荷をかけていく先生の方が学生による評価は高い。要するにこんな先生!?

 

ところで、医者を目指す学生にはクローニンとは云わなくとも「罪と罰」とかくらいは読んでおいてもらいたいとは思います。

今の学生は医者になるという目的意識が明確なのでそれでいいのかもしれないなとは思うときはあります。 ぼくはまったくそのような意識が欠落したまま医学部に入ったので在学中にそのような意識を涵養するということが一つの課題だったのです。


昨日の夜始めて知ったのですが世の中では「ゴーストライター」が話題になっているのだそうです。 いくつかのブログエントリーを読みましたがどうもピンと来ません。理由を考えると要するにぼくは問題となっている「音楽」を聴いたことがない音楽に何ら造詣が高くないのです。 どうにも判断しようがありません。

少なくとも自分の専門分野であればそのまんま騙されてしまうということは少ないかも知れません。 専門分野であれば何らかの評価を下すし、その範囲で全体の胡散臭さとかも何となく感じてしまいます。もっと正確におかしな点をピンポイントで指摘できるときもあります。とにかくどの雑誌の載ったとかどこの研究室から出た研究だとかにあまり惑わされずに研究を咀嚼できると思います。これは 基礎研究の分野でも臨床医学の分野でも同じです。あれだけ明確なのに、何で皆がその胡散臭さに気付かないのかがぼくにとって不思議だと思う場合もあります。誰とかどれとかは云わんけど。

小林秀雄に「骨董」「真贋」という文章があります。 こんなときにいつも思い出します。

以前に少し書いたことがあります。(参照1, 参照2)

 


New Yorkerに載っていたこれ 読んだら背筋が凍りますぜ。

ANNALS OF SCIENCE / A VALUABLE REPUTATION


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