前回からだいぶ間が空きました.
村上春樹は、ノーベル賞をたぶんそのうち受賞するだろう小説家で-賞を取る足らないに関わらず-一流というだけでは足りない超一流の作家だと言えると思う.
ノーベル賞作家がこんな本出すのがふさわしいかどうかの議論はさておきーノーベル賞をとったら文化勲章はどうするんでしょう.似合わないと言えば似合わないのですが..皇居に行くときどんな服をきていくのか今から心配していますー、”羊を巡る冒険”、”ダンス・ダンス・ダンス”から少なくともぼくは”百年の孤独”や”眩暈”から受けた以上の影響を与えられた.
その村上さんが、文字通り比喩でもなんでもなく走る事について語った本である.
多分、村上さんは走らなくとも超一流の小説家であったと思う.しかし走る走る.
身体が許す限り、たとえよぼよぼになっても、たとえまわりの人々に「村上さん、そろそろ走るのをやめた方がいいんじゃないですか。もう歳だし」と忠告されても、おそらく僕はかまわず走り続けることだろう。
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システムバイオロジーについて書かれています.
タイトルの英訳が表紙に書いてあります。Introduction to biological
robustnessとありますので「したたか」といのは,robustの和訳ということになります。
生物学領域でrobustという単語は結構よく使われると思います.
ライフサイエンス英語表現使い分け辞典によれば
単に強いという意味では
robust expression
という風に使うし
強固であるとか、左右されないという意味では
Results are robust to vatiation…
とかい言う風に使うと出ています.
ぼくはもっぱらはじめの用法で使っていました.
それはともかく
第一章で飛行機の飛行制御システムを例にとりrobustnessをどう定義するかなどシステム制御の基本的な概念が説明されます。
第二症でrobustness tradeoffという考えが,II型糖尿病を例にとり説明されます。robustnessを高めていくと同時にそのシステムに一定のfragilityが付与されてしまう,こういった観点からある種の生活習慣病を説明する訳です。生物が、海から陸に上がっていくためにナトリウムを保持する仕組みが獲得された訳ですがそれゆえ高血圧症が引き起こされるというのもrobustness trade-offの一例だと思います。こういった視点で疾患を考えるのは生活習慣病の理解には必須だと思います.この章だけ読んでも価値がある.
第三章では、robust systemとして癌が取り上げられています。癌はさまざまな治療に抵抗して最終的にはヒトを死に追いやってしまう場合があります。
とても興味を引かれたのはrobustnessの観点から癌の治療が考えられるかが解説してある部分です.
最後の第四章では、いかに生物がこのようなシステムを獲得してきたが進化論的に考察されています.
読んでいてとくに目新しい事が書いてある訳ではないのですが、考え方の整理に役に立つと思いました.
細部に拘るとあまり正確でない記述も結構あります.hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)の記述などは、残念ながらあまり正確でありません.というよりこの本の解釈は通俗すぎて本質を見誤ります.
著者のお二人は、ご自分たちが十分生物学に精通していると考えているのでしょうか.一応専門家の意見も聞いてから出版されたらよかったのにと残念に思います.
理論的にも気迫でも逆システム学―市場と生命のしくみを解き明かす (岩波新書)の方が勝っているように感じました.