神様の悪意

On 2015/1/24 土曜日, in hypoxia reseacrh, by bodyhacker

昨日は当直でした。

21時には手術室を出たはずだったのですが、気付けば7:30になっても手術室にいました。 今年はついていません。

こういうことは統計学を援用すればただ単に運が悪いとなるのですが、人間は浅はかなので誰かの悪意を感じてしまうのです。 それって誰と言われても具体的には「神様」としか言いようが無いのですが…


京大の原田さんの研究室からの論文がNature Communicationsに出ました。

タイトルは UCHL1 provides diagnostic and antimetastatic strategies due to its deubiquitinating effect on HIF-1α です。

これだけで解る人には結構な情報なのですが解らない人には解らないでしょうから、 京大のプレスリリースを読んでください。

このように「俺のソース」にも取りあげれました。

またfinalvent氏の目にとまったようです。

さらに現時点でもいくつかの新聞でも取り上げられています。

 

この論文は実はすこし前にOncogeneに出たある論文と密接な関係があります。つまり同一のプロジェクトの産物なのです。

Aberrant IDH3α expression promotes malignant tumor growth by inducing HIF-1-mediated metabolic reprogramming and angiogenesis” こっちもすごく良い論文です。「おっつ」というような内容を含んでいて玄人には「うける」と思います。

数年前にこのプロジェクトの話を聞かせていただいたときは随分ストーレートな実験系である意味ストレート過ぎるのではないかと思ったのですが原田さんはこれを立派な研究成果に結実させました。

 

Nature Communicationsの論文は大学院生の後藤さんが筆頭著者です。 原田さんも粘ったけど後藤さんは期待を受けとめてよく頑張ばりました。

後藤さんはこれで医学博士号をとる予定です。Nature Communicationsの論文で博士号をとるなんて格好いいです。

ぼくはしがないproceedingの論文で学位を取りましたからやはりすごい人はすごいのです。

原田さんは今後はしばらく京都大学の白眉研究者として活躍される予定です。 この際一生ついていこうと決めています。

 

すべての写真-86

 

この論文是非supplementary dataまで詳しく読んでください。 とくに21ページ以降の”Supplementary Figure 20″に注目です。

論文で使ったfigureの元のデータが提示されどの部分を切り抜いてfigureを構成したのかが全て記述されています。

世間はここまで来ているのです。

【追記】

hypoxia-inducible factor 1は略す場合はHIF1でなくHIF-1と表記するのが「正しい」のです。HIF1と書かれるとすごく気に障ります。


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Br. J. Anaesthから

Propofol inhibits lipopolysaccharide-induced lung epithelial cell injury by reducing hypoxia-inducible factor-1α expression

Br. J. Anaesth. (2011) doi: 10.1093/bja/aer005

動物実験と細胞の実験の報告。

動物の肺胞でほんとにLPSによるHIF-1aの蛋白質発現がpropofolで抑制されるのです。そうなるだろうと解っていてもホントに動物でもそうなると驚きますね。
多分この論文はぼくらの論文のパクリです。

The intravenous anesthetic propofol inhibits hypoxia-inducible factor 1 activity in an oxygen tension-dependent manner.

FEBS Lett 2004;577:434-8.

The intravenous anesthetic propofol inhibits lipopolysaccharide-induced hypoxia-inducible factor 1 activation and suppresses the glucose metabolism in macrophages

JOURNAL OF ANESTHESIA Volume 24, Number 1, 54-60, DOI: 10.1007/s00540-009-0829-1

人にパクられるようになれば研究もたいしたものです。

私はバカだと本気でそう考えていれば,他人から「おまえはバカだ」といわれても,カチンと来ないものだろうか。そんなことはない。

ということが日常生活では起こります。

その理由がドストエフスキーを読むと解るかもね。

Suicide attempt by intravenous injection of gasoline: a case report.

J Emerg Med. 2010 Nov;39(5):618-22. Epub 2009 Feb 13.

揮発性吸入麻酔薬を飲んだらという症例報告も読んだことがありますが,ガソリンを静注とは気合いが違いますね。


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PLoS Oneから

Activation of Hypoxia Inducible Factor 1 Is a General Phenomenon in Infections with Human Pathogens

PLoS ONE 5(7): e11576. doi:10.1371/journal.pone.0011576

Kempf氏のlab.から
部分部分を検討すれば今まで報告された実験事実の寄せ集めのような気もする論文ですが、タイトルがキャッチーですしオチは確かについています。
びっくりしたのはfigure7です。これは面白い再検討の価値があると思います。

読書猿Classic: between / beyond readers”というブログのエントリーに

あなたの知識は5年後には陳腐化する/理科離れと科学知識の更新コスト”という考察がありました。

科学技術者の現在は、すでに決してばら色ではない。
 老練の技術者が、新たな技術の登場によって退場する羽目になり、慣れぬ営業などに異動配属されることは、見慣れた光景となった。
 自分の親がそうした憂き目にあったところを見た子供たちは、さて科学技術を学んでそれを職業にしようと思うだろうか。
 現在の「最新の科学技術」を身につけても早晩陳腐化することを知りながら、現在の科学技術を学ぶことに時間と労力を費やそうと思うだろうか。

とあるのですが、自分のことをいわれているようで背筋が寒くなりました。

例えば

麻酔科医の現在は、すでに決してばら色ではない。
 老練の麻酔科医が、新たな技術の登場によって退場する羽目になり、 CVC centerなどに異動配属されることは、見慣れた光景となった。
 自分の先輩がそうした憂き目にあったところを見た研修医たちは、さて麻酔技術を学んでそれを職業にしようと思うだろうか。
 現在の「最新の麻酔技術」を身につけても早晩陳腐化することを知りながら、現在の麻酔を学ぶことに時間と労力を費やそうと思うだろうか。
レミフェンタニルをどかんと使いノルアドレナリンで血圧を維持しいざとなればロクロニウムを投下して最後にスガマデックスを使えばそれでいいのではないのか

こんな変奏とか

MD研究者の現在は、すでに決してばら色ではない。
 老練のMD研究者が、新たな技術の登場によって退場する羽目になり、お前のような無能なやつは研究者とは言えないと研究費を減額され病院での労働を強要されることは、見慣れた光景となった。
 自分の指導者がそうした憂き目にあったところを見た院生は、さて医学研究を学んでそれを職業にしようと思うだろうか。
 現在の「最新の医学研究」を身につけても早晩陳腐化することを知りながら、現在の医学研究を学ぶことに時間と労力を費やそうと思うだろうか。

とか…

暗いですね。

もうこんな景色には未練はない、と言い切ってしまいたいのですが…

今週内でいれたカテーテル明日で7本だぜ、まったく。

R0012611

今日7時少し前研究室でMac見つめていたら扉が開いてタロウちゃんだと思った瞬間、北向きの窓が真っ赤に染まっているのに気づきました。信じられないような赤でデジカメでその一瞬をなんとか捉えようとしたのですが技術の未熟さか出来上がった写真では赤が十分ではありませんでした。こういう瞬間に人間は神の存在を感得するのでしょうね。
タロウちゃんが”神”だと言っているのではありません、念のため。


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