ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」

ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」を紹介します。

著者は、アルバート=ラズロ・バラバシ

ネットワーク理論の専門家です。研究論文に加えて一般啓蒙書も何冊も出版されていてこれもその一冊です。

出版社のページにある内容紹介は以下の通りです。

やりとげたことが成功に結びつかないことはままある。懸命に働いても昇進できず、自分が最初に立てた手柄は後から来た人に横どりされる。才能と真面目さが合わさったときに道は開けると確信していても、どういうわけか結果が出せない……。そんな現象に気づいた著者と高名な研究者チームが、膨大なデータと最先端の分析システムを駆使し、これまでつかめなかった「パフォーマンス」と「成功」の関連を解明する。あなたの成功を裏づける科学的・数学的法則を紹介しつつ、以下について私たちの理解を一変させる――。

・なぜ業績は成功の必要条件であり、十分条件ではないのか? ・なぜ専門家たちはあなたに誤った評価を下すのか? ・何歳までに、成功を収めるべきなのか? ・成功を収めるためにどんなチームをつくればよいか? ・人脈を最も効率良く活用する方法とは?

体裁としては以下の五つの成功の法則を実例を挙げて科学的に解説していきます。

  1. パーフォーマンスが成功を促す。 パーフォーマンスが測定できない時には、ネットワークが成功を促す。

  2. パーフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない。

  3. 過去の成功X適応度=将来の成功

  4. チームの成功にはバランと多様性が不可欠だが、功績を認められるのは一人だけだ。

  5. 不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる。

 

ライフサイエンスの世界でもどう考えても大した研究成果とは思えないものが巷でバスっているというような不可解な現象はあります。

その前に自分は頑張っているのに全然ダメという現実にもぶち当たりますがこの本を読むとその理由がなんとなく分かります。 しかし、ではこうすれば万事解決という方法が提示されている訳ではありませんけど。

 

第九章の「見過ごされた科学者を探し出すアルゴリズム」が面白かったので紹介します。

ノーベル賞の受賞は科学者の成功の頂点の一つでしょう。その意味ではノーベル賞受賞者は成功者といえます。

故に、ノーベル賞を誰が受賞するかは多くの科学者のその後の運命に大きな影響を与えます。

1984年のノーベル物理学賞はカルロ・ルビアとシモン・ファンデルメーアの二人に、「弱い力を媒介するW粒子、Z粒子を発見」した功績で授与されました。この受賞は1983年に彼らが発表した論文が直接の契機になっているのですがこの論文には著者が137人もいてルビア氏とファンデルメーア氏は著者の順番ではそれぞれ105番目と126番目だったという事です。 ではどうしてこの二人が受賞者となるのか。

これがバラバシらの疑問でした。

研究は以下の論文にまとめられました。

Collective credit allocation in science.”

このアルゴリズムによると確かにこの分野でノーベル賞が出るとすると先の二人が受賞者になるのだそうです。

 

このような解析をいろんな年のノーベル賞について加えていくと受賞者の選定がどうしても彼らの理屈に合わないcaseが出てきました。

The Nobel Prize in Chemistry 2008 – NobelPrize.org

の場合です。

この年のノーベル化学賞はGFPの研究について贈られました。

受賞者はOsamu Shimokura, Martin Chalfie, Roger Tsien の3名でした。

 

しかし、彼らのアルゴリズムによればDouglas Prasherは受賞者であるべきでした。

Prasher氏はGPFのcDNAのcloningを最初に行った人です。

Green fluorescent protein as a marker for gene expression | Science

所属していた研究所のテニュア審査に落ちて科学者としての人生を諦めて2008年当時にはアラバマでトヨタ自動車販売店の送り迎えの運転手をしていたのです。

彼が研究を諦める時にとにかく今後のこの分野の発展の為を思ってGFPのcDNAを「純粋な友情から生じた、まったく利他的に」Chalfie、Tsienの両氏に郵送し彼らは16年後にノーベル賞を受賞したのです。

 

このように「実作業に汗を流した者と栄誉を授かる者とは別」であるという現実があります。

よく業績があればなんとかなるとか言いますがぼくの実感でもそれは「真」ではありません。

とりあえず出世したければ「パフォーマンス」をあげる以外にする事があるだろうとは思います、特に日本では。

この本にはこんな話が満載で「成功」するためには「パフォーマンス」を出す以外に考えるべきさまざまなことがあるという事が科学的な解析結果と共に解説されています。

一読をお勧めします。

自己啓発本と見紛う表紙は派手でこんな深淵()な内容だとは思えません。

ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」


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20周年

On 2019/8/22 木曜日, in book, hypoxia reseacrh, Thus Spoke Dr. Hypoxia, by bodyhacker

20周年

8/22は我が家にとって特別な日です。 20年前の8/22に留学のために一家4人で米国に向かったのがこの日。

1999/8/22は日曜日でした。

8/15で京大を休職になっていたのですが1週間日本に留まっていました。

8/16の送り火を観たかったというのも理由の一つでしたが航空券が安くなるというのも理由でした。

 

8/21にアパートを出て、病院内の研究室に出て、リュックサック(3000円くらいのMizunoのものでしたが結局10年くらい使いました)を河原町丸太町のきょねん屋で買って、午後から友人のlabでおしゃべりをして夕方銀閣寺道のアパートに帰る時、今は金沢医大にいらっしゃる加藤先生に京大の近衛のキャンパスから自動車で送ってもらったことを覚えています。

8/22の朝はすごく暑かったです。 タクシーで京都駅に向かうぼくらをアパートの下のタオル屋のおばあちゃんが見送ってくれました。 京都駅からは「はるか」で関西空港に向かいました。

ミネアポリスを経てボルチモア・ワシントン国際空港が目的地です。ユナイテッド航空を使いました。

 

ミネアポリスで米国にVISAを使って入国して早速ハンバーガーを食べました。 最終目的地BWIには夕方まだ日があるうちに到着しました。

下の子がなんとか頑張ってくれました。

BWIには一足先に留学していた今は京都医療センターにいる赤尾先生(大学院生の時に市立静岡病院でアルバイトをしていたのですがその時に内科から麻酔科ローテをしてくれていた先生です)が出迎えに来てくれていました。 アパートの鍵も受け取ってくれていて部屋のエアコンのスイッチも入って冷蔵庫にはおにぎりとお茶を用意してくれていました。一生ついて行こうと思いました。

 

そこから二年半のぼくらの米国での生活が始まりました。

臨床の仕事がないので気楽に暮らしていました。

研究室には7:30には入り(何曜日か忘れましたが麻酔科のgroud roundがある日は6:30には大学に出てセミナーとか聞いていました。ぼくは麻酔科に留学していたのではないのですが大きな講堂でやっていた誰でも聴講できました)16時前にはlabを出る生活(夏時間の時はそれから一家でサイクリングに出かけたりしていました)で基本的には土曜日、日曜日は研究室に行きませんでしたが研究は進んでいました。臨床をしないとぼくでもこれくらいはできるんだと思ったのが最大の収穫でした。

ちょっと記念に書いてみました。


ザ・フォーミュラ

ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」を読みました。

今度時間があったら何か書いてみます。


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「仮病の見抜き方」

On 2019/7/5 金曜日, in book, books, by bodyhacker

Apple WatchにSuicaを入れて使っています。

財布はもちろんiPhone出すのも面倒です。

どこでも使えるようになってきてもうこれでいいのではと思っています。


無給医

無給医問題があります。

ぼくは25年くらい前大学院に入る少し前、当時の教室の教授とこの問題について激論して一度破門になったことがあります。

その後また戻してもらってある時に、「あの時は俺が間違っていた」、と謝っていただきました。

嫌なら無給で働かなければいいのだというのがぼくの答えです。


仮病の見抜き方

影響を受けやすいタイプです。

をみて早速本を読んでみました。紀伊國屋にはなくてAmazonで注文をしました。

10のエピソードのうち5つくらいはぼくにも判りました。 多分AIにも分かったと思います。

 

「Episode6」についてちょっと書いてみようと思います。

以前こんな症例報告をしたことがあります。

Ectopic ACTH syndrome revealed as severe hypokalemia and persistent hypertension during the perioperative period: a case report.

 

ある年の4月、新研修医と一緒に麻酔をするのが嫌だったので自分一人で麻酔を担当することにしました。当時手術室の症例はぼくがあてていました。

入室時血圧が少し高いと思いましたが「別に」という感じで硬膜外チューブを留置して麻酔をはじめました。

縦隔の再発腫瘍切除でしたが、血圧の管理に結構苦労しました。

硬膜外麻酔がうまくいっていない感じでぼくにも「焼きがまわったな」と思いながら麻酔をしてました。

抜管してガス分析をすると、K+=1.6 mmol/lだったので焦りました。2回くらい測り直しました。

pH 7.549でHCO3-も46.9 mmol/lだったのですがこの時は低カリウム血症以外は考慮の外でした。

Kの補正を開始して担当医と相談の上、病棟に移動としました。

心電図以上やその他の症状はありませんでした。

ちなみに硬膜外はよく効いていました。

 

病棟で色々と話を聞くと甘草を服用していることが判り「なんだ」ということに一旦はなりました。因みにこれって国家試験レベルのネタです。

 

ここで内分泌の医者ーぼくの同級生のT村くんーが登場して検査の結果ACTHがすごく高い事が判りました。6年前の腫瘍がACTH産生腫瘍に形質を変えていたのですね。手術侵襲が加わって急速に症状が出てきたと考察しました。

その後、ICUに入ったりとか精神状態が変動したりとかこの病気で起こりうるほぼ全ての症状が出現して最後はカリニ肺炎も起こりました。

やっぱりこれは症例報告だろうと研究室で当時院生だったK本くんに話したらまだ英語で症例報告をした事がないという事で書いてもらいました。

と言う訳でちゃんと医者らしいこともしています。

因みに症例報告も出来が良いと結構頻回に引用されます。でも自分で良いと思っている報告がたくさん引用される訳ではありません。

この報告も英語は良いなどと査読コメントに書かれたような気がします。そんなのわかってるって、言われなくとも。

 

「Episode6」的な「落ち」もある非常に優れた症例報告だと自負しています。一種の「名作」です。

「Episode9」も判りました。なぜかというと今、某ホルモンの研究をしているから。

この本のepisodeは無いようで結構有る症例を集めてあるのだと思います。

 

値段も医学書と思えば安いです。

時間がなくとも一つのepisodeだけなら短時間で読みきれます。

仮病の見抜きかた

 

ところでぼくの上半期のベスト本

 

 新記号論 脳とメディアが出会うとき (ゲンロン叢書)

ありがとうを言えなくて 

ぼくは家内より一秒でも長生きしようと思っています。


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