正統な落ち穂拾い要員として、時々自分一人で麻酔を担当させてもらえます。
先週の土曜日麻酔の準備をしていたときのことです。
ある曲を口笛で吹いていました。
看護師さんに「それなんですか?」と聞かれました。
「五月を忘れないで、25年くらい前の曲だよ」と応えると「へー」といわれました。 25年以上も前の曲で彼女はその時には生まれてなかったと思いますので仕方ありません。
「N’oublie pas Mai ~5月を忘れないで~」
って純粋に失恋の曲なのですがもう何百回も聴いているともうそうも思われず特にこの時期何度も聞き返す大好きな曲の一つです。
誰か教えて私達の5月はどこ?
緑だけが街を染める
途中で口笛がメロディーを奏でる部分があってそこがいいのです。
ちなみに「May」は5月とは無関係です。
しかし良い時代ですね とにかくこの曲が聴きたければネットで検索すればいいだけですから。
もちろんiTune Storeで買うこともできます。
佐藤優さんの「プラハの憂鬱」を読みました。
出版社のページでは 1986年ロンドン。外交官研修中の私は、祖国の禁書の救出に生涯を捧げる亡命チェコ人の古書店主と出会った。彼の豊かな知性に衝撃を受け、私はその場で弟子入りを願い出た――神学・社会主義思想からスラブの思考法、国家の存在論、亡命者の心理まで、異能の外交官を育んだ濃密な「知の個人授業」を回想する青春自叙伝。
とまとめています。
「あとがき」で本人が解説しているように「紳士協定: 私のイギリス物語」と関連が深い著作です。
本書の解題も「あとがき」で行われています。「同化」「過剰同化」「複合アイデンティティー」がキーワード。
日本人/沖縄人、チェコ人/亡命イギリス人というような複合性でなく臨床医/基礎研究者 というような複合性でも十分に成り立つ考察だったと思います。
仕事と本当にやりたいことのギャップって誰にでもあります。
とにかく佐藤さんは「頭が強い」と著作を読む度に思います。
雑誌New YorkerにGawande氏の記事が出てます。 彼が書くと視点が新鮮でやっぱり面白い記事になっていると思います。
.@Atul_Gawande examines America’s epidemic of unnecessary care: http://t.co/avnVjSCgak pic.twitter.com/5QKNzneR4j
— The New Yorker (@NewYorker)
昨日は寝る直前に1時間ほど働いたほかは、平和な当直でした。
今日の午前は故あって麻酔をしたのですがいわゆる会心の麻酔でした。
ぼくなど特別な技もないので落ち穂拾い稼業を行っているだけの人間なのですがちょっと本気を出すと結構行けるかもと錯覚します。
集中治療領域での人工呼吸にはいろんなモードが存在しますがどれがどうなのかというようなことについての知識には直ぐに遅れを取ってしまいます。今日の医局の会ではその中の一つについてのミニレクチャーを聞きました。
聴診器賦
雑誌New Yorkerに面白い記事がありました。 ”Ode on a Stethoscope“というタイトルで、日本語にするのは簡単ではないのですが「聴診器賦」とでも訳せばいいのでしょうか。
医学雑誌は、研究結果や症例報告を掲載するのが主目的で発行されていますが多くの雑誌が「詩」を掲載しています。こういった”poem”についての考察を展開しています。
New Yorkerの記事は、呼吸器関連の専門誌に掲載された“An Intern’s Recollection of a Night at the V.A., July 2004“というタイトルのpoemの引用から始まります。
無料で公開されていますので全文を引用します。 つまりこんな”poem”です。
After the code,
a perfusing rhythm back and a new
chest tube to suction, my chief offered
some feedback on
my central line:
the needle was
in the wrong place,
just like me.
作者は当時麻酔科のレジデントだったそうです。
この記事、なかなか良い着眼点だと思いました。
POEMS synderomeという疾患単位があるのですがそれについてのPOEMもあるのだそうです。
麻酔科領域の専門誌であるAnesthesiologyにも”MIND to MIND”というシリーズタイトルで このようなコーナーがあります。
”Creative writing that explore the abstract side of our profession and our lives”なのだと謳っています。
例えばこんな感じです。
医者も職業の一つでその部分集合である麻酔科医にも専門誌で普通に議論されるような論点とは異なる職業人としての哀感があってそのようなものを表現してるのだと思います。一応毎回眼は通しています。
そういう眼で医学雑誌の”POEM”を眺めると面白いと思います。
医学雑誌以外にこういうコーナーってどれくらいあるのでしょうか。
雑誌の表紙
雑誌といえばその表紙が時々話題になります。Cellとその関連誌の表紙は毎号気合いが入っていて時々業界で話題になります。tumbrでなんどもreblogされる表紙もあります。 例えばこれ
表紙といえば日本分子生物学会の雑誌”Genes to Cells”の表紙も素晴らしいです。ギャラリーがあります。これだけなら完全に「世界制覇」を果たしています。【作品」はどれも甲乙つけがたい力作です。